二百四十・その蕪がバグって無いのにバグったことを、僕らは知りたくなかった
森の守護者が満足したので、ようやく僕らは魔族領へと出発できた。
森の中は守護者が加護くれたので魔物に襲われることはなくなった。
道中、幸運の御蔭か魔族にも人族にも出会わなかったしね。
森を抜けて魔族領の草原を歩く。
この辺も変な魔物多いなぁ。
あのタラコ唇に目だけくっつけたような二頭身生物はなんなんだ?
カネ○ンの親戚かな?
カ○ゴンって言えばお金好きだったらしいけど、こいつは草毟って食べてるな。
どうやら襲ってくる生物じゃないみたいだし、放置で良さそうだ。
というか、こいつらゴールデンオカブ見て慌てて逃げて行ってる。
なんで、と思ってそちらを見れば、ゴールデンオカブの周囲に渦巻く高濃度の呪詛。
呪人並じゃなかろうか?
名前:
種族:自走野菜/黄金呪蕪
称号:アーデの従者、死呪の体現者
レベル:298
スキル:
奇妙な踊り: あやしげな動きで踊り狂う。見る者にSAN値チェック付与
黄金の左: 良い左、持ってるね。
拳技Lv40: 拳による攻撃技術一式。
暗殺術L20: 相手の意識外からの攻撃技術一式。
詐術L5: 相手を騙す技術一式。
オ前之物ハ俺之物: 倒した相手の能力・スキル・アイテムをランダムで奪う。
即死の魔眼: 睨みつけた相手を確率で即死。
超幸運: やることなす事に幸運が降って来る。
呪殺共生: 呪い、即死攻撃を吸収する。
埋まる: 土に埋まることで体力回復、成長、養分吸収を行う。
超再生: 欠損した体も再生させる事が出来る。
背負う意思: 自らの成長のために倒して来たオカブ達の意思を背負う。想いが多いほど能力値に+補正。
所持アイテム:
幻の黄金呪蕪、ふかふかな土、オカブの想い×12832
……あれ? おかしいな。僕バグ使ってないはずなのにこの蕪ステータスがおかしいぞ?
即死の魔眼って、お前目なんてあるのか!?
というか呪殺共生って、絶対アーデの血を受けた時に貰ったろ。その御蔭でくねくねちゃんの呪い受けても平然としてんだな。
あと超再生、どう見てもアーデの血から貰っただろ。
意外と多いのは背負う意思。お前どれ程のオカブヲウバウたちを倒して成長して来たんだよ!? ちょっと多過ぎじゃないか?
あと呪われてるせいで食材としての価値がほぼ皆無になってるんですが……
まぁ食事としてみなければ問題は無いか。
『オカブヲウバウ……なんか凄いチート化してません? バグさんバグ使いました?』
いやいや、全然使ってないよ!?
コイツ勝手にバグったんだよ、僕のせいじゃないからね。
『勝手にバグったって……あ、でもアーデが血を使ってましたよね、アレのせいかぁ』
『いや、納得してるとこ悪いんだけどね、なんでただの蕪が再生したり即死の魔眼発動させたりするんだよ!?』
そんなこと言ってもグーレイさん、こいつどう見ても普通の蕪じゃないじゃん。黄金だし呪われてるし。
呪いは後天的だけども。
それまでに一万程のオカブヲウバウたちをぶっ倒してるのは確かだし。
「そろそろ草原抜けんぞー」
歩きだしてからは凄く楽しそうなガーランドさん。
あの話し好きの守護者が話し終わるのを待ってたせいでストレスあり余ってるんだろう。
ストレス発散のために今は歩くだけでも楽しいらしい。
「おー?」
草原の先にあったのは荒れ地。
草が一つも生えてません。何この不毛の大地?
少し戻ったところには草生えてるのに、ここからは急に土肌が露わになってる。
「あそこに見えるのが次の町ですね」
荒れ地には、草原の魔物は一切おらず、また独自の進化した魔物達が幅を利かせていた。
足だけ生えた石が恥ずかしそうに動いて、適当な場所で腰を据えてたり、禿げ鷹と思しき鳥が遠巻きに落下して来て僕らを見つめて来たり、うんこいつは何故か黄金蕪見つめた瞬間力を失ったようにその場に倒れて動かなくなったけどね。
蕪の目と合って即死したようだ。
だから蕪の目って何処にあるんだよ!?
見る気は無いけど滅茶苦茶気になる。
あの鳥は一体何を見たって言うんだ!?
「おい、グーレイ……ほんとにいいのか?」
草原抜ける辺りでガーランドさんに耳打ちしていた事を言ってるんだろう。ガーランドさんがグーレイさんに寄って来て耳打ちをし返していた。
僕らの事、皆に話す事にしたらしい。
ただし、カッパーちゃんとブロンズちゃんには内緒なんだって。
その為に一度自由行動にさせて二人を報告に向かわせるつもりだ。あるいは、既に事情を知っているメンバーで妨害してる間にグーレイさんに暴露して貰うつもりである。
まぁ、妨害程度ならメロンさんとかだけで十分こなせそうだけど。Gババァも居るし何とかなるかな?