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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
最終話 その彼の名を誰も知らない
1743/1818

二百五九十三・その段ボール箱の中に居た猫扱いの魔物を、彼らは知りたくなかった

 だーめーでーすーっ!


「うーっ」


 今、僕は心を鬼にして否定していた。

 相手の名前はアーデ。

 本来なら彼女の願いはいの一番に叶えたい。でも、無理なモノは無理。

 そのワトリは野性に帰して来なさい。


 両手で抱き付き、持って帰るのっ。とばかりこちらを見て主張するアーデに、僕は拒否を告げる。

 いいかいアーデ。君は初めての生物かもしれないけど、向こうの世界にはミーザルっていう生物が居てね、今は吾輩は猿であるとかいう生物に進化してるけど、とにかくウザいんだ。そんなのと連れ帰ったコイツが出会ってみろ、どれ程やかましくなることか。


「ワタシハ、トリィィィ!!」


「おー」


 ほら、ワトリも来たいっていってるよ。じゃないよ!?

 駄目だって、皆辟易するから、そもそもそんなでっかい鳥どうやって飼うの!?

 元居た場所に返して来なさい。


「うぅーっ」


 ああ、そんな。嫌いなんてっ、いや、それでも君に嫌われてでもここで止めねば……


『バグさん。諦めましょう。アーデ、アレ連れて帰らないとここから動きそうにないですよ?』


 で、でも、でも、こんな生物絶対必要ないだろ!?


「あー、そろそろ帰ろうよ?」


「嬢ちゃん、その鳥のどこが気に入ったのか知らんが、動きそうにないぞ?」


「連れて帰るの、無理じゃないかなー?」


「というか連れて帰ってほしくないんだけど?」


 皆辟易してるのは、あの後数体のワトリが現れて主張合戦始まったせいで人員が割かれて羽を拾うような状況ではなくなったせいである。

 結局切れたクラレットが回し蹴りで一匹狩ると、慌てて逃げだすワトリたち。

 んで、残ったのがアーデが抱きしめてるこのワトリだけである。


 既にテイム済みなのか、一緒に付いてくる気満々だ。

 自己主張強い生物はもう間に合ってます。

 ああでも、なんかもう押されてしまいそう。

 頑張ったのに、僕頑張ったのに、アーデに嫌われるなんて、胃が、胃がぁ。がふっ!?


『きゃあぁ!? バグさぁん!? あ、アーデ、許してあげて、バグさんのこと許してあげてぇ』


「おー?」


 ワトリから離れ、崩れ落ちた僕の元へやってくるアーデ、膝折れて座り込む僕の両頬にぺちんっと両手を合わせ、満足げに告げる。


「おっ」


 仕方ないから許してやろー。そんな陽気な笑顔を見せられて、僕は、僕はぁぁぁ、うきゅぅ。


『バグさんが死んだぁ!?』


「おぉ!?」


 我が人生、一片の悔い……無し。

 震えながら親指立てて大往生。

 その笑顔、百万……点……ガクッ。


 ―― 何アホな事やってんのよ? ほら、それより皆待ってるからその鳥どーするか決めなさいよ ――


 そう言われてもなぁ、ワトリだよ? お猿だけじゃなく家康とかなんかよくわからんのとか既に居るんだぞ。それなにもまだ自己主張強い生物増やすとか、正気かな?

 そもそもコイツミーザルみたいに役に立ちそうにないぞ。だって雑魚だし。

 クラレットの一撃で死んじゃうトリだよ? ゴールデンオカブみたいに他のオカブと違うとかならまだしも十羽一絡げなワトリじゃ余程バグらないと戦力にもならんでしょう。


 ―― えー、でも私は可愛いと思うなー、ワトリ ――


 そ、その声は、あ。あああ、アルセ?

 よしアーデ、ワトリ連れて帰るぞーっ。


「おーっ!」


『な、なんて鶴の一声。バグさんアルセに甘過ぎじゃないですか!?』


「お、動きだした。って、なんでワトリの頭に乗ってんのアーデ!?」


「おーっ」


「うっわ、このまま連れて帰る気だ」


「あはは、でもアーデちゃん楽しそうですよ」


「ギオさん天然なの!? こんなバカでかい鳥どうやって世話すんのよ!?」


「あー、そういやコイツ何食うんだ?」


「ワタシハトリーっ」


 と、ワトリが適当な草を啄ばむ。

 要するに草食ってことね。

 鳥って雑食か肉食じゃなかったっけ?

 まぁ、とりあえず食事は勝手にするから大丈夫と主張しているようだ。


「まぁ、テイマーも実際いるし、魔物連れて町歩く事くらいは問題じゃねぇけども、お前んところの仲間、変わってるな」


「ほんとにね。彼女が関わると意味不明な生物が増えるんだ。あそこにも三人いるだろ?」


 斬星君が指し示したのはモザイク棒人間という謎生物である三人組。


「なるほど、確かに」


「ふふ、これはこれで何が起こるかわからないから楽しいですね」


「いやー、私はちょっと後悔して来てるけどね。さすがに魔物がこんな簡単に仲間になるってどうなのかしら。百鬼夜行も魔物は居たけど、密度的にこっちの魔物率多くない?」


「それは確かにそう思いました。やっぱりグーレイさんが魔物筆頭だからですかね」


「何を言ってるんだ小娘、あいつは魔物じゃ無くて神だぞ?」


「……はい?」


 アリーシャの言葉に反応したノヴァ。しかしその言葉に対する返答は、頭大丈夫? という怪訝なアリーシャの顔だった。

 そりゃね、いきなりあいつは神だ。とか言われても理解できないよね。



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