二百五十一・その襲撃者を、彼らは知りたくなかった
SIDE:灼上信夫
うーむ。
思わず唸る。
何を唸るって? 何もすることがないからさ。とりあえず何かやってますよと主張する為に唸ってるのさ。
現在、裏世界の一角で時間待ち中です。
尾道さん主導で変な感覚のある場所を捜索し、そこでしばらく佇むことで外界との連絡を構築。
神様らしい駄女神さんとパンティ神とアルセ神様がその間に外界との接続方法と裏世界の構造を解析する、を繰り返しているところだ。
一つのところで大体30分くらい。
解析が終われば別の場所で同じことを繰り返す。
あとフェアリーサークルができてたらそのサークルを形作る物を蹴り転がすか踏みつぶして消しさるようにしている。
―― だいたいこんな感じかにゃー ――
ん? おお、なんだ? 変な紙が上から降って来た?
―― 調べられたところの地図作ってみたよ灼上お兄ちゃん ――
ぐほぅっ! アルセ神様萌えぇ!! って危ない、口に出したらまたアレが来る。
来てない? 来てないな? 姿見えないからいつ来てるか分からないのが恐い。
気付いた時には既に殺されててもおかしくないからな。
「へぇ、これは随分綿密な地図ね」
「おい、この地図すげぇな。三段階に変化するぞ!?」
全体図とこの周辺の地図、それとこの地の色分の三種類。色分けされてる地域を領地扱いして底の地図だけを今は表示している。
周辺地図だと限定的過ぎてわかりにくいし、全体図だと場所が定まってないので中心にちょろっとなんか書かれているようにしか見えない。
色分けはされてるから周辺にどの色の土地があるかはわかりやすいけど僕らには関係ないし。
―― なんとなんと、この地図は君たちが歩けば歩くほど自動でマッピングしてくれるのだよ ――
「な。なんだってぇー!?」
自動マッピングシステムとかゲームの世界じゃないか。うはー、テンションあがる。
いいなこの地図。おお確かに、周辺地図にして歩きだしたらちょっとだけ地図が動いた。
え、これ凄い。どんな技術詰まってんの!?
「あら、なんか凄い地図持ってるわね。どこで手にいれたのかしら」
目敏く見付けたのはシルバーたん。
グネイアス帝国に持ち帰るつもりか? 天罰下っても知らないぞ?
「ふっ、神様からの贈り物さ」
「信夫、ダサい」
なぁ!? 僕渾身のジョ○ョ立ちが!? ゴールドたん酷いっ!?
「にしても、そろそろ次の地域に行っても良い気がするんだが、ここの森ホント広いよな?」
「守護者、どこにいるのかな? ねぇ陸斗?」
「やめろ檸檬、フラグになったらどうする」
やめて、二人してフラグ構築しようとしないでくれたま……ひぃぃ!?
森の中、木陰の間に、こちらを伺う仮面が一つ。
フゴーフゴーと言ってそうな仮面は、どう見てもジェ○ソンが付けてそうな樹を切る時に付けるあの独特のマスク。そして手には……
僕が気付いた瞬間、ソイツは武器と思しきチェーンソーを起動させた。
ブイイイ、ブイイイ、ブイィィィィィィィィ――――ッ
そして5メートル大のムキムキマッチョなやべぇのが現れた。
「ぎゃーっ!?」
「うっわ、何アレ!?」
「撤退、撤退だ!」
地面を割り砕きスプリント走りをするジェイ○ンモドキ。木々をタックルで粉砕し、こちらに向けて疾走してくる。
棺の盾を構え皆の殿に残るピピロたん。
盾とチェーンソーがぶつかりあい物凄い音が響く。
「そんな!? 拮抗してる!?」
あの盾、雑魚モンスター消し飛ばせるんじゃなかったっけ!?
反射攻撃も効いてないのか!?
むしろ腕力に押されてピピロたんの足が地面を擦りだす。
「このままではいけませんね」
ピピロたんの窮地に気付いて歩きだす尾道さん。
バーコード頭が風に揺らめく。
さっそうと歩く尾道さんは手をひらを前にだす。
「貫波」
顔面を撃ち抜かれた○ェイソンモドキは、しかしぐいんっと関節を無視して頭部を背後に隠して避けていたらしく。すぐに元に戻る。
「これは、今までのようにはいきませんか……」
「うわぁ、なんっつーやべぇのが……矢田、鑑定は?」
「今やる! あー、名前はホワイト・エクスキューショナー」
白の死刑執行人!? 恐、名前からして殺す気満々じゃん!?
「全員、逃げるのは無理だ、ここで仕留めよう!」
奴の移動速度はどう考えても僕らじゃ勝てない。
―― 駄目よ、逃げなさいっ! ――
えぇ!? 駄女神さんまだ念話使えたのか!?
でも、コイツそんな危険なんです?
―― 一体じゃ……のよっ ――
ワッツ?
ちょっとざざっとノイズが走って聞き取りづらかったけど、一体じゃない?
おいおい、まさか、これって守護者じゃなくてただの雑魚敵……
ギュィィィィィッと嫌な音が背後から聞こえた。
うげ、マジやべぇじゃん!?