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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
最終話 その彼の名を誰も知らない
1684/1818

二百三十五・その蕪の栽培難度を、僕らは知りたくなかった

「ちょぉぉ、なんでそっち行こうとすんの!?」


「この土そんなに気に入らないのか!? 畜生ッ!」


「おー?」


 いざ始めると、なぜかアーデの周りの土に入り込もうとするオカブヲウバウたち。

 アーデから何か変なモノでてるのかな?

 まぁアーデ自体神様になったアルセの木から生まれたんだしなぁ。そりゃちょっと神聖オーラが漏れ出てるのかもしれない。


 ただ、我先にと争うせいでアーデが困惑してるからお前らは駄目だ。

 ええい、寄るな寄るな寄らば斬るぞーっ。

 

「うわ、パッキー上手い!? 一本だけだけど普通に甲斐甲斐しいお世話してる!?」


 無駄に甲斐甲斐しいお世話だからオカブヲウバウが争うことなく一身に世話を受けて育ち始める。

 いや、パッキー、それって一日中やっとくの? どれだけかかると思ってるの?

 というか、もう一つ一つを隔離しちゃった方がいいのでは?


「んー、一応ポジション争いは夕方までで夜中は土の中で過ごすらしいし、早朝から夕方まで数日過ごせば収穫時になるからそれまでの拘束だよ私達は」


 なんだその意味不明生物? いや植物?

 野菜として動くだけでもおかしいのに、時間決めて争うって……

 しかも徒党組むし、裏切るし、人間みたいだよ!?


「おーい、皆ー、お昼だにゃー、蕪の煮物だって」


 蕪食っちゃうのかよ!? あ、傷物になった方か。


 結局、その日からしばらく僕らはオカブヲウバウたちの仲裁を行うようになった。

 手塩にかけて育てる野菜といえば聞こえはいいが、ちょっとでもミスすれば被害者がでて枯れてしまう争う野菜はもう二度と育てたくは無い。


 ただ、パッキーだけは凄く楽しそう。あいつのとこだけなんか一回り大きくなってる気がするし、デカいせいで他のオカブヲウバウたちもあの場所を得ようとは思わないようで。遠巻きにしていらっしゃった。


 アーデは早々に飽きたらしく、今はキャットハムターと農地を駆けまわって遊んでいる。

 たまにオカブヲウバウの草部分をむんずっと捕まえてぶんぶん振り回しながら駆けてるけど、オカブヲウバウたちは楽しそうだから問題は無いんだろう。

 あいつ等の喜ぶ感情がどこにあるのか謎過ぎる。


「ギオさんの育ててる蕪、なんか凄くみずみずしくなってる?」


「そ、そうかな? 英雄君のはなんか勇ましい感じ? カッコイイね」


 ……


『バグさん、そんな顔私に向けられても困ります。なんですかそのバカップルがいるんだけどどうやって殺せばいいかな? みたいな困惑顔は』


『いや、どんな顔だよ!? というか君たち参加しないのかい?』


 アーデに危険がないか見守らないとだし。


『そもそも私達が手伝ったら突然宙に浮く蕪とか高速で離れて行く蕪とか出て来て大騒ぎになりますよ?』


『それもそうか……うぅ、気安く引き受けるんじゃなかった。これは本当に面倒臭い』


 数が多いので一匹見てる横で他のオカブヲウバウが乱闘始めちゃうんだよね。

 そうやっていつの間にか破れて倒れてるのが数本でちゃうのである。

 一本駄目になるだけで100000円程の損失らしいからそりゃもう皆涙目だ。


 しかも理由は野菜たち自らの自傷行為だっていうから居たたまれない。

 そして必死に他の蕪たちを見守るのだけど、やっぱりちょっとした見落としで犠牲者が、どんどんと少なくなっていく蕪たちにさすがのS級冒険者たちも打つ手がなかった。


「くそ、確か最初は300本くらいあったよな?」


「もう100本切ってるわ。収穫までこの速度だと5本残ってるかどうかよ」


「なんなんだよこの野菜はっ!? そりゃ高いはずだよな高級野菜。ふざっけんな! って、ああまた!?」


 交替で見守るとしてもこの数をこの人数で見守り切るのは難しい。

 農家の人も手伝っているけど、毎年10本くらいしか残らないらしいので当てには出来ない。

 S級冒険者としてそれなりの給料をもらってると言っても これだけの損害は想定外である。

 いや、いつもよりは多いから嬉しいとは依頼者に言われてるんだけど、あと二日、収穫まで何体のオカブヲウバウが生き残る事か。


 僕らも手伝ってはいるんだけど、こいつらリエラの超感覚すらも裏をかいて殴り合いしてるんだもんよ、力尽きた奴は土に埋めても枯れてくだけだし。その日の内に食べるしかなくなるのだ。

 あーもう、バグらせちゃおうかっ!?


『絶対に止めろお馬鹿!? そんなことしたら収拾付かなくなるだろ!?』


『そうです、そんなことしたら今日はGババァさんと一緒の部屋で寝て貰いますからね!』


 絶対嫌だその罰ゲーム!? 一度でもそんなもん受けたらデヌさんのことお父さんって呼ばなきゃいけなくなるじゃん!? それだけは絶対に防がねば!!


「にしても、パッキーの凄くない?」


「既に通常の三倍くらいでかくなってんだが……」


「おー」


 そして肥料とばかりにヒヒイロアイヴィを周囲に出すアーデ。その蔦をその場で枯らして腐葉土にしてパッキーのお世話をお助けしてた。

 アーデ。なんて良い子……っ。 

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