二百五十二・その助っ人を、彼らは知らない
SIDE:灼上信夫
ある日、森の中、白い殺人者さんに、出会っちゃった。ど、どどど、どうしよう!?
なんか森の奥からひょっこひょっこ出てくるんですけどぉ!?
逃げ切れるか? いや無理、無理よりの無理。
あ、これ全滅エンドじゃね?
「ふぬぁ!」
さすがのユーデリアさんといえども一体を受け持つのが精いっぱいらしい。
しかも結構時間がかかりそう。
負けないだろうけど勝ちにくい相手のようだ。
つまり、彼女が勝つまで防衛しなきゃいけない。
しかし、防衛すればするほど敵が増えてます。
現状で拮抗。これ以上増えたら多分死人が出る。
―― 今、……ん……ら、も……って ――
ノイズが酷い。
どうやらもうすぐ特異点がフェアリーサークルになるようだ。
ああクソ、なんだってこんな危険な状況になってるんだよ? さっきまでぜんぜんピクニック状態だったじゃん!?
「ええい、遠慮いらない、喰え、喰ってくれ檸檬!」
「トラウマなりそうだけど、言ってる場合じゃないわね。陸斗、フォローお願い」
「任せろ、全員サイコロステーキにしてやんぜ!」
それもそれで引く発言だと思います。
ってか、単純に数が足りない。
相手はほら、また一体増えたし。
丁度ユーデリアさんが一体始末出来たから追加分を撃退に向かってくれたけど、このままだと相手の補充ペースに負けてしまう。
「クソ、なんでこんなの大発生してんだよ!?」
「つべこべ言ってる暇、ないでしょっ!」
「わぁってんだよ!」
矢田もさすがに面倒臭がりながらもしっかりと対応してくれてる。
美樹香たんとバディ組んで一体担当してるけど、意外と戦闘面ではこの二人相性いいな。
矢田が正面でタンクして美樹香たんが奇襲を仕掛ける。
とはいえ、相手が相手なので普通に対応されてるのが辛い。
なんで頭があの角度で曲がるかな?
全身の骨が軟体なんじゃないかと思えるほどの稼働域を持っている。
正直びっくり人間だ。
「灼上さんっ!?」
え? ピピロさ……うおぉぉぉっ!? あ、あぶな、危ない。
危うく頭の真ん中にチェーンソーが刺さるとこだった。
っていうか、まだ増援だと!? さすがにまず……い。
「ふぇっふぇっふぇっ!!」
不意に老婆の声が響いた。
超高速で飛び込んできたGババァ。
即座に蹂躙を開始。そして何故か逆回りにいた白い処刑人たちが倒れ始める。
これは、まさかあのバグ君とやらが助っ人に!? 強い、強いぞバグ君!!
うっわ、凄い斬れ味。コイツとかチェーンソウごと真っ二つに袈裟掛けされてる。
剣術凄過ぎじゃないか!?
ひぃっ!? なんか細切れになったんですけどっ!?
もはや隠れてる意味がないとばかりに頑張り過ぎじゃないですか!? ゴールドたんとかシルバーたんも見てるんですが!?
「なんか、凄い勢いで敵が減って……」
「ははは、Gババァさん参戦で、す、っごいなー、あはははは」
「あー、皆、遅れてごめん」
へ? あ……
「斬星君っ!?」
まさかの助っ人三人目として剣の英雄様がやって来た。
え、なんで? 君戦えるの?
「あー、その、アレっす」
あれ? と、彼の指先を辿ると、今まさに剣術による一撃で敵を屠るバグ君の姿。
思わず斬星君を二度見。
あ、そういうこと。つまり、バグ君が頑張って敵を倒す。不自然に敵が倒れる。
明らかな剣による太刀筋。
そこに現れる剣の英雄。
「剣の英雄がやってる? いや、でも今手にした剣は振るってないし、灼上さんと話し合ってるし……」
「す、凄いじゃないか斬星君。離れた敵も斬れるのかい!?」
「えー、まぁ、こんな感じっす」
ふっと剣を軽く振る。
するとその剣の遥か先で敵が細切れになっていた。
そんなバカな? とシルバーたんが口開けて驚いている。
つまりまぁ、不自然な剣撃は全て剣の英雄様の攻撃ってことにするつもりらしい。
いや、普通に騙されたりはしないだろ。
バグ君、無理あると思うよ?
でも、凄いな。あれだけ数が多かった敵が瞬く間に数を減らして、既に残り三体。
一体はユーデリアさんが倒し、もう一体はGババァに倒され、そして今、残りの一体が16分割された所だった。
張り切ってるなぁバグ君。
「助っ人ありがと斬星君」
「いや、僕あんま役立ってないですし。Gババァに半ば拉致されてきたんすよ」
それは、ご愁傷様です。
っと、追加分は? 居ない……な。
よかった。正直生きた心地しなかったよ。
「この白の領地はこのまま守護者を退治しておこう。すまないけどGババァさんと斬星君、もう少しだけ手伝ってくれないか?」
このままだとあのジェイソ○もどきが再発生しそうだからさっさと消えて貰おう。
「ええよええよ、さっさと終わらせようじゃないかい」
そんじゃ、Gババァさんに偵察行って貰おうかな?




