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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
最終話 その彼の名を誰も知らない
1765/1818

三百十五・その彼らの覚悟を、彼らは知らない

 帰り道、僕らは無言だった。

 僕はもう、何を語りかければいいのか分からなくて、話の切っ掛けすらなくてただただ無言。

 話しかけないからGババァも無言で、アーデは無理して無邪気さを装うのを止めたようで、少しアンニュイな顔をしている。


 一気に大人びてしまった少女の横顔に、なんだか反抗期が来たような気分にさせられる親心だ。

 話しかけても無視されたり、お父さんウザいとか言われそうな……実際に言われたらその場で僕は即死すると思う。


 Gババァの光速移動なので、幾らもしないうちにグネイアス帝国へと到着する。

 グーレイさんたちになんて言おう。

 いや、むしろこれは言うべきことなんだろうか?


 アルセ、僕は、どうしたらいい?


 ―― 感傷に浸ってるとこ悪いんですけどー。ぜーんぶ見ちゃってるんでー、グーレイさんたちに伝えちゃったんだけどもー ――


 何してくれてんだ駄女神ッ!?


 ―― どうせ放置しといたら黙ってて直前まで言わないつもりでしょ。それよりはさっさと伝えた方がいいわよ、ああそれからグーレイさん達は強硬突破してグネイアス帝国内の村に潜伏中よ。Gババァ、案内するから向う場所変更で ――


 くそ、やっぱ駄女神には神としての権能与えちゃダメだ。あいつろくなことしないし。

 ……ありがと。多分僕は言えなかった、言えずに後悔してたと思う。

 きっと皆で考えれば何かしら解決法もあったかもって、たとえ避けられないとしても、相談する方が正解だと後悔したはずだ。


「そろそろ、着くよ」


 Gババァの声と共に、目前へとせまる村一つ。

 村の門番だろう衛兵さんが驚いた顔をしてるけど、ソレは多分光纏ったババァが物凄い速度で近づいてきたからだろう。


 はっと気付いて武器を構えるより早く、村の前に辿りついたGババァは急制動を掛けて立ち止まり、アーデと僕を降ろす。


「ふぇっふぇっふぇ。銀色の生物来とらんかえ」


「え? あ、はっ。Gババァ殿ですな、中へどうぞ。右奥の建物です」


 村ぐるみで匿ってくれてるのかな?

 兵士さんに案内された右奥の建物へと向う。

 誰もいなかったし、ノックしても反応がなかったのでGババァを先頭にして入る。


 うーん、普通の民家だ。

 どこも変わったところもなければグーレイさんたちが居る気配も……


「お」


 何かを見付けたアーデが僕の裾を取る。

 Gババァ、こっちだって。


「なんじゃい、逆の部屋かい」


 通路を隔てた部屋へと入る。

 ちゃぶ台と座布団三つの和式な部屋。

 畳みこそない板張りの床の一角で、座布団の下を指差すアーデ。

 座布団を避け……これごと隠し階段かいっ!?

 座布団がくっついた床板が正方形に扉として存在していたらしい。これらを開き、下に隠れた階段へと向かう。


 うん、Gババァが発光してるから普通に足元見えるの安全だね。

 光が全く無かったら暗闇の中階段降りなきゃいけないところだった。

 僕はともかくアーデにとっては危ないだろうし、グーレイさん達はなんでこんな場所に潜む事にしたんだろう。


「お、戻って来たみたいだね」


「そろっとるようじゃな。ん? スパイまで居るではないか」


 地下施設から出迎えに来たグーレイさん達を見てGババァが怪訝な顔をする。


「別にグネイアス帝国と袂を分かったつもりはないからね。向こうとしても我々と敵対する気は無いはずさ、国を滅ぼしたくないならね」


「ん、私は別に裏切らない。信夫の嫁」


「あれ? 僕らっていつ結婚したんだっけぇ!?」


「ふーん、信、結婚したいの? ゴールドと?」


「あひぃぃぃ、なんで抓るの!? なんで抓るのぉっ!?」


 うん、まぁ、楽しそうで何より。


「さて、君たちは離れていたから情報の擦り合わせと行こう」


「よかろ。スパイたちは問題ないんじゃな?」


「そう思っているけどね。最悪の場合は敵対も視野に入れてる」


「ならばよい。孫の決意を無駄にせんのならのぅ」


「……決意か」


 グーレイさんの呟きに、Gババァは答えることなく落ち付ける広場へと向かう。

 どうやら話を聞くために一度腰を下ろすようだ。

 僕もアーデと手を繋いでGババァの後を追う。


『バグさん? なんか、ありました? 雰囲気が変わったような?』


 別に、大したことじゃないよ。覚悟を決めただけだから。

 そうだ、覚悟が決まった。

 僕は無力で、バグらせるしか取り柄がないけれど、それでもせめて、彼女だけは助ける。助けるんだ。


 僕はアーデに視線を向ける。

 気付いたアーデも何かを含んだ瞳を向けて来た。

 互いに、無言のまま頷く。


 たぶん、彼女も同じなのだろう。

 大切なモノを守りたいから、自分でやる。

 他人に任せていられないから、自分がやるしかないんだと、小さな体で覚悟を決めたんだ。

 だから、僕は彼女の決意を尊重する。その上で、僕自身も覚悟を決める。

 その為に、まずは自分の周囲を把握しよう。

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