二百三十二・その剣の特性を、彼らは知らなかった
数日後、僕らは未だに同じ国にいた。
なんかガーランドさんたちが長期の塩漬け依頼受けちゃったらしくてしばらく動けなくなったのだ。
ギルドからぜひやってほしいと指名依頼されたのと、国潰しの汚名返上のために仕方なく引き受けちゃったらしい。
汚名、なのかな? 別に誇ってもいいんじゃない、国潰しのガーランド、とかちょっとカッコイイじゃん。
なので、本日はアーデと一緒に街の探索をしちゃってるバグ君です。
今日一緒なのはリエラと斬星君とギオちゃんです。
基本女の子になってしまったギオちゃんは本気で乙女なので、一人で道を歩こうものならナンパされるし断り切れずに困った顔になるしで心配なので護衛として斬星君が今回残った。
リエラが居ないだけで戦力ガタ落ちな斬星君は自分から戦力外です、休みますと自己主張したのでこっちに回されたのである。
ほんと、自信無くしてるなぁ。バグ、一回いっとく?
運が良ければ良いバグ付くよ?
『やめたげてください。少しずつですけど強くなってますよ彼。武器さえ揃えば大化けしますから。ほら、ピピロさんみたいになんか凄い剣、どっかにないですかね?』
あー、確かにそれはあるかも。うーん。ポシェットにあるのは宝剣くらいだなぁ。
これじゃ駄目かね?
さすがに脆いか。
『剣の英雄ですから武器次第ですごく強くなりそうなんですけどね。アルセソード貸すべきでしょうか?』
それはやめとこう。リエラの武器がなくなっちゃうし、せっかくだから武器屋寄ってみる? なんか掘り出し物とかあるかも。
と、いうわけで、アーデを誘導して武器屋へと向かう。
斬星君達がなんでここ? と小首を傾げているが、アーデも良く分かってないので小首を傾げている。
うーん、やっぱり話しできないとなかなか難しいよね、人を誘導するのって
『アーデを先行させれば付いて来てくれるからいいけど、私達だけですと分からなくて途方に暮れていたかもですね』
「いらっしゃい」
武器屋に入ると、お爺さんがカウンターから声を掛けてくる。
気さくなお爺さんのようで、結構冒険者たちと会話しながら会計してるようだ。
まぁ、ソレはどうでもいいや。斬星君用の武器は……
「あ、剣を買うのですか?」
「え? あー、そうですね、折角武器屋に来たんだし、剣見てみようか。今の剣も結構前に買った安ものだし、ちょっと奮発してみようかな?」
どれどれ、いいのはあるかいな、っと。
『あ、これちょっといいかも?』
リエラが見付けたのはマギスマイトソード。マギスマイトというミスリル程じゃないけど魔力をよく通し、それなりに硬い金属で作られた剣らしい。
確かに鉄の剣からすればこっちの方が取り扱いもしやすそうだ。
でもせっかくならもっと斬星君専用、みたいな剣を……
「こういうのはどうですか?」
「拳ガードが付いてる剣か……うーん、シンプルだけど良い剣なんだよなぁ。あ、これって……フレアバゼラード!?」
「それは止めておいた方がいいですよ、切れ味はあんまり良くないみたいです。同じ価格ならシルバーソードを買った方がいいと思いますけど?」
「それもそっか」
おっと、このままだとシルバーソード買いそうだなぁ。
早くなんか探さないと……
「お? アーデも剣選んだのか? 二つ?」
「マギスマイトソード、凄い、魔法剣ですよこれ。シルバーソードより一ランク高いですけど、背伸びして買う価値はありそうです」
「へー。じゃあコレ一本買ってみようかな? お金は無駄にあるし……ってそっちは?」
アーデが持って来た剣、はピコピコハンマーだった。
一応剣として振ることはできる。ただ、ダメージは多分皆無だろう。
完全なネタ装備だ。
って、こ、これは!!
見付けてしまった。ちょっとゴツいけど、これはもうみつけっちゃったらコレしかないだろ。
斬星君、新しい剣よーっ。
「ふぇっ? おわっと!?」
思わず投げ渡してしまった。
受け取った斬星君は思わず周囲を探す。
しかし、剣を投げて来た人物など見付かる訳がなかった。
「それ、どっから来ました?」
「分からない。でも、これは……」
それは剣の峰部分はあるが刃の部分がプラズマ放出式になっており、Cの字型と言うかコの字型というか、とにかく、刃の部分がプラズマなのでどんなものでも切り裂ける武器である。
まさにロマン兵器だ、そのせいでわざわざバスタードソードで両手持ち用にしているのだ。
一応片手でも持てるらしいけど、絶対落とすだろうから両手持ち確定にしといた方がいい。なにより、これを構える姿がカッコイイ!
「……買うか」
「え? あ、マギスマイトソードをですか」
「うん」
と、言いつつ僕が選んだプラズマバスタードソードも持って行くのが男の子だなぁ。
やはりロマン武器は正義!