二百五十三・その守護者がどんな姿だったのかを、彼らは知らない
SIDE:灼上信夫
Gババァが空を駆け去っていく。どうやら空から探してみるようだ。
しかし、この二人、いや三人が駆け付けてくれて良かった。
場所、伝えてなかったけど神様が味方についてるってことで教えてくれたんだろう。ほんとにラッキーだったよ。
下手したら既に僕なんか死んでたかもしれないし。
「はー、いや、斬星君とバグ君、マジ感謝」
「ん? いや、バグ君じゃないぞ、今回来てるのバグさんだよ」
ワッツ?
「えっと、バグ君だろ? 見えないけどいる、んだよね?」
「いや、バグ君じゃ無くてバグさんの……もしかして灼上さん、バグ一人だけだと思ってる?」
「……違うの?」
「アーデの保護者がバグ君、その恋人で剣術のプロがバグさんだよ。凄いよなぁ、あの剣術。実際に見えるようになったらぜひ教えてほしいくらいだよ」
「見える?」
「あれ? 聞いてないんですか? バグさんとバグ君は召喚の失敗でバグってるらしくて、今女神たちがそのバグを取り除いてるところですよ」
初めて聞いたんだけど?
向こうの情報とこっちの情報だいぶ差が出来てないか?
いや、まぁいい。それについてはまた後だ。今は無事に生きて帰ることを考えよう。
「斬星君、向こう帰ったらグーレイさんに一度会って話し合いしたいって告げておいて」
「いいっすよ。グーレイさんに伝えときます」
あ。白い処刑に……ひょこっと顔を出した次の瞬間その体が真っ二つに切り裂かれる。
「おー、斬星君、ナイス」
「え? いや、斬星さん何もしてないような……」
「見えない速度で剣振るってるんだ、あはは……」
もはやヤケクソに近い。
こんなバレバレの嘘で騙せるか、と思うんだけど、シルバーたんはふむと唸り、
「剣の英雄、凄いわね」
信じた!?
ヤバいよ信じちゃったよ!? どうしよう斬星君!?
「いや、僕にいわれても」
あ。光の筋がこっち向かって来る。
Gババァ戻ってき……あっれぇ、白い大地が消えてくぞぉ?
「すまんのぅ、見付かって戦闘になったから殺してもうたわい」
いや、別にすまなくは無いけど、結局ここの守護者ってなんだったの?
「白のなんとか、じゃったか、あれのちょっと太ったサスペンダー男みたいな容姿での。肉削ぎ包丁っていうのかい? おおきな包丁持っとったわい」
相対しなくてよかったような、見てみたかったような……
まぁ、問題はなさそうだからいいか。
白の森がなくなり、一帯を鶯色が浸食していく。
「緑色の森なのに、なんか変な感じ……」
緑は緑だけどさすがにちょっと変だよねこの森。
「とりあえず、白い場所は無くなったし、あの変なバケモノはもうでて……」
「おい、なんか出て来たんだが……」
マスクがちょっと違うガチムチマッチョが森の中からこんにちわ。
マスクが鶯色なのと、手に持っているのがバールのような物なので種類は違うようだが、近類種だ。
「あー、グリーン・クラッシャーだってよ」
呆れた顔の矢田が告げる。
鑑定の結果、緑の破壊者という魔物だと判明、しかしそんな緑の破壊者は破壊することすらなくその命を次々に終えて行く。
「切りがないのぅ」
「仕方ない、Gババァさん、鶯色の守護者も倒して来てくれません?」
「まぁ、それが妥当かの、それじゃぁちょいと行こうかね」
Gババァが優秀過ぎる。
空走れるし、速度が光と同じだし、男特攻だし、もはやパーティーに一人は居た方がいいかもしれない。
いや、でもパーティーメンバーの男性陣、常に貞操危機になりそうだからやっぱり止めとこう。
「お、鶯色も消えてくぞ」
「次は……ショッキングピンクか……」
「うわぁ、一面ピンク色の森とかさすがにちょっと引くわぁ」
「もう出てこないわよね?」
「止めたまえ、さすがにフラグになりそうな気が……」
Gババァの到着を待たず、そいつは現れた。
「一応、伝えるぞ。ピンク・ブッチャー」
もうやだ、この周辺こんな生物ばっかじゃん。
「ええい、撤退、撤退だー、もう、しばらく東には行かないからなーっ!!」
これ以上戦ってもなんか似たような生物ばっかり襲ってきそうなので戦略的撤退を行う事にした僕でした。
さすがにちょっと堪えたわっ。
しばらくは北と南を埋めて行こう。そうしよう。歩覇してやんぜ裏世界。なんつって。
「さすがに私ももういいわ、あの軟体生物、攻撃避けるし、不気味だし、しばらくは会いたくないわね」
「僕も、ユーデリアについて行くのも大変だけど、ああいうの相手にするのも金輪際したくないですね。とはいえ、裏世界移動するなら避けては通れそうにないですが」
「西の住民ぶつけようぜ。あいつらと共食いしてくれりゃ楽に駆逐できるんじゃね?」
矢田、それ制御失敗したら彼らにも襲われることになるから却下で。