三百四・その少女がバグった理由を、彼らは知らない
「何、感覚が……変!?」
急激にシシリリアさんの動きが鈍る。
敵対していた尾道さんも異変に気付いたようで、様子見しながら回避に専念する。
「おや、どうやら動きが荒くなったようですな。騎乗の英雄としての能力がなくなりましたかな?」
「はぁ!? そんなわけ……え? なんで? 私のステータス、見えない?」
「お、おいおい、あいつのステータス、バグってンぞ!? なんでだ!? おい、バグ野郎、お前やったのか!?」
え? 違うし!? 僕じゃないよ、僕何もしてないよ!?
「矢田君、バグ君じゃないらしい。リックマンさんから感染したと言ってるよ」
「あぁ? なんで感染……え? バグって感染すんのか?」
僕も初めて知ったよ。
のっぴょろん以外でバグって感染するんだなぁ。
「のっぴょののぴょのぴょーっ」
おい、誰だカリオン君に変な台詞教えたのは。天翔龍のーとか言いだしたんだけど!?
「くまっぴょぅっ」
モザイク共が意外と闘えてるなぁ。彼らも彼らで訓練してたらしい。
明鏡止水使えるカリオン君を筆頭にしてヒットアンドアウェイで迫りくる魔物の群れを撃破している。
撃ち漏らしはパッキーが目からビーム撃って迎撃してるし、あの面子はしばらく放置しといても良さそうだ。
ガーランドさんたちも危なげないし、メロンさん達の遠距離部隊も十分機能してる。
アーデが応援してアリーシャが回復薬を投げまくる。
「ちぇすとぉぉぉっ」
野太い声が……
「どらぁぁぁ!!」
ユーデリアさんとギュスターブが一撃で数体屠ってる。あの辺りには近づかないようにしないと。
月締君と斬星君も十分戦力になってるなぁ。斬星君は武器の変更速度が上がって用途に使い分け出来るようになった御蔭でなんか無駄にカッコイイ動きになってる。
その横でゴールデンオカブがあの巨大エイっぽいのを切り裂き着地。
残心を残す彼の後ろで墜落したエイが爆発する。
なんでだよ!?
あ、丁度エストネアさんの魔法が着弾したのか。びっくりした。
シシリリアさんを留めるのに結構な人数来てるから他大丈夫かなって思ったけど、むしろ余裕すらあるや。
リエラも頑張ってるし、くねくねちゃんも非戦闘員達への防衛しっかりやってくれている。
この状態なら充分なんとかなりそうなんだけど……
「クソ、なんでお前は俺の周りをうろついてんだよ!?」
「ふぇっふぇっふぇ」
余裕がありそうだからかババァがちっさいおっさんの周りで魔物退治してるせいで迎撃速度はちょっと遅いんだよね。
もう少し働いてくれれば、いや、Gババァにはいつも頑張って貰ってるし、今ぐらいは恋に走って貰うか。余裕はまだあるし。
シシリリアさんも動きが今までと違って来たし、リックマンさんへの拘束も解け始めたようだ。
これならここに居る面子だけで十分征圧出来るはず。
そう、このままであれば……
「出たぞ、なんだありゃ!?」
一際巨大なエイ……じゃない、あれはマンタだ。おそらくマンタと思しき醜悪な生物が群れを成して現れる。
空中を優雅に泳ぎ赤い光を地上に走らせ冒険者たちを迎撃する。
まるで戦艦だ。
けど、これに動きだしたのはリエラ、ユーデリア、Gババァの三人。
一気に詰めより一人一体づつ撃破。そのまま危険な巨大生物を優先して撃破して行く。
うーん、未だに過剰戦力。
「モンスターパレードにしては出てくる魔物が偏ってるな。やはりシシリリアさんが絡んでると見ていいか」
グーレイさん。あの子捕まえた方がいい?
「いや、捕まえたところでどうなるものでもないと思う。けど、被害は減らせるか。よし、ソレで行こう。でも、私達が下手に触れるのは不味いか?」
僕がなんとか致しましょう。透明人間さん本領発揮だぜーい。
そりゃぁ。
「ふぇ?」
あ、しまった。背中から飛び着いたら掌がふくよかな何かをすっぽりと。とりあえず二回ほど揉んどこう。
「き、きゃあぁぁぁぁ!?」
おっと、ヤベェ、リエラにバレる前に拘束拘束、アーデ蔦借りるよー。
あれ? 縛り方ってこんな感じだっけ?
あれ? あれ? これは亀甲? いや、失敗した。なんだこれ?
「うぉぃ!? バグ野郎、さすがにその縛り方はどうなんだ変態っ」
ち、ちがっ。僕は別にそんな卑猥な縛り方するつもりは……
『バーグーさぁん?』
ひぃっ!? ち、違うんです。僕はただ捕縛するだけのつもりで。
『それでなんで胸を強調するような縛り方になるんですかっ! ここワザとですよね!? 敵相手だからってやっていい事と悪い事がありますっ。正座!』
はいっ!
それからしばらく、僕はリエラのお小言を聞くはめに。って、リエラさん、周囲ではまだモンスターパレードが終わってないのですが魔物退治は? あ、いえ、すいません。なんでもないです。




