二百五六十一・その草原にあるサークルの先を、彼しか知らない
SIDE:灼上信夫
岩山を抜けると、ホワイトイエローの草原へと辿りついた。
正直目が痛いくらいに原色に近いのが辛い。
出現する魔物も似たような色合いの兎とか、ゴブリンとかモスマンとかが多く、保護色のせいでなかなか魔物の接近に気付きにくい。
といっても、ユーデリアさんというチートキャラがいるので、僕らが気付かなくても勝手に闘いにいってくれるのでそこまで危険は無かったりする。
魔物もそこまでこちらに襲ってくる感じでもないし、近づきすぎたら攻撃してくるタイプばかりなのでユーデリアさん任せで十分戦える。
リックマンさんたち戦いたい派も、ユーデリアさんが見付けてくれた魔物をいくつか貰ってストレス発散。
そこまで強い敵もいないので、僕等としても安全に探索が行えるようになった。
ここの守護者は見付けても放置しとこう。これだけ動きやすい場所は滅多にないから安全地帯として残しておきたい。
そういう理由でユーデリアさんたちにも守護者っぽいのはスルーして貰うように告げておいた。
大丈夫だと思うけど、うっかり弱そうな魔物倒したら守護者だったとかありそうなんだよなぁ。
―― あー、あー、ただいまマイクとテスト中。ただ今マイクとテスト中 ――
あ、駄女神だ。っていうかマイクの、じゃなくてマイクさんとなんかのテストしてんのか?
―― その近くになんかない? 連絡が取れてるってことはアレがあると思うんだけど ――
「尾道さん、ナニか感じますか? この辺りに歪みがあるらしいですけど」
「え? えーっとそうですね。あの辺り、でしょうか?」
「うわ、魔物が結構いるな。むしろ集まってるのか?」
「蹴散らそう」
言うが早いかユーデリアさんが突撃してしまう。
仕方ない、皆フォローに動いてくれ。
告げると同時に遠距離部隊がユーデリアさんのフォローに入る。
正直、彼女は強いけどソレゆえに扱いが難しかったりする。
戦闘狂だから勝手に突撃しちゃうからなぁ。
まぁ、でも駆逐戦に関しては彼女任せの方が上手くいくのは上手くいくんだよなぁ。
「ドルァッ!!」
うわぁ、ゴブリンが頭掴まれて別の魔物にぶつけられてる。
あれは死んだな。
「見る間に片付いて行く。リックマンさんたちが参戦してるけど、一人だけ撃破数がケタ違いね」
「あれはユーデリア、あれはユーデリア……」
月締君、まだ慣れないのか……
「それで、この辺りの地図はできそう?」
―― 草原が広いからちょっち待って。あ、でももう歪みがフェアリーサークル化しそう…… ――
フェアリーサークルになる速度ってまちまちだよね。
歪みが出来てすぐに変化するのもあるし、何時まで経っても歪みのままってのもあるし。
この歪みは結構早くに変化するっぽい。
―― おっし、ギリチョン、これで勝…… ――
あ、途切れた。
歪みがあった場所が変化を起こし、フェアリーサークルへと変化する。
さて、これは何処に繋がったかな?
「じゃあ、早速だが向ってみるよ」
周辺の敵が居なくなったのを確認し、リックマンさんがフェアリーサークルへと踏み込む。
掻き消えるリックマンさん。そして数秒。
再びリックマンさんが現れる。
「どうです?」
「正直驚いた。が、今回は普通に向こうに戻れたぞ。どの辺りの場所に出たかは分からんが、高地の一部だ。平たい大地だが、高地の位置が相当高い位置にあるので安全地帯としての活用は難しいな。空気が薄すぎる」
地球でいうならギアナ高地とかそんな感じの場所だったらしい。
人が住んでいる感じもしなかったので休憩所としては使用出来るものでもなさそうだ。
フェアリーサークルを蹴り転がして、僕らは先に進む事にした。
しばらく行くと、今度は既にフェアリーサークルが出来た地点にやってくる。
これを見付けたのは先行したユーデリアさんで、うぬら、見付けたぞ。と嬉しそうに告げて来た。
どうでもいいけど、僕らを纏めて言う時にうぬらとかいうのはちょっと女の子としてどうなのだろう?
あと、最初に出会ったころと比べてだいぶ筋肉質になってきたような……まぁまだ美ボディと言えるくらいだからいいんだけど、このままだと女性ボディビルダーを経てガチムチ系に入り込みそうなんだよなぁ。ドンマイ月締君。
「のっぴょろん」
あ、のっぴょろさんが行くの?
フェアリーサークルへと入って行くのっぴょろさん。
そしてしばらく、僕らは彼の帰りを待った。
しかし、モザイク生物は僕らの元へ帰って来る事は無かった。
「あれ? 帰って……こない?」
「まさか早速!?」
「ま、待て、のっぴょろんが死ぬわけがあるか、私が見て来る!」
一向に帰らぬのっぴょろさんに痺れをきらし、ノヴァが率先してフェアリーサークルへと入る。
しかし、向こうへと転移することすらできなくなっていた。
これって……向こうでフェアリーサークル壊れたってこと?




