三百十・その裏世界に放たれたモノがどうなるのかを、彼らは知らない
タネは撒かれた。
なんか放り投げた場所から徐々にバグりだしたから恐くなって元の世界に逃げたバグ君です。
さっさと蹴り転がしてフェアリーサークルを破壊、放り投げたバグがどうなったか分からなくなったけど、まぁきっと立派に花開く事だろう。
『はぁー、ちょっと焦りました』
「何をして来たんだ二人とも……」
あっはっは、ちょっとバグを芽吹かせてみたら大変な事になっただけさ。
『それ、笑顔でいうことじゃないよなぁバグ君ッ』
きゃーっ、胸倉掴まないでー、えっちーすけっちわんたっちー。グーレイさんのスケベーっ。
『反省の色がないようだ。ちょっと、オハナシしようか?』
ま、待った待った。アーデがお願いして来たんだって。
なにかしら理由があるんだと思うよ。だから問題なし、多分問題無いはず。
「おーい、グーレイ、そろそろ行こうぜ。ここのフェアリーサークルはぶっ壊せばいいんだろ。これぐらいでいいよな?」
「ええ、そうですね、そろそろ行きましょうか」
ガーランドさんにより会話が途切れた。
グーレイさんも仕方ない、と話を区切って馬車へと向かう。
「ハットリ」
服部? ああ、誰かと思えばワトリの鳴き声か。さっさと行こうと告げて……あ、違う、暇だから羽広げて日光浴してやがる。
食卓に上がる前の七面鳥みたいな姿しやがって。
羽、本当に生えてくるのかな?
「いやー、フェアリーサークルってあんなデカイのもあるんだねー」
「そう言えばラウール、自分の国に帰らなくて良かったの?」
「ははは、私の国なんて人様には理解できないと思うよ。何しろ沼地だからね」
「……あぁ。そう言えば」
そう言えば前にそんな感じの事言ってたなぁ、え、本当に沼に住んでるの?
カエルだから? 沼が町になってて住民全て蛙人?
それはさすがに、行きたくないなぁ。
「ちなみに、皆で向うと出てくる晩餐はハエのムニエルとミミズのハンバーグ、モスキート団子などになるんだけど」
「絶対行かないっ」
そこいら中から一斉に行かない宣言が飛んで来た。
違う荷台に乗ってるのにそっちからも反論来ちゃったし、皆よっぽど行きたくなかったんだね。
僕もさすがにそれは食べたくないなぁ。
「グネイアス帝国かぁ、おい、そこのスパイ共」
「スパイじゃねぇ、監視官だ。で、なんだ筋肉達磨」
「誰が筋肉達磨だ。いや、グネイアス帝国は英雄たち戻ってくるのどう思ってるのかと思ってな」
「ああ、確かに、私があまり関わってくるなと告げてしまったしね。下手に戻ると拘束されてしまうだろうか?」
「あー、多分それは無いんじゃない?」
「ええ、そこは心配する必要はありません。灼上さんの活躍で魔王国の半分近くを手中に収め、人族領の一部も侵略出来たのでむしろ感謝しているみたいですよ」
「え? そんなに侵略してんの!?」
「はい。近隣諸国では逆らえる存在が無くなって来ていくつか属国になった国もあります。なのでその国には攻め入っておりません」
「ちなみに、グーレイたち英雄が旅立ってから国の面積三倍になった」
「あと、王城が改築されて立派、です」
王様ウハウハじゃん!?
「でも宝物庫の資金全部消えてたからトントン」
「あー、アレ結局犯人見付からないのよねー、凄く貴重な武器防具や白金貨とか根こそぎ奪われたらしいのよね」
「犯人だったら英雄でも殺す、言ってた」
うわーお。
あ、グーレイさんと目が合っちゃった。いやん。
『いやん、じゃないですよバグさん。やっぱりやり過ぎてるじゃないですか』
どうせ分かんないでしょ。
「おっ」
「あら、なにかしらその白金貨……お金持ちねぇアーデ」
シルバーさんに何見せてんのアーデっ!? それだと僕らがパクッたのバレちゃうじゃんっ!!
悪い事は駄目だよ、って今発覚したら死刑になっちゃうでしょー、これは墓場まで持ってく秘密なの、そう、秘密。教えちゃダメだよアーデ。
『バグさん、アーデに変な事教えないでください』
ぐはっ!?
「グーレイさん、後で少し、オハナシできますか?」
「ええ、構いませんよ。しかしアーデはどこから持って来たんでしょうね。変わった金貨ですがこれは価値があるので?」
「……ええ、一つで小さな国なら買い取れるくらいの価値がありますわ」
ああ、シルバーさんが凄く疑わしい目でグーレイさんを見始めた。
よし、僕には全くノーマークだ。
『いや、私が疑われてるんだが? 下手すると処刑されかねないんだが?』
グーレイさんなら大丈夫でしょ。ちょっと脅して、英雄だから軍資金貰っただけだ文句は無いよな? ピチュン、ってやれば問題なくなるよ。
『私は何処の鬼畜なのかね? 全く。最悪の場合グネイアス帝国にバグ君売るけど、問題ないよね?』
き、鬼畜ぅーっ!!