二百五九十六・そのカップルたちの休日を、僕は知りたくなかった
灼上さんたちと合流した僕らだったけど、灼上さんたちが休暇をしたいということでこちらも数日休暇に当てる事になった。
ガーランドさん達も今回はギルドの仕事も受けずに街をぶらついて温泉巡りするらしい。
せっかく温泉街なのだからいろんな湯にアタックするそうだ。
さて、休暇となれば活発に動きだすのがバカップルという生態だ。
たとえば月締君とユーデリアさん。ユーデリアさんに引き摺られてジェットコースター水流温泉なるモノに突撃するらしい。
どんな温泉なのかちょっと気にはなるけど、ユーデリアさんの勧めだから多分命がヤバい系温泉だろう。
小玉君は厨房で本日も料理を作るらしい。
嬉々としてその試食を立候補したのは檸檬さん。
食事が食べれる、ということもあり、ギュスターブとアリーシャもついでに試食するそうだ。
魔王別邸の温泉ではカピリアスの群れとワトリ。なんか意気投合したらしい。アーデが居なくとも楽しそうにお湯に浸かっている。あんまり浸かり過ぎると茹でダコになるよ?
まぁ問題はなさそうだし、危険そうならカピリアスたちが助けるでしょ。
灼上さんは朝臣さんとゴールドさんに左右から腕を取られて連行されて行った。
なんか両手に花のはずなんだけど、何故か彼には同情を感じずにはいられない。
なにしろ連れて行かれる姿がドナドナ流れてそうだったからなぁ。
リエラはアーデと共に近くの川に遊びに向かった。
僕はもしもの時用にこの町に待機する事になっちゃったんだよね。
なんでもグーレイさん曰く、自分がちょっと外出るから姿の見えないフォロー要員最低一人は街に居てくれってことで居残る事になった。僕かリエラだけだからアーデの安全を考えると僕よりリエラが一緒の方がいいんだよね。
ついでに、アーデにはゴールデンオカブとパッキーが一緒に向かった。
モザイク三人衆も釣りするために同じ場所行くみたいだし、やっぱり僕よりリエラが居た方がもしもの時に皆を守れるだろう。
アーデの成長が見れないのはちょっと悲しいけど、これも親離れと思って苦渋の選択であるのだと割り切る事にしたよ。
斬星君はギオちゃんとデートだ。
彼らはもう、好きにしたらいいと思うよ。僕は放置する事にしました。
斬星くんはもうTS男子でも全く問題無いみたいだし、お幸せに。
「ぬおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ」
「ふぇっぇっぇっぇっぇ」
温泉街の道端を散策していると、たまに全力疾走しているちっさいおっさんとGババァの二人とすれ違う。どうやらGババァ、完全にロックオンしちゃったようだ。
要するに、繁殖相手を決めちゃったらしい。
まぁ、好きにしたらいいよ。僕が相手にならないなら問題はなし。
そう言えばメロンさんとラウールさんが今朝から連れだってどっか行っちゃってたな。
魔族同士だしなんかこのままくっつくんだろうか?
グーレイさんそこんとこどう思う?
「いきなりなんだいバグ君。姿見掛けたから近づいてみたけど、話掛けられても対応できないよ? 今戻って来たばかりだし」
いや、こっちも近づいてきたグーレイさんに気付いたから尋ねてみただけだし。
で、なんか用?
「ああ、灼上君チームにも君たちの事教えることにしてね。ピピロさんがぜひ君に会いたいというから探してんだよ」
そっか、ピピロさんには何度かピンチがあってソレを救ったっけ。
基本僕じゃ無くリエラだった気がするんだけど。
「あの、ぼ、僕ピピロ、といいます。えっと、あの……グーレイさん、本当にそこに、いるんですよね?」
僕って本当に見えてないんだなぁ。
って、待って、今気付いたけど、一緒に尾道さんいるじゃん。
あまりにも空気に同化してて気付かなかったよ。
あと、遠巻きにニャークリアさんがキャットハムター頭に乗せて話し合いが終わるの待ってるようだ。もしかして僕とデートですか? よろこんでっ!
他にもくねくねちゃんとクラレットが……百鬼夜行の元メンバーだけどもう僕の事教えて貰ったの?
「ほんと、このクランって意味不明な生物が多いわね」
呆れた様子でこちらにやってくると、僕が居るだろう場所向けて挨拶をして来る。
「えっと、本当にいなかったら凄く間抜けな気がするけど、これから同じクランになるクラレットよ、よろしく」
とりあえず、で手を差し出して来るクラレット。せっかくなので握手しておく。
「わっ!? ほ、ほんとに居た……」
「え? あ、あの、僕とも握手いいですか!?」
はいはい、って、なんだこのアイドルの握手会みたいなノリ? グーレイさん握手したい人順番守って、じゃないよ!? ニャークリアさんなんで並ぶの!?
「そう言えばバグ君、矢田とリックマンさん、見なかったかい? あと灼上君」
灼上さんなら見たよ。朝臣さんとゴールドさんに連行されてたよ。
「んー、つまり矢田とリックマンさんは見てないのか」
「ガーランドさんとジャスティンさんはエストネアさんが保護者扱いでついさっきサウナ梯子してるの見ましたけど、あの二人は何処にも居ないんですよ」
それもそうだけど、スパイ組は?
「ん? ああ、シルバーさん達かい。なんでも話し合いしたいらしいから会議室に集まってるよ」
グネイアスのスパイが話し合い、ねぇ。なんかあんまり良い気しないね。