二百五七十一・その裏世界の魔王を倒す術を、彼らは知らない
「オォォォォォッ」
瓦礫の散弾を見て、気付いてしまったらしい。ギガンテスは……というか、そういえばコイツ名前なんてんだ?
えーっと。
名前:アムベクトルシャン
種族:星屑の巨人
称号:星砕きの王
レベル:2383
スキル:
星割りパンチ: 渾身の一撃は星をも砕く。
勝利の咆哮: 勝利を確信し、格下の敵に畏怖を付与。
デビルスマイル: 目の合った相手に狂乱効果付与。レベルダウン攻撃。
衝撃拳: 衝撃を飛ばす拳打。
デスビーム: 目から発射する即死級の一撃。
破壊光線: 口から放つ光の奔流。
デススタンプ: ジャンプして着地することで周囲の地面ごと対象を破壊する。
所持アイテム:
巨大な腰布、巨人の心臓、星屑達のララバイ
個別名称持ちのネームドモンスターじゃん!?
いいや、なんか名称も名前もながったらしいからギガスさんって呼ぼう。
ギガスさんは瓦礫を手にしては投げるを繰り返し始めた。
御蔭で冒険者たちはただただ着弾地点から逃げるしか出来ない状況に陥る。
相手が階段上の神殿跡に居座っているせいもあって下手に近づく事が出来ず、このままでは回避一辺倒の僕らが不利だ。
さすがにリエラをあんな激戦地に送り込む訳にも行かないし……
「Gババァ君、行けるか!」
「任せなグーレイ」
「援護を行う。アレをこの辺りまで引きずり降ろしてくれ」
―― ババァの独壇場ね! これこそ、STOP WAR BBAの歌いどころよ ――
いや。歌うなし。
―― 闘いのー歌がー聞こえるー、ババァが、行くよ、戦場に、行くよー ――
あ、意外とバラード系……じゃない、徐々になんかアップテンポ!?
―― 迫る脅威、孫の危機、ジジイが孫をかばって散った。ならばババァがやらねばならぬ、お前の分まで戦うと ――
なんかババァなのにカッコイイ感じになってません? ババァ出陣、飛んだ!?
―― 止めろ止めろ止めろ 闘いをー 塞げ塞げ塞げ 唇をー ――
いや、待って、なんか相手の唇塞ぐババァが普通に想像できちゃうから待って。気持悪っ!?
そりゃ確かに闘ってる場合じゃ無くなるけども、悪辣過ぎるわっ。
空を掛ける光のババァ。身に付けたローブは風に乗って飛び散って行く。
「な、なんだありゃ!? ババァが空を飛んでる!?」
「光ってるぞあのババァ!? 光のババァ!?」
「は、速ぇ!? あの巨人が気付く前に回り込んだぞ!?」
耳元で鳴り響く駄女神の歌を聞かなかったことにして僕はギガスさんの背後に回り込んだGババァに視線を向けた。
遠くから見ると羽虫が飛んでるようにしか見えず。必死に近づいてきた存在を探すギガスさんの膝裏向けて突撃するGババァが確認できた。
「グォォ!?」
片膝をかっくんさせられてバランスを崩すギガスさん。
なんとか体勢を整えようとしたものの、逆の足も膝かっくんを喰らって倒れる。
顔面から階段にぶつかり、そのままがががががっと階段落ちが始まった。
「おお!?」
「ババァすげぇ!?」
「巨人殺しのババァ!?」
「いや、まだ死んでねぇ、気を抜くな馬鹿!」
階段落ちをして来るギガス向け、皆が武器を構える。
「ガァッ!」
地面にぶつかり止まったギガスが両手を付いて立ち上がろうとする。
そこに一斉に攻撃魔法をぶつける冒険者たち。
グーレイさんも参戦して赤い光が腕を打ち抜く。
あ、目が光った。
ビカァッと光った眼からデスビーム。
建物が幾つが崩れ出す。
「うおお!? なんだ今の!?」
視線を合わすな。レーザーが来るぞ!
「はぁ、そんな。あ、あぁ……あばばばばばばばばばっ」
デビルスマイルを受けてしまった黒いローブの魔族がその場で暴れはじめる。
「目を合わせんなつっただろうが!?」
ガーランドさんが斧の棒部分をどてっ腹に叩き込んで黙らせる。
片刃斧でよかったね。両刃だったらお腹真っ二つだよ。
「ガアァ!!」
さらに口からの破壊光線。
を、Gババァが上から急襲。頭蓋骨に拳を叩き込んで封殺。口の中で溢れた破壊光線がギガスさんの口内を焼きつくす。
「ごはっ!?」
「立たせんな! 縫いつけろ!!」
拘束魔法を使える冒険者たちが急いでギガスの四肢を拘束する。
どうでもいいけどなんでガーランドさんが全体の音頭取ってるんだろう? やっぱりS級冒険者だからか?
「休みを与えんな! 畳みかけろ! ヤツのが体力高けぇんだ、動きだしたら壊滅すんのは俺らだぞ!!」
「うおお、全力で行くぞ!」
「町を守れ!」
「ガァァ!!」
うわ、なんか腕の近くにいた冒険者たちが吹っ飛んだ!?
あれか、衝撃拳か。
「ババァに続けぇ!!」
「あんな巨人に好き勝手やらせるな!!」
冒険者連中、意外と強いな。未だにまだ死者ゼロだよリエラ!
『ほんとに、ちょっと驚きですよね』
結果、突然現れたギガス君は実力を殆ど発揮できずに討伐された。
どうでもいいけどGババァが巨人殺しの老婆という称号を貰ってた。