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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
最終話 その彼の名を誰も知らない
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二百五九十二・そのワトリという生物を、彼らは知りたくなかった

 本日、再結成したモザイク棒人間三人と、斬星君、ギオちゃん、ゴールデンオカブ、アーデという面子と、実力確認の意味を込めて、アリーシャ、クラレット、ギュスターブの三人が一緒にチームを組んで依頼を受ける事になった。


 依頼内容はワトリの羽集め。

 そこまで危険は無いけど、結構面倒臭い鳥型魔物らしくて、受け手が少ないのだそうだ。

 クラレットは知ってたようでちょっと嫌そうな顔してたけど、そんな危険な存在なの?


『危険、ってよりはあまり会いたくない感じですね。けど、怯える程ではない、ちょっと煩わしいって感じの魔物みたいですね』


 んー、煩わしい、ねぇ。見知った魔物で言えばミーザルとかそんな感じかな?

 でもワトリ、ねぇ、そこまでウザそうな名前でもないんだけども?


「あの、皆さん同じクランだったんですよね?」


 先頭を歩くクラレットに、斬星君が尋ねる。

 先頭は斬星君とクラレット、ついでにギオちゃん。

 その後ろを歩くギュスターブが肩に乗せているのはアリーシャちゃん。そのアリーシャちゃんがゴールデンオカブを抱き締めていてちょっと可愛い。


 で、その後ろを枝を振って歩くアーデを見守りながら仲良く三人で歩くモザイク共。

 君等が邪魔で僕がアーデの姿見れないじゃないか。

 あ、可愛い、踊りだしたっ!


「……、っとりー」


 ん? なんか変な声聞こえた?


「今の声って……」


「残念ながらワトリよ」


 いや、むしろ会いに来たんだから残念は無いでしょうよ?


「鶏形の魔物かな?」


「だったら……良かったんだけどねぇ」


 茂みに身を潜め、クラレットがそっと茂みを開いて見せる。

 茂みの先に見えたのは、一羽の青い鳥。

 人型大の大型の鳥は美しい羽を広げて太陽の光を存分に浴びているようだった。

 凄く、綺麗な鳥じゃん。クラレットが嫌がる理由が分からな……


「ワタシは……トリぃぃぃぃぃ――――ッ!!」


 太陽向けて大きく羽を広げて美しく見上げる青い鳥。

 それ、鳴き声なの!?


「ええぇと?」


「あいつ自己主張が強くてさ、見付けた相手に向かって自分を主張してくんのよ、死ぬまで自己主張してくるからウザいったらないわ」


 それ、ミーザルっ!?

 まんまミーザルの生態じゃないか!?

 なんで異世界でまであの意味不明な生物共と遭遇しなきゃなんないんだよ!?


 ふっと、ニヒルに微笑み、決まったといった様子のワトリ。

 不意に、ぐりんっとこちらに視線を向けた。


「やば、気付かれた」


「え? こっち隠れてるのに!?」


「来るわよ!」


 クラレットの言葉通り、どすどすどすっと重そうな音響かせながらワトリが駆け寄ってくる。

 容姿的には巨大化した燕っぽくて可愛らしいんだけど、人型大なので近づいてきた時の圧が酷い。


「ワタシハ、トリィィィィ――――ッ!!」


「ああもう、絡まれた……これ、放置しとくと街まで付いてくるわよ」


 うわぁ、まんまミーザルの生態と一緒じゃん。

 そのせいでアーデが凄く嬉しそうにしてるし。


「ワタシハ、トリィィィィ――――ッ!!」


 近づいてきたワトリが一気に羽を広げた。

 周辺が切り裂かれ、茂みが消え去る。

 僕らの姿は露わになり、胸を張るワトリは自分を存分に見せつける。

 無数の青く透き通った羽がキラキラと舞い散った。クリアブルーの羽、だとぉ!?

 おっと勿体ない、リエラ、多分安全だろうから回収係に回っとこう。


『それもそうですね。皆その余裕なさそうですから私たちで回収しちゃいましょうか』


 ワトリはミーザルが主張する相手見付けた時みたいなキラッキラした顔でゲンナリしているクラレットたちに自身を見せつけ、太陽の光を浴びて煌めく。

 ああ、自分、今とても輝いている。そんな思いが伝わってくるほどに生き生きとしていらっしゃった。

 うん、そうやって自己主張するほど羽が舞い散るから拾うのは凄く楽だね。


「あの、これってどうしたらいいんです?」


「こいつの自己主張を放置して羽を拾うのは無理なのよ、必死にアピールしてくるから羽拾うどころじゃなくてね。だから二人以上で一人が見せつけられてる合間にもう一人が羽を拾うの、二分に一回位で交替しないと精神がやられるわよ」


「おー!」


「わ!? ワタシハトリ――――っ!!」


「おーっ」


 パチパチパチ。

 アーデが楽しそうに拍手する。

 気を良くしたワトリがアーデにのみ自己主張を開始し始めた。


「あ、アーデが気を引いてくれてる?」


「チャンス、皆急いで羽拾うわよ!」


「りょ、了解です」


「のぴょ!?」


「ワタシハトリィィィ!!」


 二羽目出現!?

 のっぴょろ君が仕方なし、と自分を身代りにして皆に羽を拾わせる。

 こっちは二分ごとに持ち回りで一人を犠牲にして見せつけられることでワトリの邪魔をさせないようにする。

 他の皆は自己主張の際に舞い散る大量の羽を回収。

 これ、結構需要がある上に高額らしい。

 何しろ自己主張が激し過ぎるウザキャラなせいで嫌気がさして新人以外殆どこの依頼受けないから羽は常に品不足なのだそうだ。羽、太陽光浴びるとキラキラして凄き綺麗だしね。


 羽毛布団や羽ペンなど用途様々なうえに、なんか独特の効能があるんだってさ。

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