二百五六十五・その冒険者たちの姿を、彼らは知りたくなかった
冒険者ギルドへとやって来た。
冒険者が出入りしているかと思ったんだけど、なんかそれっぽいのは見掛けない。
厳ついオッサンとか甲冑着た女の人とかはここにはおらず、変わりに黒いローブに身を包んだ男か女かもわからない生物たちが沢山いらっしゃった。
サバトでも始まるのかな?
思わず回れ右して帰りたくなる光景だった。
ただし、黒ローブ達がこの土地での冒険者だとわかったのは、気さくに話しかけて来たおっちゃんが黒ローブを被ってる理由を教えてくれたからである。
なんでもこの国では身分や男女差を無くすために全員黒ローブ着用が義務付けされてるらしい。
冒険者ギルドなど主要施設に赴くと、その辺りの説明をされて黒ローブを支給されるそうだ。
始めて来ると戸惑うものの誰が誰かわからない状態でパーティーを組むのは結構楽しいとかで冒険者たちに受け入れられてるらしい。
国を出る際にローブを脱いで、お前とパーティーなのかよっ!? とか、全員前衛じゃねーか!? なんてことで楽しんでるらしい。
いや、危なくない? と思ったんだけど、この周辺に出る魔物はそこまで強くないらしいし、ちゃんと安全マージンを取った依頼を受けるのでそこまで問題は無いらしい。
問題があるのは容姿関連で、女だと思ってパーティー組んだら女声なだけのオッサンだったとか、イケメンボイスだと思ったらオッサンだったとか……オッサンたち絶対に楽しんでるだろ。
それでもこれが切っ掛けでくっついたらしい美女とおっさんの話もあるらしいので冒険者たちにとっては結構楽しめる企画みたいになってるようだ。
でも、僕等どうする? 下手したらそのままはぐれて行方不明になる人でてくるかも?
んー、あ、そっか。グーレイさんの足、銀色で見分けつきやすいからこれを目標にして集まればいいのか。
ギルドの受付で黒のローブを人数分貰う。
すごいなぁ、アーデやパッキー達の分まで普通に用意されてたぞ。
キャットハムターがローブ纏ってどう? どう? と皆に見せるようにくるくる回っている。
よっぽどお揃いが気に入ったらしい。
ん? なにくねくねちゃん? ああうん、似合ってる似合ってる、可愛いよ。
顔は良くわかんないというか棒が人型にくねってるだけの存在だから可愛いも何もない気がしなくもないけど、そう告げてみると、凄く嬉しそうにくねくねし始めた。
「ふむ、とりあえず、これで上にある本拠地に向かえそうだね」
「ほんとにな。スパイとか気にしたりしてねぇのかね?」
「魔王復活教団本部は魔族領だしそこまで警戒する必要がないんだろうね。新しい魔王が生まれることには魔王達は気にならないみたいだし」
ギルドを後にした僕らは黒いローブのまま、目的地向けて歩きだす。
おい、ババァ、黒ローブなのに中で発光したら丸わかりだろっ!?
恐いよ、発光する黒ローブ滅茶苦茶怖いんだけど!? 皆驚いてこっち見てるじゃん!?
「うーん、Gババァは目立つなぁ」
「まぁ目印があっていいじゃねーか。最悪の場合Gババァの元に集まりゃいいわけだ」
「確かにその通りか。じゃあ皆、逸れたらGババァの元に集うってことにしよう」
グーレイさん探すよりはすぐに見つけられそうだ。
と言っても僕とリエラはローブ着てないからすぐ見分け付くんだけどね。他の人から見えないけど。
「うわー、パルテノン神殿みたい」
「斬星君、そのパルテノン神殿? っていうのはなんだい?」
「簡単に言えばこんな感じの建物ですラウールさん」
「ほほぅ。なかなか面白い建築だね」
いや絶対コピペした奴ー。
「やってくれたねパンティさん。私は君を誤解していたようだ。十分立派な駄女神二号だとようやく理解したよ。うん、バグ君の言葉は本当だったようだ」
あーあ。グーレイさんが駄女神認定しちゃったよ。可哀想にパンティさん。言い訳すら出来ずに駄女神待ったなしだ。
「おお、いらっしゃい皆様、本日来られるとは運がいい、今、奥で魔王陛下召喚の儀を行っている最中でございます。ご観覧いかがですか?」
神殿に入ると同時に、そこにいた黒ローブの人が話しかけて来た。
「魔王陛下召喚の儀? 一般観覧可能なのかい?」
「はい、命の保証は致しませんが、興味がおありでしたら、あちらの奥へお進みください」
僕らはお礼を言って指し示された場所へと向う。
ちょっと順調に行きすぎな気もしなくもないけど、まぁ順調に進むに越したことは無いよね。
「凄いな。内装まで殆ど一緒だぞ」
『最高司祭用の部屋って宇宙船模してませんでしたっけ?』
「ははは、行かないでおこうか。ソレを見てしまったらこの先も駄女神二号君とまともに付き合える気がしない」
あーこれ相当頭に来てるなぁ。
駄目だぞーパンティさん。グーレイさんの世界丸パクリしちゃったら。
今のグーレイさんはゲキオコプンプン丸位の怒りはありそうだ。