三百六・その少女がやらかした理由を、彼らは知らない
僕が怒られてる間、シシリリアさんは拘束はされつつも誰の監視もなかった。
だからなんとか脱出しようと四苦八苦していらっしゃる。
そんな彼女に、アーデが寄って行く。
目の前でしゃがんで不思議そうに小首を傾げた。
「何よ?」
「おー?」
「おーじゃわかんないわよ……どうせなんでこんな事したかって聞きたいんでしょ。別に世界潰そうとかそんなんじゃないわ。強制的に約束交わさせられてやらざるをえないのよ。ほんとやってらんないわ、私一人で魔王倒してさっさと帰ろうって思ったのに、あんなの魔王じゃ無くて神よ。邪神だわ」
「おぉ」
「どうせ自業自得だって思ってんでしょ」
問われたアーデは再び小首を傾げてこてん。
本気で意味が分かってないと思うんだけど、シシリリアさんにとってはすっとぼけていると思ってしまったようだ。
あまり良い顔していない。
「矢田にあそこまで言われて……反論出来なかった。何してんだろ私。でも、でも私はもう、傀儡だから……」
「おー」
ふいに、アーデが拘束に使った蔦に手をあてる。
って、リエラリエラ、待って、アーデがやらかしてるっ!
『もう、そんな事言ったって許しま……ちょっとアーデ!?』
見る間に枯れて行く蔦。
拘束が解け、シシリリアさんが立ち上がる。
「あんた……何がしたいの!?」
「おーっ」
「何が言いたいか分かんないわよっ!?」
「シシリリア君、ステータスを確認するといい、アーデが言いたい事が分るさ」
うわ、グーレイさん、なんでこっち来てんの!?
おお、百鬼夜行チームがやって来た御蔭で多少余裕ができたのか。
あのちっさいおっさん指揮すごいな。的確に戦況見極めて適したチーム送り込み始めたぞ。
「自分のステータスを……っ!? 何よこれっ!?」
どうやら自分のステータスを確認したようだ。
「シリシリアって何よーっ!?」
あー、そういえば名前も変わってたね。
いや、そこじゃなくて。
異神の役躰とパンテステリアの勇豪契約を見なさいよ!?
異神の約定とパンテステリアの融合契約が変わってるでしょ!
「……グーレイ、さん、これ、どうなってんの?」
「おそらくだが、リックマンさんと接触したせいだろう。彼は今バグが増殖中だからね。感染したらしい」
「バ……グ? なによそれ!? ちょっと、私に気持悪いモノ感染させないでよっ!?」
「だが、御蔭で異世界の神からの約定は無くなったはずだ」
「それは……確かに、私を縛る呪いみたいなのはないわね」
「つまり、君は自由になった、アーデはそう言いたかったんだろう。あとは、好きにしたまえ」
「好きにしろったって既にスキルがおかしくなってて騎乗の効果がなくなってるんだけど」
「それもしばらくしたら落ち付くだろう。ちなみに、そこのアーデに感謝をしておくと良いスキルに変化しやすいらしい」
「魔物に? むぅ……」
ちなみに心の底から心酔したり祈り捧げるととっても良いスキルになると思うんだ。アーデ様は神様です、なんて感じで祈っちゃえ。
「しかし、このモンスターパレード、まだ続くのかい?」
「門を認識出来るようにしたらしいわよ、あの自称神。永遠垂れ流しじゃない?」
「そんなこと今までしてなかったのに、なんでまた?」
「徐々に融合を進めてたのよ。ようやくそういう事が出来る段階に入ったってことでしょ」
うっわ、ソレってだいぶ浸食されてるってことだよね。
グーレイさん大丈夫だと思う?
「いや、ちょっとマズいかもしれないな。リエラ君、済まないけどフェアリーサークル破壊、君も行ってくれないかな?」
「了解です。バグさん、皆さんの事お願いしますね」
うぅ、リエラの信頼が重い。僕はバグらせるしか出来ないんだけど、リエラ程的確な行動は取れないよ?
おっと、シシリリアさんが魔物一体を呼び寄せ飛び乗った。
「今回は引かせて貰うわ。でも……次はどうかしら?」
いや、だからシシリリアさん、敵対しても良いことないよ? あー、行っちゃった。
「むぅ。裏世界に戻るでもなくどこかに行ってしまったが……何処に行くつもりなんだろう?」
多分テンパッてるんだろう。その内気付いて適当なフェアリーサークルに入るでしょ。
「異世界の神、か、名前が分かれば良かったんだけど、さすがにその辺りは隠蔽してくるか」
―― ちょっとは頭回る奴だにゃぁ。にっしっし、でもあちしからは逃れられんのよ ――
どこの大魔王かな?
んで、実際どうなの駄女神さん?
―― 裏世界の状況とか仕組みとかは20%位かにゃー。正直時間との勝負って感じだにゃ ――
なんか融合速度も上がってそうだしね、あんまし時間は無いかも。
裏世界で神様とやらを探すか、こっちに来るのを待って迎撃するべきか……




