三百十七・そのクーデターが起こったことを、皆は知る気が無い
「にゃはー。あんたがリエラにゃ! ライバルにゃライバル!」
「え? いえ、ライバルとかじゃないですよ、バグさんは妻沢山いますし」
「それはそうだけどにゃー、なんかこう、正妻には勝ちたいにゃー」
「えぇ……」
リエラが会話可能になった御蔭で皆から話を振られています。
御蔭で僕は話し相手が居なくなった気分でちょっと切ない。
パッキーも切なそうにしてたので抱きあげて頭を撫でておくことにした。
ふふ、二人揃って退けモノだね。泣きそう。
「ちょ、ちょっと、グネイアス帝国が……その」
「いやー、話は聞いてたが別嬪さんじゃねぇか。今まで俺らを影から助けてくれてたんだろ。ほんと、すげぇよその若さで俺らより強いってなぁよ」
「そ、そんなことないですよ」
「いや、ほんと、貴女の御蔭で僕等は強くなれましたし」
「違いますよ、皆が強かっただけですよ。私はスキルを教えただけですし」
あはは、と笑うリエラ。皆と話が出来るようになったからか、恥ずかしそうにしながらも凄く楽しそうである。
やっぱりリエラは皆に囲まれて楽しそうにしてるのが似合うなぁ。
なるべくしてリーダーになったんだなぁって分かる気がするよ。
いうなれば陽キャタイプで常に仲間が傍に居るタイプだ。
僕は陰キャタイプなので正反対といってもいい。
一人きりの方が落ちつくし、できるならリエラと二人きりでゆったりする方が好みです。
でもリエラにとっては今の方がいいのかな?
リエラ、優しいから僕に無理に付き添ってないかとついつい心配になっちゃうくらいだし。
でも、ほんとに、僕なんかでいいのかな? リエラ。周りに良い男がいないからとりあえず僕を選んだとか……なんか一人で突っ立ってたら嫌な思いばっか考え始めてしまった。
やっぱりアーデの決意を知らされて動揺しちゃってるんだろうな。
落ち付かなきゃいけないんだけど、正直辛い。
アーデとお別れする時が近づいてるなんて……
いや、これも子離れ。
アーデが選んだ道なんだ。笑って送りだす位してやらないと。
でも、でもやっぱり……僕に何かできることはないだろうかと考えてしまう。
「あのー、グネイアス帝国、このままだと不味いんですが……」
ブロンズちゃんが困ったように告げる。
しかし、皆リエラに夢中で完全無視だ。
多分巻き込まれたくないことも要員の一つだろう。
「うぅ、恥ずかしい」
「あ、カッパー、どうしよこれ」
「ん? えーっと、あれ? 新しい人?」
「話からしてだいぶ前からの知り合いっぽいんだけど、なんか一緒に旅してたメンバーみたいなノリなのよね?」
「ほんとだ。でも英雄さんたちも知り合い? 私達が殆どいたよね?」
「ええ、でもあの女の人知らないのよね。どうなってんの?」
「うーん?」
訝しむスパイ二人を放置して、グーレイさん以外のメンバーがリエラと楽しく笑い合う。
それにしても、グネイアスかぁ、魔王復活以前に英雄に滅ぼされそうだね。どうすんだろ?
「カッパー、ブロンズ、何してるの? 貴方達の仕事は英雄たちをグネイアス帝国防衛に……あら?」
「皆向こうに夢中でこっちの話聞いてないのよ。あとアーデがなんか変な踊りし始めてあの三体がおかしくなってる」
ん? うわっ!? なんかワトリが一回り大きくなった? しかもフェニックスみたいなカッコイイフォルムになってる。
キャットハムターもハムスターと栗鼠の中間みたいな掛け合わせの姿になってるし。
くねくねちゃんなんて……ひぇぇ、正気度消失不可避だ!? そりゃあんなのが踊り出したら精神狂って死ぬわ。
特に全身虹色に光ってるのが……えーっと、なんだっけ、ニュルルングだっけ? なんかミミズの魔物いなかったっけ。あんなのが人型になってるような状態?
うわぁ、さすがにちょっと、引くなぁ。
パッキーも進化したかった? ほら、ゴールデンオカブも進化してない仲間だよ。
落ち付け落ち付け。大丈夫、アーデが君を嫌ってる訳じゃないから。
しかし……あの三種で聖樹になることでどんな意味があるんだろう?
えーっと、確かアレの逆方向で聖樹になれ、みたいなこと言われたよね。
そこまで行くのアーデ?
え? グネイアス帝国が丁度その辺りなの?
へー、ってことはGババァは世界半周してたのか。
あの大樹がある場所はここから世界の裏側に位置する場所にあるんだね。
だいぶ遠出してたんだなぁ。
Gババァに連れていかれてたから一瞬だったけどね。
彼女、本気出したら地球七周半くらい一秒で出来ちゃうらしいしね。
そりゃ世界の裏側位はすぐに行けるか。
というか、グネイアス帝国がアレの逆側?
じゃあ、もうアーデはいつ木になってもおかしくないのか。
グーレイさん達に、伝えた方が、良さそう、かな?




