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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
最終話 その彼の名を誰も知らない
1720/1818

二百五七十・その出現した魔王を、彼らは知りたくない

「オォォォォォォォォッ!!」


 不意に、謎の雄叫びが轟いたことで僕らは慌てて飛び起きた。

 昨日のっぴょろん君を助けてから今まで宿で寝てたんだけど、魔王復活教団が何かして来る事は無かった。おそらくのっぴょろん君は完全に見失ってしまってるんだろう。そこらじゅう黒ローブだらけだし。探すのも諦めたと思った方がいい。


「な、なんだなんだ!?」


 僕らはすぐに装備を整え、顔を洗う暇も惜しんで外へと飛び出す。

 皆黒ローブ着こんでるからって容姿整えるの後回しにしてるのが何とも、いや、非常事態だから仕方ないのか。


「おい、ありゃなんだ!?」


 なんだろう、この既視感?

 神殿のある小高い場所に、今は筋骨隆々の数十メートル大の巨人が神殿を崩落させながら歩いている所だった。

 緑の肌のギガンテスって感じのオッサンは、腰に布を巻きつけただけの容姿に黄色く輝く目を持っていた。

 なんというかギリシャ系のオッサンって感じだ。


 逃げ惑う黒ローブと魔王様じゃーと祷りだす黒ローブ。

 そんなモノたちに構うことなく神殿を蹴り飛ばしてギガンテスが動きだす。

 僕らが逃げだした後にまた魔王召喚しちゃったのかな?

 それで出て来たのがあの生物、と。

 正直あれはデカすぎ……待て。あの喉元にあるのって……首輪?


「マジィな。ありゃ隷属出来ちまってるぞ」


 隷属の首輪とかそんなのなの!?

 え、魔王をテイムできちゃった?


「ありゃあ、テイムした、っつー感じじゃねーな。完全に暴走状態で制御出来てねぇ。おそらくテイムした相手は既に死んでるぞ」


 えぇ? テイム成功したのに死んだの?

 まぁ、下手に命令し始める人間とか見付けたら対処が恐かったけど、魔王だけならあるいは……

 いや、それでもあの巨体はちょっと止めてほしいなぁ。


 うわ、なんか残骸向って拳打ち付け始めたぞ!?

 よっぽど恨みがあるのか神殿を粉砕することに注力し始めている。

 魔王復活教団、あいつに一体何したんだろ?


「こりゃあカリオンとか匿う必要もなさそうだな。っつかGババァも向こう行ってる暇なさそうだ」


「ふぇっふぇっふぇ、腕が鳴るねェ。あのデカい唇を奪うのは大変そうねぇ」


 キス、しちゃう気か。喰われるぞ物理的に。

 で、どうするのグーレイさん? 倒す? 逃げる?


「さすがに放置するわけにもいかないだろう。しかし倒すとなるとあの巨体はちょっと怖いところだね。皆、どうする?」


「さすがに野放しにゃさせらんねぇわな。他の冒険者も迎撃するみたいだぜ?」


「折角だしギルドで依頼受けて来るわ。報酬出るし」


「あ、エストネア待ってにゃーも手伝うにゃよー」


 ニャークリアさんとエストネアさんがギルドへと向かっていく。

 とりあえず僕らは他の冒険者と同じく街から伸びる登り階段の手前まで向かい、迎撃態勢を取る事にした。

 正直ここ、蹂躙フラグが乱立してる気がするのは気のせいだろうか?

 リエラ、さすがに巨体過ぎるし、僕らはちょっと離れとこう。なんか嫌な予感する。


『え? そうですか? まぁ、アーデに危険があってもなんですし、ちょっと戦線から離れておきましょうか』


 というわけで、アーデ達はこっちね。くねくねちゃんは護衛として残る?

 じゃあ僕の傍にいるのはくねくねちゃんとパッキーとキャットハムター、ゴールデンオカブ。

 後ついでにギオちゃんってことでいいかな?


「アーデちゃんたちはそこで見とくのか、うーん、僕も一応こっちにいた方がいいのかな?」


 斬星君は戸惑ってるみたいだけど、そうだね。下手に突っ込んでもリエラが居ないから超絶剣士にはなれないよ。大人しく応援に回るがよい。なんちゃって。

 あれ? カッパーちゃん、いつの間にブロンズちゃんと変わったの?


「あれ? カッパーさん!? ついさっきまでブロンズさんが居ましたよね?」


「え? さっき変わったよ? アレ報告に行くって」


 アレとは巨大魔王様である。

 多分魔王じゃなくて裏世界の魔物の一人だろうけどね。

 神殿を粉々に破壊し終えたギガンテスは、ぎろりとこちらに視線を向ける。


 魔族たちが集まっているのを眼下に収め、瓦礫の中から柱を一つ引っ張り出す。

 あ、これマジで蹂躙パターンだ。

 その柱を思い切り冒険者たちのど真ん中向けて投げ飛ばす。


 蜘蛛の子散らしたように逃げだす冒険者たち。

 地面に突き刺さった柱の傍で逃げ遅れたおっさんがぎりぎり生存して腰抜かしている。

 あっぶな。今の一撃、下手してたら死人出てたぞ。よく全員無事で切り抜けたな。


「オォォォォォッ!!」


 まさか避けられるとは思ってなかったようで、ギガンテスが怒りの咆哮。

 再び柱を掴もうとして、瓦礫しか掴めなかったので、悔し紛れに投げ飛ばしてきた。

 うっわ、途中で分解されたせいで散弾になった。あっぶな。近くにいなくて良かった。

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