表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
最終話 その彼の名を誰も知らない
1683/1818

二百三十四・その塩漬け依頼の面倒さを、僕らは知りたくなかった

「すまんグーレイ、助けてくれ」


 その日、ガーランドさんが帰ってくるなりグーレイさんの前に膝を付いて土下座した。

 正直一瞬の出来事だったんで何が起こったのか理解できず僕らはしばし硬直してしまった。

 ほんと、宿の部屋に入って来て即行の土下座だったのだ。


「が、ガーランドさん、と、とりあえず土下座をやめようか」


「すまん。本当に、このようなことを頼むべきじゃないことは分かってるんだ、だが、あの塩漬け依頼は俺達だけでは無理だ」


「あー、とりあえず話を聞きましょうか。それに、私達は仲間な訳ですし、そんな改まって土下座などしなくても手伝ってくれと言われれば手伝いますよ?」


「いや、そんな気易く手伝って貰えるようなものじゃないんだ。その程度だったらこんなことするわけねぇだろ。一応S級冒険者だぜ俺は? その俺が頭下げてまで頼んでる、それくらい面倒臭ぇ案件なんだ」


 そんなにヤバい塩漬け依頼受けちゃったのか。

 しかもS級冒険者だからやっぱ止めますって訳にも行かないし、時間を掛ければ出来なくはないらしい依頼なので止める訳にもいかない。

 しかし時間を掛けようとすれば途方もない時間がかかるらしい。


「あー、とりあえず依頼内容を教えてくれるかな?」


「畑の害獣退治……野菜が害獣」


 なんソレ?


「え? どういうこと?」


「育ててる野菜が曲者でな。他の野菜引き抜いて自分がその場に埋まるんだ」


「殺しちゃダメだし、守るべき相手も害獣だしで本当に面倒なのよ」


「あー、もうストレス溜まるにゃーっ。モフれ!」


 と、ニャークリアさんだけ僕の元にやってきてぼっふと背中から僕に座ってくる。

 とりあえずモフればいいの?

 リエラ、モフっていいってさ。


『よーしめっちゃくちゃモフっちゃいますよ。バグさんは喉よろしく。胸とか触ったらお仕置きです』


 ひぃぃ、間違っても触らないようにしますっ!


「成る程、ある程度の状況は分かった。でも、なんでそんなモノ育ててるんだい?」


「知らねぇよ。なんでもこの世界唯一の農場なんだとよ」


 辞めちゃいなよそんな農家。


「とりあえず、明日からしばらくは皆助っ人を頼みてぇ」


「まぁ折角だし行ってみようか。皆で行けば何かしら対策も思い付くかもだし」


「僕らが居なくなってからだとどうなるんですかね? 今回だけじゃ無くて毎年作ってるんですよね?」


「ああ、毎年選ばれた奴らだけが収穫される。そのせいで年に10個もあれば豊作らしい」


 なんだその野菜。

 他の野菜蹴落として実を付ける野菜ってちょっとどうかと思います。


 ……

 …………

 ………………


 明けて翌日。

 僕らはガーランドさんに案内されて農場へとやって来ていた。

 眼の前に広がるのはあまりにも広大、ではなくこじんまりとした野菜畑。

 それでも民家四軒分位の農地がある。


 そこに、幾つものカブが埋まっている。

 これが噂のオカブヲウバウという名前の自立野菜である。

 主食のお株を奪うくらい物凄く美味しいらしいけど、なんでこんなに殺伐としてるんだろう?


 オカブヲウバウ達が畑の中でバトルロワイヤルしていらっしゃる。

 同じオカブヲウバウ達なのに、殴り合い、蹴り合い、倒れた者から集団リンチで倒されていっている。

 これが野菜だというのだから酷い農場もあったものである。


 しかもただの戦うだけではない。

 時に結託し、時に裏切り、時に策謀する。

 まさに闘争。野菜としての生命を掛けて良い土を自分のものにしようと皆必死に闘っていた。


「なんだろう、僕は三国志を思い出したんだけど……」


 言われてみれば、あそこの三本とか劉備と関羽と張飛の三人に見えなくもない。

 一本を守るように二本が守ってる姿とか、他にも曹操っぽい一本が複数のオカブヲウバウたちを指揮して他のオカブヲウバウたちを倒し、領地を増やしている。

 もう一つの徒党を組んでいるチームは防戦に重きを置いているようだ、これは孫権っぽいかも。

 確かに三国志っぽい闘いになってるなぁ。

 個別に闘ってるオカブヲウバウたちは早々に駆除されていってるし。


 倒されてしまったオカブヲウバウたちは傷物なので野菜としての価値は下がるそうだ。

 おっと、劉備たちが追われて孫権の居る場所に向かっていくぞ? これはかの有名な逃走劇ではないか。犠牲を沢山出しながら南下し、そして軍師を手に入れる。


 追い詰められた三本が周囲を探す、そこに、一本のオカブヲウバウが居た。

 三本がその一本を頼る。三度目で仕方ないな、と三本を守るように策謀を……違う、こいつ、諸葛亮じゃない! 三本が曹操軍に取り囲まれた!? こいつ、司馬懿だ!?

 あああ、劉備たちが見せ場なく討ち取られていく!?

 しかもその勢いで孫権軍まで蹂躙を……あ、曹操が味方にリンチされて倒された!?


「うーん、三国志、じゃないなぁ、普通にバトルロワイヤルだこれ……」


 もはやチーム戦とかあってないようなものだった。これを、争わないように守り切るのか……さすが塩漬け依頼、一筋縄ではいかなそうだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ