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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
最終話 その彼の名を誰も知らない
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二百九十九・その男の覚醒を、彼らは知りたくなかった

「お、おい、大丈夫かおっさん?」


「お、おう、なんとかな」


 格闘の末、頭に喰いつかれたまま起き上がったリックマンさんが頬を掻く。


「いや、負けてんじゃねーか」


「はは……えっと、どうなってるのかな? 頭を噛まれて死んだ気がするんだが?」


「現在進行形で噛付かれてんぞ?」


 矢田とリックマンさんが漫才でもしてんのかと思うほど息ぴったりに告げる。

 ほんと、コントかな? と思えるくらい見事に頭に喰いつかれてますよリックマンさん。

 その鮫の尻尾に杙家さんが喰いついたのは見なかった事にしよう。


「おっさん、いつの間にそんな頑丈になったんだ?」


「うむ? わからん、が、噛みつかれているのに全く痛くないのだ」


「あー、鑑定、してみようか?」


「そうだな。何かしらスキルに変化があるのかもしれん。頼む」


 そして矢田による鑑定が行われる。

 というか、そろそろ頭の鮫、取ろうよ?

 既に尻尾が杙家さんに喰われてなくなってるけども。


「……なんだこりゃ?」


「どうした?」


「いや、その……まったくわからん」


 ん?


「どういうことだ?」


「意味不明な言葉の羅列でバグってやがる」


 あっれぇ。嘘でしょ? ついさっき普通に見えて……

 うーん、普通に見えるな。

 ってことは僕の鑑定だと全部普通に見えるけど、矢田の鑑定だとバグって見えるのか。

 互換性の違いかな?


 とはいえ、伝える術もないからどうしようもないなぁ。

 大騒ぎしてるけどそこまで問題じゃないし。放置でいっか。

 どうなってるんだ私の身体は。とかリックマンさんが不安そうに震えているけど、アーデたちが全く気にしてないのを見て僕らが我関せずなことに気付く。


 もしも問題があれば何かしらリアクションがあると思っていたんだろう。ちょっと困惑した顔でもう一回告げる。

 うん、無視だ無視。


「矢田、確か、あの辺りにいる透明な存在が私をバグらせているとグーレイが言っていた、よな?」


「言ってたな。そいつらが慌ててないみたいだし、バグってるように見えて問題ねーのか?」


 二人して困惑するが、棒人間共はそんな二人を放置して釣りを再開し始めている。

 どうやらあの三人も大したことではないと思ったようだ。

 決して釣りを優先させた訳じゃないはずだ。


「ん? うわ、オカブ引いてる!?」


 そんな矢田も、川に引き込まれそういなっていたゴールデンオカブを見付けて慌てて駆け寄る。


「オルァ、テメェ一人じゃ重量が足りねぇんだよっ!」


 フォローに入って釣竿を握る。予想以上の引きに驚き、オカブ共々引きずられていく。


「お、おい、手伝え! 大物だ!!」


 慌ててリックマンとくまっぴょろんが参戦。

 カリオン君は参加しようとしたところでノヴァが当たりを引いたのでそちらに加勢することにしたらしい。

 そんな慌ただしい男達に混じり、チェアーのうえで日光浴しながら優雅に魚釣りしているクラレット。いつの間に水着になったんです? パレオの水着だけど胸のところが……す、すごい。


『バグさん、何処見てるんですか』


 おっと失敬。っていうかリエラ、アレ大丈夫なの?


『最悪の場合を想定して介入する準備は出来てますよ。でも、リックマンさんが防衛に回るみたいですからそこまで問題は無いですね』


 そんなリックマンさんの頭にはまだ鮫がくっついたまま。その鮫は胴体部分まで杙家さんに捕食されているのでもう死んでいると思われる。

 あの人誰か止めろよ。精神的に危ないよ!?

 勢い余ってリックマンさん喰われない?


「どぉぉらぁぁっ!!」


 気合と共に空へと舞いあげられる川魚。かわ……ざかな?

 それは別名ハンマーヘッドシャークと呼ばれる海に住む獰猛なる鮫。

 また鮫じゃん!?

 シュモクザメがリックマンさん目掛けて飛びかかって来た。


「ええい、来るがいい!!」


 やけになって頭を差し出すリックマンさん。

 いや、そこはちょっとくらい躊躇しようか?

 がぷり、頭に喰らいついたシュモクザメの尻尾に喰いつく杙家さん。

 だから何してんの!?


「んまんま」


「檸檬ぇ……」


「おいおい……せっかく蕪が釣ったのにこいつの腹に収まンのかよ」


「お、おいお前らー、こっちも、こっちも手伝ってぇ!!」


 ああ、また川の中から鮫の鰭が見えてる。

 この川って鮫が大繁殖してるんだろうか?


「んー、良い魚が釣れないわね」


 反応した竿を引いてクラレットが引き揚げたのは、ネコザメ?

 なんか顔が猫っぽいからネコザメらしいんだけど、どう見ても猫に見えない鮫である。やっぱり海の生物だね。


 キャットハムターが居れば絶対に僕殺してるだろうけど、今はいないのでとりあえずキャッチアンドリリースで。

 クラレットがいらないというので僕が釣り針から外して「そーいっ」と川へ投げ捨てる。

 ここ、鮫しかいないしもう釣り止めない?

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