二百五十四・そのこれからの進行方向を、彼女は知らない
SIDE:灼上信夫
斬星君たちは帰って行った。
温泉街の魔王別邸に戻った僕らは、一旦休憩を設けて温泉で疲れを癒し、一日爆睡。
そして気分をリフレッシュしたあとで、会議室に集まっていた。
「さて、そんじゃ、会議始めよう。今回はこれからどこ進むかって話だ」
「つか、西も東も駄目ってぇなら北か南しかねーだろ」
「北はいいぞぉ、小川は釣り放題だ」
「黒い海があったんだっけ?」
「くまっぴょろん」
「南はなんだっけ?」
「守護者一体倒した位であまり探索進んでないかな」
「んー、じゃあどうせ砂浜までしかいけないわけだし、北側埋めて南かしら?」
「それがいいかな? って、あれ? シルバーたん何処行った?」
「ん? 報告」
いつの間に……
ということはこれからしばらくシルバーたんは帰って来ないのか。
まぁ戦闘には参加してくれないから居ても居なくても問題無い存在ではあるけども。
「海が黒いってことは海の中にも守護者っているのかしら?」
「さすがに闘うのは無謀そうだなぁ」
「何、いざとなれば海を割ればよかろうなのだ」
「それ出来るのユーデリアさんか尾道さんくらいだよ」
「さ、さすがに私は出来ませんよ!?」
いや、尾道さんならなんか出来そうな気がする。
「んで、北の海岸まで行ったあとはどーすんだ? 海岸線沿いに移動してみんのか?」
「一応海岸線まで向ってからいけそうなら、って感じかなぁ」
「あと、いちいちここに戻るのもアレだし、今度フェアリーサークル見掛けたらちょっとくぐってみない? 街の近くに出るようなら中継地として使えるでしょ?」
「確かにそれは使えそうだけど……まぁフェアリーサークル形作ってる奴を動かさなければ問題無いのか。最悪ソレを壊せば裏世界の魔物が溢れ出ることはなさそうだし」
今度見付けたら入ってみるか、何処に通じてるかによるけど、確かに中間地点的な物ができると便利ではある。
「ただ、向こうの状況次第だし、様子を見にいく人物は一人にして数分待っても戻ってこないなら二人目、それが戻って来ないなら全員、もしくは二人を諦めて撤退。どっちがいいと思う?」
「様子を見に行った二人が帰ってこない、となると不測の事態が起こったってことよね?」
「全員で解決に向かうか、切り捨てるか、か?」
「正直、様子を見に向かった二人が死んでる可能性ってあるか?」
「向こうが魔物の巣窟だった、そもそも人が住める場所じゃ無かった。空の上だった、海の中だった、とか?」
「人間の町だったけど兵士に囲まれた、とか連行された、なんてのもあるかも?」
「連行された場合は全員で救出に向かえるけど、海の中だったりした場合はくぐった瞬間全員揃って窒息か」
「ちょ、嫌な事言わないでしょ。昔のローグライクゲームじゃないんだから」
「何処に通じるかわかんねーし、仕方ねーだろ。で、リーダー、その生贄は誰になるんだ?」
「生贄言わないでくれるかな矢田。一応、言いだしっぺだし、僕、それともう一人は……ユーデリアさんかな、腕力での解決役に、もしくは尾道さん」
「いや、待ってくれ灼上君。君に万一があるとその方がマズい。最初の偵察は、私が行こう」
「おいおい、正気かおっさん?」
僕を行かせるのはリーダーを欠く可能性を考え却下された、代わりにリックマンさんが立候補する。
いや、一応、ちょっと考えてただけに罪悪感が出ちゃってるなぁ。
肯定される可能性も高かったけど、このチームのリーダー失うのを恐れた誰かが立候補してくれないかなぁとか密かに思っちゃったんだよね。
「役に立ってないなら俺達もそうだろう? なぁ相棒達」
「のっぴょぅ」
「くまっぴょぅ」
そういえばこいつらがいたなぁ。
バグってるせいで正直強いのかどうか全く分からない三人組。
いや、むしろくまっぴょろんさんはベアハッグとかベアクローが冴え渡る時があるからいいんだけど、他の二人、剣振り回す位でそこまで目立たないんだよなぁ。
「あー、じゃあそこの四人ローテーションでいいんじゃね? もしくは二人向って一人現状報告に戻ってくるとかよ」
「ああ、それは確かにありかもしれないね。いや、でもそれなら一人で向って現状報告に戻って来て貰った方がいいかも? 魔物の巣でも、向こうの魔物をこちらに引き入れながら現状報告してもらえれば良いはずだし。闘いにはなるだろうけど全員で当たった方が撃退はしやすいでしょ」
「それもそうか」
よし、方針は決まった。
次に目指すのは北方面。フェアリーサークルを見付けたらとりあえず入ってみる。
向こうの状況次第では中継地として活用。
無理はせず直ぐに戻ってきて報告。
最悪戻ってこない場合は……
「見捨ててくれ」
「リックマンさん!?」
「正直直ぐに戻ってくるつもりで潜るんだ。それでも戻らないってことは死んだと思った方がいい」
「それはそうだけど、いいのかリックマンさん? 見捨てられるのはアンタかもしれないんだぞ!?」
「小玉君。私だって見捨てられたい訳じゃない。しかしすぐに戻るつもりなのに戻れないという状況で皆揃って潜る方が危険だろう。その場合は海の底や宇宙だったと思って貰った方がいい」
リックマンさんが覚悟を決めていらっしゃる。やっぱり大人だから、なのかなぁ。自分が恥ずかしくなってきたぞ?