二百五七十八・その一本道の闘いを、彼らは知りたくなかった
SIDE:灼上信夫
ノヴァが帰ってこないので、メンバーに欠員二名を出しつつ、僕らは前回向わなかった山の隣にある一本道へと向う事にした。
道的にスケルトン側から向かった方が近かったので、そちらのフェアリーサークルから向かう事にする。
僕、矢田、美樹香たん、小玉氏、尾道氏、檸檬たん、シルバーたん、ゴールドたん、ピピロたん、リックマン氏、くまっぴょろん、月締君、ユーデリアたんの面子なんだけど、シルバーたんはまた報告に出かけてしまったので居ない。
さらに美樹香たんとゴールドたんがノヴァが帰って来た時用にとお留守番になった。
二人して僕に構い過ぎてたからってことで今回離れる事にしたらしい。
確かに、最近は基本ずっと三人でいただけに、ちょっとさびしいような気がしなくもありません。
しかも隣にいるのが矢田というDQNのみというね、もう……誰か助けて?
「ふふ、滾ってくるわっ」
「ユーデリア、ほどほどにね」
「あー、お腹空いて来た、一杯喰うぞーっ」
「檸檬、生は駄目だぞ生は、さすがに魔物といえど可哀想だから」
「しっかり守りますから攻撃は任せますね尾道さん」
「は、はい、がんばりますっ」
女性陣はなんかもうカップリングされてるみたいで僕はあまりモノ扱い。
野郎ばっかり寄ってきてます。
「さて、平地なら私でもなんとか戦えそうだな」
「おっさん、あんま強くねーだろ、張り切り過ぎんなよ?」
「お前も威張る割には突出はしてないだろ矢田」
「くまぴょーぅ」
なんで僕の傍はイロモノ系しかやってこないのか?
そもそも仲間がイロモノしかいないという、ね。
はは、泣けて来た。
平地の道は魔物が待ちかまえてる確定戦闘パターンの道になっていた。
半ば予想済みだったので、戦いたいユーデリアたんを先頭に、防御にピピロたん、矢田とリックマン氏が遊撃、遠距離に尾道さんと僕。他は戦闘に参加したりしなかったり、小玉君など檸檬たん用の食事しか作ってないんだよね今回。
出現する魔物はリザードマンと思しき虹色のケバケバしい二足歩行爬虫類。
なんでこいつだけ虹色なのだろうか? 全く不明である。
今の色は茶色なのだけど、こいつだけその色に反発しているように虹色になってて気持悪い。
あと、巨大トンボ、メガネウラだっけ? あれっぽい魔物が空飛んで来て、リックマン氏が掲げた斧に突撃、自分から真っ二つに切り裂かれて絶命していた。
斧に飛び込む夏の虫、ってね。夏じゃないけど。
他には巨大な目玉で出来た頭と小柄な五肢を持つ目大人という生物が生息していたり、モグラと思しき地面にぼこぼこ続けて出現する様は正直泣きたくなるほど異常な光景だった。
全て片目だけでかくて血管浮き出てるし。正直悪夢にしか見えない。
しかもそんな生物が真下から襲ってくるとか、地獄だった。
飛び退いた先に出て来たり、連続で出現したり、なぜか下半身目掛けて飛びかかって来て噛みつこうとしてくるし、くまっぴょろんが避け損ねて股間に喰らい付かれた時には彼は終わった、と思わざるをえなかった。
幸いにもすぐにユーデリアたんが拳で撃退してくれたのでお腹周りに歯型が付くだけで済んだけど、正直モザイク過ぎでどこが歯型か既に分からなくなっている。
ユーデリアたん的には丁度良いくらいの敵なんだろう。
笑いながら一つ目の巨漢を相手に肉弾戦を挑んでいる。
多分サイクロプス? いや、大きさ的に二メートルくらいだしキュクロプスの方がいいのかな?
向こう棍棒持ってるのにユーデリアたん笑いながら圧倒してるし。
まぁ彼女がそっちに夢中の間は地下から襲いかかってくるモグラ相手に僕らは全力でモグラ叩きしなきゃいけなくなるわけだけど、正直このモグラが一番厄介である。
「ノォォォォッ!?」
あ、リックマン氏の股間が!?
なんで反撃せずに頭抱えちゃうの!?
「何してんだオッサン!?」
気合一撃。矢田のローキックがモグラを粉砕する。
耐久力が弱いのは不幸中の幸いか。
基本僕でも素手で倒せる位の生物なのでモグラ相手に危機に陥ることはないんだけど、やっぱり噛みつかれたいわけじゃない。
「って、ぎゃあぁぁ!?」
「矢田ぁ!」
今度はリックマン氏を助けに入ったことで無防備になった矢田の股間に飛びかかったモグラ。リックマンさんの掬い上げるような蹴りが魔物諸共矢田の股間にジャストミート。
なんか凄い顔して時が止まったぞ……
股間を押さえて泡を噴きながら気絶する矢田。
「す、すまん、威力を間違えた!!」
何してんのリックマンさん!? 戦力大幅ダウンだよ!?
一人でも味方が欲しい時に味方倒してどーす、かぷっ。
「ぎゃあぁぁぁぁっす!?」
「オルァっ」
「あひんっ」
股間に噛みつかれた瞬間、既に闘いを終えていたユーデリアさんによって救出された。
うぅ、この道もうやだ……