表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
最終話 その彼の名を誰も知らない
1687/1818

二百三十八・その森の中の川を、僕らは知りたくなかった

 キャットハムターもストレス発散出来たようで今はゆったりアーデの頭の上でお昼寝中だ。

 ちょっと血糊がまだついてる気がしなくもないけども、ゆっくり休んでいる姿は小動物って感じで可愛いんだよなぁ。

 なんであそこまで猫を目の仇にするのか……種族特性といえどえげつない。


「おや。結構広めの川があるね」


 グーレイさんが足を止める。

 茂みを掻きわけた先に、川が流れていた。

 飛び越えるにはちょっと広い位の川だ。

 水の中に入れば十分渡ることは可能だろう。


 問題点と言えば、水の中に魔物が潜んでいた場合、襲われる可能性が高いという事である。

 川を渡っている時に襲われたらそりゃもうそれだけで大ピンチだ。

 皆どうやって渡るんだろ?


 って一番最初に行くのはパッキーか。

 ぴるるるるっと水の中に入ると、そのまま泳いで……あっ。

 川の中からでっかい魚が大口開けてパッキーをぱくり。


 誰も反応すら出来ずに見送ってしまった。

 魚は妙に綺麗な放物線を描いて川へと戻る。


「ぱ、パッキーっ!?」


 そして遅れてプチパニック。

 さらに川から迸る光りの奔流。

 川に真っ赤な何かが広がり、パッキーが顔を出す。


 うん、問題は無かったようだ。

 そのまま川を渡り切り、満足そうな様子で皆を待つ。

 あっけに取られていた皆は、互いに顔を見合ってどうする? といった様子を醸し出す。

 あ、そうだ。アーデ。川に蔦で橋、作れない?


「おーっ!」


 ナイスアイデア! とばかりに目を見開くアーデ。

 川縁によると、そいやーっと両手を上げ、マーブルアイヴィで橋を作る。

 Gババァにピストン輸送して貰うのもありだけど、こっちの方が皆的にも気楽に移動できるだろう。


 川魚が口を開いて跳びかかってくるが、蔦の橋が強固過ぎて噛み切れず、諦めて川へと戻って行く。

 さらに高く跳んだ魚はガーランドさん達により切り裂かれて経験値と化して行った。


「やるじゃねーかアーデ」


「おーっ」


 アーデを褒めるガーランドさん。凄いでしょウチのアーデは。可愛いだけじゃ無く有能なのさ!


「ところで、この蔦の橋、ずっとここに放置でいいのかにゃ?」


「他の奴にとっても移動しやすくなるしいいんじゃねーか?」


 まぁ、放置しといても問題はないでしょ。むしろ通行の便利が良くなっただけじゃないかな?


「そろそろ人族領から魔族領に入るはずだ。この辺りの警戒が一番キツい、気を付けてくれ」


 どうリエラ?


『今のところ近くに気配はないですね。魔物位でしょうか?』


 と、何か出て来た?

 目の前に現れたのはフラダンスしているゴブリンだ。

 腰蓑の揺らし具合が絶妙だ。


 くねくねちゃんが対抗するように前に出て踊りだす。

 しばし、踊り合う二人。決着は唐突に訪れた。

 そう、フラゴブリンが吐血して倒れるという結末で。


 そりゃくねくねちゃんの呪いの踊りを真正面から見続けたら死にますわ。


「あ、ライノバズーカ。こっちには気付いてないね」


 いち早く見付けたのはエストネアさん。

 かなり遠くにのっしのっし歩くサイが一頭。

 突如、身を低くしたと思った次の瞬間、空気を引き裂き弾丸のように飛び出すライノバズーカ。そのままどっかに飛んで行った。

 うん、あんなもん突っ込んできたら普通に死ねるわ。


 あ、またフラゴブリンだ。

 この辺こいつ多いのかな?

 くねくねちゃんが前に出ると踊り対決になるのでダメージを喰らうことなく呪殺できちゃうのはチートなのではなかろうか?


「なんつーか、随分と楽に森移動できてんな?」


「普通はもうちょっとライノバズーカが襲って来たりするんだけどね。幸運かな?」


「おー?」


 木の枝ふりふりアーデがなーに? と見上げて来る。

 気のせいだろうか? アーデの幸運が仕事してない?

 もしかしてだけど……あ。


 突如空からふってきた猿がアーデの木の枝を分捕った。

 え? と驚くアーデ。木の枝を無くした手が空を切る。

 ああ、泣いちゃう、アーデが泣いちゃうっ。


「キキッ」


 いたずら成功、と飛び退いたクソ猿に渾身のドロップキック。


「ぎょぼっ!?」


 はいアーデ。木の枝だよー。恐かっただろう? クソザル殺すぞ?


「ウキィ!?」


 何が起こったのか理解できない猿の頭を掴んでアーデの前に。

 未だに慌てる猿の顔面を地面に無理矢理押しつけ土下座させる。

 ほら、アーデに謝れ。謝ってもとりあえず殴るけど、それまでひたすら謝ってやがれ。


「お、おー……」


 アーデが苦笑い気味なので、一先ず許してやる。

 解放された猿は慌てたように逃げて行った。

 次は無いぞクソザル?


『バグさんホントアルセやアーデにちょっかい掛けた相手に容赦ないなぁ』


『バグ君のそういうところちょっと異常だと思うんだ』


 失敬な。人を性格破綻者みたいに言わないでくれないかな? 僕は普通の学生さんですよ?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ