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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
最終話 その彼の名を誰も知らない
1692/1818

二百四十三・そのバグが来たことを、彼らは知らない

 SIDE:灼上信夫


 ―― やぁ、僕、バグ君。今、魔族領にいるの ――

 

 な、なんか念話で変な声が聞こえるんですが……


「ちょっと信? なんか凄い冷や汗出てるけど大丈夫?」


「美樹香たん、ぼ、僕は、地雷を踏んだかも、しれない」


「はぁ?」


 ―― やぁ、僕、バグ君。今温泉街にいるの ――


 え? ちょ、早!?


「ま、不味い、逃げねば!?」


「いや、リーダー? 逃げるってどこにだよ?」


 慌てて周囲を探り、逃げる方向を考える。


 ―― やぁ、僕、バグ君。今裏世界にいるの ――


 ちょぉぉ!? 速い速い速い!? 普通の人間じゃねぇ!? なんだこのバグ君? メリーさんより恐いんですけどぉぉぉ!?


「み、皆こっ……」


 ―― やぁ、僕、バグ君。今、君の真後ろにいるの ――


 は、はあぁぁぁぁ!?

 そんな訳あるか、と思わず振り向こうとする。

 しかし、そんな意思とは裏腹に、なぜか体は嫌にゆっくりと動いているように感じた。

 そして、僕の背後、そこには……

 しわしわで白髪で見るに堪えない老婆のキス待ち顔が……


「ぎぃやあぁぁぁぁぁッ!!?」


「うおお!? Gばばぁ!? いつの間に!?」


「うっわ、恐。いつから居たの!?」


 は、はーっ、はーっ、はぁぁ!? し、死ぬかと、死ぬかと思った。

 今一瞬心臓止まった。止まったよ!?


 ―― あはははは。まぁ仲間のよしみってことでこの位で御許ししましょう。今後はアルセに変な視線向けんなよ? Gババァに童貞奪わせるぞ? ――


 極悪!? 脅しが極悪過ぎませんかぁ!?

 天の声のアルセ神たんに萌えた、それだけでそこまでされるいわれは無いでしょうよ!?


 ―― あー、灼上君。多分バグ君とGババァがそっち行ってると思うんだけど、アルセやアーデの保護者だからバグ君の前でストーカー発言とかしたら死ぬからね、気を付けて ――


 どんな危険人物だよ!?


 ―― んでも、神様経由とはいえ、念話出来るようになったのかー。ようやく僕やリ荏Гжも話に加われそうだね ――


 今、なんか雑音入ったぞ?


「あー、その、えっと、とりあえず味方、でいいんでしょうか?」


 ―― シルバーさんとゴールドさんには秘密でね。あの帝国にはまだバレたくないので ――


 はぁ、なんか何処からともなく見てる味方がいるのか。

 それで、なにしに来たんです?


 ―― え? 当然アルセに変な感情向けないよう注意しに来ただけだけど? ――


 本当にモンスターペアレントだった!?


 ―― 失敬な。僕のどこが危ない親なんだ。ちょっと過保護なだけだよ ――


 いや、おかしいおかしい。絶対娘に対する反応じゃ無かったでしょ今の!?


 ―― それより、グーレイさんがこれから魔王復活教団本部に向かうから現在地教えて来いって言われてさ。それで……あれ? 何ソレ? ――


 それ?

 言われて僕が周囲に視線を向けると、丁度尾道さんが違和感があると言った場所にフェアリーサークルと思しき物が生え始めた所だった。


「成る程、こうやってフェアリーサークルが増えるのか。尾道さんが反応したのはこのフェアリーサークルが出来る場所だった訳だね」


 ―― へー。ってことはついさっき見えてた空中の楕円はフェアリーサークルになる前の次元の歪みってところかな? ――


 え? このバグさん、尾道さんでも良く分かってない奴が見えてるの?


 ―― バグ君、今の本当かい? ――


 ―― グーレイさんから念話来た!? ああうん。多分だけどリエラも見えると思うよ、次元の歪み。あ、ほら、あそこにも出来てる。灼上さん、あそこに尾道さん誘導してみて ――


 と、僕の腕が一人でに上がる。

 驚いたのは一瞬。まるで誰かに腕を持たれているような感覚に、まさかと理解する。

 このバグ君なる人物。僕からすれば透明人間的存在なのか。

 そしてアーデの保護者という訳だし、最初期からずっとグーレイさんと共にしていたとみて良さそうだ。

 だから僕等に対しても気安いんだな。


「あーっと、尾道さん、あの辺りはどうです?」


「え? あ、はい、確かにあの辺りにも違和感があります」


 ―― 間違いない。アレは表と裏の境目だ。薄くなった場所にフェアリーサークルが生まれるんだろう ――


 そして薄くなっている状態なら表しか念話が出来ないらしい神様と念話ができるようになる、らしい。

 フェアリーサークルの数は増えているってことでいいんだよね?

 ということは、裏世界が表世界に混じり続けているってこと?


 ―― んー、可能性はありそうだね。っと、とりあえず、えいや ――


 と、バグ君なるものが何かしたと思えば、フェアリーサークルの小石部分を一つ蹴りつけたらしい。

 その瞬間、何かが脳裏をかすめた気がした。


「おや? ここの違和感が消えましたね」


 それきり念話が聞こえなくなった。おそらくさっきのノイズみたいなのは回線が開かれたままだった念話が強制遮断されたということだろう。

 神様の念話に便乗してたバグ君の念話も聞こえなくなったようだ。

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