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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
最終話 その彼の名を誰も知らない
1773/1818

三百二十三・その呉越同舟を、彼らは知りたくなかった

「いたぞ、グネイアス王だ!」


 と、僕らが闘いを始めようとした矢先、反乱軍たちがここへと辿りついた。

 おそらくアーデの大樹を見ようとやって来たんだろう。


「くっ、このような時に、英雄たちよ、儂を……」


「守る気は無い。私達が優先して守るべきはアーデの世界樹だ」


「そ、それは……」


 グネイアス王もグーレイさんの言葉に反論出来なかった。

 自分優先にしたいと思いながらも、本能で理解してしまっているのだ。

 自分よりも、この大樹の生存は最優先なのだと。


「反乱軍に告ぐ、ここはもうじき戦争になる。君たちには関係の無い闘いだ、邪魔をするなら相手をするが、大樹を破壊しに来た奴らを放置することが、お前達にはできるのか?」


「わ、我々はグネイアスの転覆を……」


 しかし、言葉が続かない。

 彼方より迫る無数の悪意に、本能が叫ぶのだ。アレに世界樹を蹂躙させてはならないと。

 彼らも気付いているのだろう、心の奥底で、アーデが世界を守るためにこの地に根を下ろしたという事を。自分達を守ってくれるモノだということを。だからこそ、舌打ちと共に反乱軍は反乱を捨てた。


「俺達も混ぜろ、何をしたらいい?」


「この木を倒されたら私達の負けだ。国はこの際損傷を考えるな。各自やれる事をやれ、大樹を守る事を優先、それ以外は好きに動いて構わない。敵を見誤らないでくれ」


「了解だ。クソ、間の悪い時に反旗を翻しちまったもんだ。あの王を結果的に守る事になるとはよぉっ」


 どうやらベテランの冒険者か何かみたいだね。ぶっきらぼうだけどあの大軍に慌てた様子は無い。


「駄女神、パンテステリアでもいい、味方全員に集合要請、敵は裏世界! おそらく全戦力を投入してくるぞ!!」


 ―― 言われてなくてもやってますーっ、あちしってばめっちゃ有能な女神様ですからーっ ――


 なんてムカツク台詞……だからお前は駄女神なんだっ。


 ―― ソレどういう意味よぉーっ、むきぃーっ ――


「しかし、飛行部隊か、近づかれる前にどうにか……ん?」


 街門の方で、何かが飛んだ。

 無数の魔法弾が迫る裏世界の魔物達に襲いかかる。


「思いは同じ……か、各所の反乱軍と国軍が戦闘を止めて協力を始めているようだ」


 その御蔭か、街門の方だけで魔物達が止まりだす。

 どうやら魔物たちも無視してここまで来るには被害が大き過ぎると気付いたようだ。

 先に壊滅させようとそちらに集中を始め……絶望への引き金を引いた。

 遠くから見えるほどに、空へと飛んだ一人の漢女。近づいていたマンタ型魔物の胴を弾丸のように飛び上がって突き破り、その背を足場に他の飛行種を撃破し始める。


 次々に飛び移っては魔物を駆逐するその姿、まるで義経八艘飛びとすら思える凄さであった。

 まぁ、誰もすぐ気付くと思うけどユーデリアさんだ。

 あんなこと出来るのあの人しか居ないし。


「グーレイさん、別の方角からも来てますよっ!」


 近くの城壁を駆けのぼったリエラが外周を一周見回して告げる。

 どうやら四方八方のフェアリーサークルから一斉に出て来たようだ。

 向こうの神様も本気出して来た、いや、むしろアーデに止められたことで焦ってるのかな?


 ということは、今回の事で本体が出てくる可能性もあるのか。

 グーレイさん。


「ああ、分かってる。もしかするとここで決着になるのかもしれないね。いや、グネイアスが消し飛ぶのは魔王の復活。もしかするとそれこそが侵略者の神を指しているのかも」


「グーレイ、パーティーには間に合ったか?」


「ああ、十分だガーランドさん。まだ始まったばかりだよ」


 パーティーって何かと思ったがこの戦争のことか。

 ガーランドさんは一緒に見知らぬ人々を数十人単位で引き連れて来ていた。

 どうやら反乱軍の人たちのようだ。


「斬星君は?」


「見掛けてねぇな。別の場所にいるんじゃねぇか?」


 ―― あー、彼は今光来君と一騎打ちしてるからしばらく放っといていいとおもうよ ――


 いや、良いと思うって、ソレ不味いんじゃ? 彼って光魔法に耐性ないし対策もまだないはずだぞ!?


「いや、彼の傍にはギオちゃんがいるから、その辺りは大丈夫だろ。回復薬も持たせたし」


 ほんとかなぁ。

 とはいえ、そっちに行くほどの余力は無いし、もしもの時はバグらせる為に僕もここを離れる気は無い。


「アーデ、ごめんね、ちょっと頂点、借りるね」


 リエラがアーデの元へと走り、そのまま世界樹を駆け登る。

 正直他の奴がやったら確実にバグらせてるんだけど、リエラだけは特別だ。

 そのまま頂きへと辿りついたリエラが更に飛ぶ。


「ライジング・アッパーッ!!」


 何もない空間。

 否、そこには見えない何かが居た。

 羽の生えたカメレオンのような気味悪い生物が二つに引き裂かれる。


「アーデは私が守りますッ!」


「嘘だろ!? 既にあそこまで近づかれてたのかよ!?」


「あの嬢ちゃん幽霊か何かか? でもすげぇ……」


 幽霊じゃないよ、透き通って見えるらしいけど。

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