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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
最終話 その彼の名を誰も知らない
1750/1818

三百・その男に何があったのかを、彼らは知りたくなかった

 僕らは屋敷へと戻って来た。

 正直、どうしたものか不安はあるけど、とりあえずグーレイさんを解してリックマンさんが変化してること伝えておこう。

 さすがに放置したままはマズいもんね。


 ……

 …………

 ………………


 で、なんだこれ?


「あー、順を追って確認しようか、まずはリックマンくんの変質について」


 グーレイさんが告げる。

 そんなグーレイさんの周囲に居るのは、困惑顔のリックマンさん、真っ赤になったガーランドさんとジャスティン君。

 肌色になったワトリ、ワトリの羽でサンバダンサーみたいになってるパッキーとキャットハムター、命を失ったように燃え尽きたちっさいおっさん。

 

「ああ、とりあえず私は、能力がおかしくなったようでな。矢田に鑑定をして貰ったがステータスがバグっていたそうだ」


「それに関してだけど、バグ君からこちらの鑑定ではしっかりと能力が把握できたそうだ。君の能力値について伝えよう」


 と、僕から聞いた現在のリックマンさんの能力が口頭で伝えられて行く。

 一部聞かれたくなさそうな顔してたけど、詐欺とかそういうのは隠しておく方が争いの元だからこの際ぶっちゃけちゃおう。


「破壊不能、オブジェクト……」


「ああ、君はおそらくこの世界で一番硬い存在になったんだろう。ただバグは現在を持って増殖中だ。予断は許せないが、現状は問題は無いと思ってくれて良い」


「そうか……つまり、私も役に立てるというわけだね。盾役としては十分過ぎるな」


「過信はしないでくれ、ある日突然使えなくなるかもしれない不安定な能力だ」


 バグだからね。直っちゃったり別の能力変化する可能性だってあっちゃうのだ。


「さて、それから……ガーランドさんとジャスティン君は?」


「あー、その、ととのい過ぎた」


「温泉回り過ぎてサウナ入り過ぎて、外で寝てたら日差しで赤く焼けちゃって」


 駄目だこの二人。

 あ、アーデ、だめだよ、つっついちゃ。


「ぎゃあぁ!? 染みる染みるっ!?」


 ジャスティン君が悶えだす。それで遊び心に火が付いたようだ。

 アーデがつっつきまくる。

 うん、ほっとこう。ガーランドさんのあふんっとかいう声聞きたくもなかったよ。


「で、ワトリはなぜこんなことに?」


「ハトリィ……」


 少し前まで凄く綺麗なクリスタルブルーの羽で覆われてたじゃん。なんで素っ裸、というか産毛以外毟られてるの? あとパッキーたちはどうして? え、落ちてるの勿体ないから拾った? あっそう。つまり二人がサンバダンサーになる前からワトリの羽は全部抜けたのか。


 心なしか元気のないワトリ。

 私は死ぬのだろうか? みたいな凄く哀しげな顔している。

 それに気付いたアーデが二人をつっつくのを止めてワトリに近づく。


「おー?」


 なんでこうなったの? ってそれは僕も聞きたいよ。

 状態異常か何かかな? えーっと……

 …………オイ。心配して損したわ。


「あー、ワトリ君、君、生え換わりの時期らしいよ」


「ワトリ!?」


「多分だけどこの周辺地熱の関係で温かいだろう? 体が暑さに反応して夏用の毛に代わる所らしい」


「わ、ワタシハトリィィィィ!!」


 おお、感涙に咽び泣いておるわ。

 自分、死ななくていいんすね! と叫ぶように、ぶわっと涙するワトリ。

 よし、こいつの問題も解決した。


 最後は、ちっさいおっさんか。

 この人は僕らのチームじゃないから別に放置してもいいんだが……

 直前にアレに追われてるこの人見ちゃったからなぁ。


 今日も今日とて追われてたんだろう。

 Gババァが追い付けないわけないから遊ばれてたんだろうが……


「で、このちっさいおっさんどうしたの?」


「えーっと、僕が見つけた時には道端でこんな感じで倒れてました」


 灼上さんが見付けたのか。

 すでに心が壊れた状態で道端に打ち捨てられていた、と。

 何があったんだね、ちっさいおっさん?


「ば、ばばぁ、に……」


 ……あぁ、やっぱり。

 グーレイさん……


「ああ。そうだね。彼は良く頑張った。必死に抵抗したんだろうね。けど……」


 僕とグーレイさんは彼に向かって十字を切った。


「安らかに眠りたまえ。エインフェリアル。君の犠牲は無駄にはならんよ」


「ふ、っざけんな! なんなんだよあのババァ! 逃げ疲れて足止めた瞬間前に回り込んでキ……うおろげぇぇぇぇっ」


 ああ、なぜ封印した記憶を引っ張りだしたんだ。素直に忘れれば良いのに……

 いや、僕も襲われたら正気じゃいられなくなりそうだけど。


「で、やったのかい?」


「誰がやるか!? そこだけは守りきったわっ!」


 そこだけ……他はどうした?

 いや、あえて何も言うまい。

 この話は突き詰めるほどに恐怖が手ぐすね引いて待っている気がするし。

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