二百三十九・その森の守護者が話し好きなのを、僕らは知りたくなかった
「で、のぅ、儂は言ったんじゃ……」
森の中央。僕らはとある広場で移動を止めて座り込んでいた。
倒れた大木を椅子にして、力無く座る姿は敗残者といったところ。
理由はグーレイさんに話しかけてる類人猿、というかフラマンドリルというフラダンスするマンドリルの守護者のせいだ。
なんかフラゴブリン倒しまくってたら出て来たんだけど、くねくねちゃんの踊りをいたく気に入って会話が始まり、グーレイさんが代表してここで話を聞く事すでに一時間。
会話に飢えていたフラマンドリルの口は一向に閉じることなく、グーレイさんも要所要所で頷くので話が弾む弾む。
結局話に付いていけなくなった暇人共が夢の跡状態になっているのである。
アーデとくねくねちゃんは楽しそうにフラゴブリンどもと踊ってる。
呪いを発動させてないので凄く盛り上がってるのがなんともとりあえずCGには取ったけど、なんか呪われそうだなぁこの画像。
「でのぅ、人間共と魔族が……」
グーレイさんはまだ掛かりそうだし。リエラは……って何してんのリエラ?
『あ、バグさん、せっかくなので採取依頼に使えそうな草、取っとこうかと、見てください。これ、ハイポーションの素材ですよ』
へー。この形状の草取ればいいのか。
『あ、それは猛毒草です』
じゃあこれか?
『麻痺草ですね』
……これ。
『ジギタリスです』
分かるかぁーっ!
えーい、草取りなんてやってられっかーっ。
『あらら……』
せっかくなので森の周辺のを散策、ちゃんと皆が見える位置だけを円周状に歩くだけだからね。
おっと、なんか棘リスが多いなぁ。
君等危ないから寄ってこないで。
ん? なんかいる? 森の中から皆に視線を向けているのが一匹。
カマキリだ。
二メートル大のカマキリがゆっくりと距離を詰めている。
よし、リエラーっ
『どうしました? 草摘みしま……ショットランスマンティス!?』
え、こいつそんな凄そうな名前なの!?
『危険生物なので皆に把握される前に倒しましょう。えいや!』
そして大して見せ場もなく細切れにされるマンティスさん。
さらにこちらを見て呆然としている斬星君とギオちゃん。
……って、なんでいるの!?
「よ、予想はしてたけど、ほんとに居たよ……」
「な、何もしてないのに魔物が細切れに……わ、私もアレに攻撃されてたのね。そして意味不明の能力でこうして女の子になった……」
ありゃー、バレちゃったか。
まぁ殆どバレてたようなもんだし今更かな。
「これはもうグーレイさんに問いただすしかないなぁ。一応味方だし、ちゃんと存在してるなら味方として扱った方がいいよ。僕としてもずっと戦功奪ってたみたいで申し訳なかったんだ」
はぁ、なんかもう散策って出来る雰囲気じゃないなぁ。戻ろうかリエラ?
『そうですね。これからグーレイさんが突き上げくらっちゃうでしょうし』
にしても、どうしようかなぁ。
普通に紹介されるべきか、それとも言葉を濁して今まで通りの状況にするべきか。
まぁ隠すほどじゃないから正式な仲間として紹介された方が禍根が無くていいか。
でもカッパーちゃんとブロンズちゃんがちょっと不安だなぁ。
と考えながら戻ると、なんかおかしな状況になっていた。
広場の真ん中にゴールデンオカブが潜り込み、パッキーに献身的な世話をされてその周辺をフラダンスグループが円を描くように踊っている。
アーデまで参加してるし、なんだこれ?
「あの、グーレイさん、何コレ?」
「いや、フラマンドリルが踊りたくなったらしくて、いや、うん。私も何が起こったのかはまだ理解できてないんだ」
どうやら衝撃的展開に思考回路が付いて行かなかったようだ。
「ま、まぁいいや。それよりグーレイさん。重要な話があるんだ」
「ん? なんだい斬星君?」
「そろそろ、教えてくれないか? 見えない誰かのこと……」
「……ついに、知る気になったのかい」
グーレイさん、雰囲気替えんな。なんか凄く秘密ありますって顔するな。
秘密なんて殆どないんだから。駄女神たちの失敗の秘密しか出てこないよ?
―― やめてー、あちしの失敗暴露しないでーっ、おにー、あくまーひとでなしー ――
だってグーレイさん神だもの。人じゃないから問題無しだね。
―― なんてこった!? グーレイさんにはこの言葉が届かないのかーっ!? ――
「いいだろう。覚悟が出来たなら、次の街で話そうじゃないか」
「その言葉、忘れないでください」
いや、ほんとそんなかしこまる必要性ないからね。というか斬星君ソレを知る必要性ってあるの?
あ、待って、ねぇ待って。ゴールデンオカブの身体が一回り大きくなってるよ!? 皆気付いてっ。くねくねちゃんのお呪い効果で変な黒い靄纏ってるよーっ!?
 




