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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
 第二話 その町の名を彼は知らない
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その引き金が引かれる理由を、彼は知らない

 教会を後にしたカインたちは、その場で向き合い話を始めていた。


「これで大体用事は済んだから、私とカインは宿に向うけど、あなたはどうする?」


「そうですね……あ、そうだ。アルセが何か書いてたじゃないですか。あれ、調べてみようかと思うんですけど」


「あー。そういえば言ってたな。学者の知り合いなんているのか?」


「……それは、いませんけど……」


 萎れるリエラに溜息吐いて、カインはネッテに視線を向ける。


「はいはい。ウチのに任せてみましょうか」


「ネッテさんは知り合いが?」


「まぁ……ね。知り合いと言うかなんというか……」


 少しぼかした言い方で、ネッテは歩きだす。


「それじゃ、行きましょうか」


「先に言っとくけど、大きな声だすなよ」


 カインが小声でリエラに耳打ちし、ネッテの後を追う。

 首を捻りながらもリエラが歩きだしたので、僕もアルセを連れて歩く。

 すると、リエラが手を伸ばしてきた。

 目の前に差しだされた手に、アルセが首を捻る。


「一緒に行こうアルセ」


 思わずアルセは僕を見る。

 どうすればいいのかと問うている瞳に、僕はアルセから手を放してリエラと結ばせてみる。

 リエラが歩きだすと、手を引かれるアルセは、後ろを不安そうに見つめてきた。


 なので、大丈夫とでも言うように、リエラの逆隣りを歩きアルセの頭に手を乗せてやった。

 それでアルセは安心したように空砲を鳴らしだす。


 僕の存在に安心してくれているようで、アルセに信頼されてるんだと気付かされたのは嬉しかった。

 意志疎通が出来ないのが本当に残念だ。


 でも、リエラやカインたちよりも僕が居る事でアルセが安全だと思ってくれるなら、やっぱり僕はアルセが危機に陥らないように影ながら助けようと思う。

 アルセの頭上で揺れる双葉を千切らないように撫でながら、僕は自分のやりたい事を再認識するのだった。




 そして、しばらく歩き、人の波を越えてやってきたのは……城だった。

 ……でかい。

 石造りの城壁が見上げる程に立てられた城門を前に、僕は思わず見上げていた。

 ついついアルセから手を放してしばし荘厳な外観に呆然とする。


 ついでに隣でリエラも口を開けて見上げていたりした。

 アルセに関しては城門の前で佇む二人の衛兵を見ておおーっと声を上げている。

 衛兵はまさに衛兵としての職務を全うしている。


 突っ立ったまま微動だにしていないのだ。

 昔テレビで外国の警備姿を見た事はあるが、アレの再現だ。

 瞬きすら殆どしていないのが凄い。

 多分蹴ったり叩いたり笑わせたりしても微動だにしないように心掛けているのだろう。


 変な事して職務怠慢でクビとかになると人の人生台無しにするという重い枷を背負うことになりそうなので、透明だからと悪戯するのは止めることにした。

 ちょっとくすぐってみたいとか思うけど、やってはいけないとぐっと我慢する。 


「あ、あの……もしかして……」


「ああ。ネッテはここの第三王女だ」


 ぐっ。おのれリア充め。

 そんな王女と二人旅をしていただと!?

 しかも勇者? イケメン!? 爆死しろマジで!!


 僕は思わずカインを殴りつける。

 死角からの見えない一撃は思い切りカインの後頭部を襲撃した。

 何も無い場所でいきなりカインが前のめりにつんのめったので見ていた衛兵たちの顔が笑いそうになっている。だめだ。笑っちゃダメだ。君たちの人生を背負うなんて僕には重すぎる。


 ネッテが見ていることに気付いて慌てて顔を真面目に戻していた。

 第三王女である以上、笑ってしまったところを見られれば確実に首が飛ぶとかそんな感じだろうか、若干顔が青褪めてみえる。


「いってっ」


 頭をさすりつつ後ろを向くが、カインの後ろには誰もいない。

 カインの頭の上にハテナマークが踊っているような顔をしていた。

 確かに殴られた気がしたのに殴ったはずの人物が見当たらない。

 結果、訳が分からず首を捻るが問題が解決しないので忘れることにしたようだ。

 その間に、ネッテがリエラに語りかける。


「他言は無用にね。動きにくくなるから」


 そういう問題か?

 ネッテが衛兵の前に向い話しだす。

 すると、暇を持て余したカインがアルセに近づいてきた。


「にしても、コイツは俺らの言葉理解できてんのか?」


 小首を傾げるアルセに苦笑する。

 その場にしゃがみ、アルセの顔に視線を合わせるカイン。


「わかるならなんかリアクションしてみろよ」


 せっかくなのでアルセの手を操ってカインの眉間に空砲を撃ってやった。

 笑顔で固まるカインを見て、ちょっとスカッとした僕だった。


「カインさん、弾入ってたら即死でしたね」


 クスクス笑うリエラにカインはバツの悪い顔をする。

 アルセは僕が操った行動が気に入ったのか、さらにカインに向けてカチカチと空砲を鳴らしだす。


「ええい、やめろアルセっ」


「ふふ、ある意味気に入られたみたいですねカインさん」


「死体役でもしろってか、冗談だろ」


「何してんの? 話し終ったから行くわよ」


 ようやく会話が終わったらしいネッテが戻ってくると、カインもリエラもそちらに視線を向けて歩きだす。

 アルセがまだカインに銃口を合わせていたが、僕が頭に手を乗せてみると、銃を向けるのを止め、歩きだす。

 あ、でもすぐにまたカインに銃口向けてる。

 余程気に入ったんだな、カインを撃つの。

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