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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
最終話 その彼の名を誰も知らない
1686/1818

二百三十七・その森の中の猫狩さんを、僕らは知りたくなかった

「おー。森だ」


「ここから魔族領に入るんだ。結構デカい森でな。確かヘイゼル森林だったか?」


「ヘイエルじゃなかったかしら?」


「まぁ、どっちでもいいだろ。細かいこたぁ気にすんな」


 とりあえず、この森を抜けるとどこの国の砦を突破する必要もなく魔族領に行けるらしい。

 といっても魔族や人族の兵士が見回っているらしいので出会えば敵対必死らしいけど。

 一応冒険者も入ってたりはするので、言い訳は可能、そういう理由で結構な頻度でここを人族魔族の領地への移動手段にしている奴らは多いそうだ。


「別に魔族領普通に砦通ればいいんじゃねーの?」


「駄目よジャスティン。私達ってばS級でしょ、いろんな領地に一気に噂広がっちゃうから魔族領にある魔王復活教団の方に情報が行っちゃう可能性があるのよ」


「あー、それでわざわざこんな方法で向うのか」


「ついでに言えば、この面子なら森越えの方が楽だからってのもあるけどね」


「基本人族魔族なんてGババァだけで十分だにゃ」


 ババァキッスの被害者増やさないでください。

 

「ここの森に出てくる魔物は大型が多い。ライノバズーカにだけは気をつけろ。あのクソサイ、かなり遠くから弾丸のように飛んでくるからな」


 サイって装甲車みたいな角生えた動物でしょ? あれが弾丸みたいに跳んでくんの? なにそれ恐い。


「あ、だからってライオットモンキーへの警戒忘れちゃだめよ。あいつら荷物や武器奪い取ろうとしてくるから」


 おっと、まさかの盗人猿の出現か。

 猿にはいい思い出がないんだよなぁ。あの吾輩野郎って最初は僕らをバカにして遊んでたし。ミーザルから進化しまくった今ではウザいだけで迷惑って程の事はかけてこなくなったけど。


「他にはどんな生物が?」


「ハリリスが危険かな? ハリネズミっているでしょ? リスの背中にアレが付いてるの、好戦的じゃないけど、たまに足踏み外して枝から落下してくるのよ」


 へー、そんな……アーデ危ないっ!

 僕は咄嗟に近くにあったモノを手に取りアーデの真上にかざす。

 サクッ

 あ、危なかった……


「お、おおおおおっ!?」


 ん? どうしたのアーデ、そんな眼を見開いて……あ、やっべ、すまんゴールデンオカブ。

 僕はどうやらゴールデンオカブをアーデの盾にしたらしい。

 そこにはゴールデンオカブにぷっすりと突き刺さった丸まったハリリスがいた。

 ゴールデンオカブに突き刺さったせいで動けなくなったハリリスがじたばたしてる。


「ちょ、言ってる傍から、大丈夫なのコレ?」


 ゴールデンオカブも慌ててるけど、ダメージ受けてる感じじゃないね。自分の身体に突き刺さってる針に驚いてるだけって感じだ。


「おーっ」


 えー、こいつなんかに血の回復使っちゃうの? アーデ結構気に入ってるんだねぇこいつ。でも過剰回復過ぎる気が……

 あ、ほら、なんか再生スキル付いちゃったじゃん。再生する蕪って何よ?


「きゅ?」


 ん? どったのキャットハムター? なんか急に何かに反応したような……

 いや、待て、こいつが反応する者なんて一種類しかいねぇじゃん!?


「チュアァッ!!」


 怨敵発見、とばかりに悪鬼も逃げだす表情で走りだすキャットハムター。

 そのいままでとの落差に驚く皆は付いて行けず、一匹だけ突出してしまう。


「Gババァさん!」


「まかせなっ」


「ったく、いきなりどうした!?」


「彼女がああなるのなら理由は一つだろ。ほぼ確実に猫科の魔物だ」


「あー、なるほど」


 まぁ、名前もスキルも猫特化だしね。ホントなんでニャークリアさんは狙われてないんだろう?


「ふっふっふ、日ごろの行いだにゃ」


「ニギャアァァァ!?」


「チュアァァァァ――――ッ!!」


 僕らがそこに辿りついた時、サーベルタイガーと思しき二メートル大の魔物の群れが、たった一匹のハムスターに蹂躙されているところだった。

 な、なんという惨劇。

 普通に出会ってたらこっちが全滅覚悟のサーベルタイガー約20頭がすでに数える程に……


 しかも既に相手は戦意喪失中だ。後は蹂躙されるだけの状況。そして相手は猫科に特化し過ぎたキリングマシーン。

 マッチョ化したキャットハムターが両手に事切れたサーベルタイガーを引きずりながら残りのサーベルタイガーたちへと一歩、また一歩距離を詰めている。

 あ、あのGババァが戦慄している、だと!?


「あ、あたしの足が、震えておる、じゃと……」


 猫科の天敵……めっちゃくちゃバーサーカーじゃん!?

 アーデ、本当にアレ、仲間にして良かったの!?

 なんかもう二メートル越えの巨大なサーベルタイガーたちが怯えまくって弱い者イジメしてるみたいだよ!?


「おーっ」


 キャットハムターがんばれー、じゃないよ!?

 なんでそこで応援しちゃうの!?

 ほら、気合入っちゃったじゃん。

 既に事切れたサーベルタイガー振り回して突撃始めたし!?


「あー、なんだ。あいつはほんと、猫科にだきゃ容赦ねーな。ニャークリア、敵認定されなくてホントよかったな?」


「にゃ、にゃんのことかにゃぁ、あ、あちし猫じゃないにゃ。にゃはは……」


 尻尾、パンパンですよニャークリアさん。

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