二百二十九・その組織が嵌められていることを、彼らは知る気は無い
「ここか……」
おー、なんか洞窟じゃん。ダンジョンを組織の根城にしてるのかな?
ギルド長と王様のお話し合いを聞き終えた僕らは、グーレイさんと合流した。
んで、ギルドから使者が来て組織の本拠地分かったってことでやってきたのが、ここである。
道中で見聞きしたことは既にグーレイさんに伝えたので、あとは神様たちでどうにかしてくれるだろう。
とはいえ、それが行われるより先に、この組織が壊滅しちゃうだろうけども。
対人戦という事もあり、殺す事が出来そうにないメンバーは宿で留守番、ってなったんだけど、斬星君が一度残ろうとしたけど彼以外全員行くと分かって慌てて参加してきた。
やっぱり一人きりで宿に残るのは嫌だったようだ。
つまり、結局全員で向う事になった。
アーデ、結構血生臭いから留守番でもよかったんだよ? 僕も一緒に残るよ?
「お?」
うん、何言ってんの? とまったく理解されない気使いが切ないです。でもその小首傾げた顔が可愛いから問題は無い。
とりあえず激写しとこう。
「オルァ、たのもーってなぁ!」
洞窟前にいた粗野な見張り二人に真上から急襲。
いやー、まさかメロンさんの風魔法をこんな使い方するとは想定外。
真上に噴きあげてから相手の真上で解除するって、着地失敗したら大打撃だよ? 御蔭で全く気づかれずに倒せたけど。
気絶した二人はアーデの蔦で縛って放置。
ヒヒイロアイヴィだし、逃げだすことはほぼ不可能だろう。
忘れないようにしとかないと脱出出来ずに餓死しちゃうからね。駄女神さんも忘れちゃダメだぞ。
―― 鋭意努力いたします ――
あ、これ忘れるパターンだ!?
「おっと、忘れないうちに、結界を張っとこうか」
「グーレイ? 結界なんざ必要か?」
「状態異常の結界だよ、空気中に変なモノが漂ってるかもだからね」
あえてぼかしたけど、毒素とか漂ってるのかな?
まぁ、結界で弾くなら問題無いか。神様が張る結界だからそこは信用出来るだろうし。
「んじゃ、突撃だ。ジャスティン、どちらが多く倒すか勝負しようぜ」
「いいっすね。んじゃガーランドさんが負けたら罰ゲームはGババァとキスってことで」
「ざけんな! だったらテメェも負けりゃソレすんだな?」
「え゛」
「ふぇっふぇっふぇ、つまり二人を負かせれば両方とできるのかい? んじゃぁ、いくぞえ」
「「ぬおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」」
割り込んできたGババァが早速出発。
否定すら出来なかったガーランドさんとジャスティンが大慌てで洞窟の中へと駆け去っていった。
「馬鹿ばっかだにゃー」
「まぁ、ゆっくり行きましょうか……」
ニャークリアさんとエストネアさんが呆れておられる。
「うぅ……」
「えっと、ギオさん大丈夫? やっぱり宿にいた方が良かったんじゃ……」
「い、いえ、でも私も元魔王ですから、うぅ、なんでこんなに恐いのぉ」
斬星君が友達見付けた、みたいな感じで面倒見ているギオさん。それ、元々魔王がTSしたって覚えてるよね? 元々ガチムチの男だよ?
「あの、とりあえず僕が守りますから後の方にいてください」
「う、うん。その……ありがと」
なんか始まりそうな感じなんですが……
『はいはい、他人の恋路は邪魔しちゃだめですよ?』
え? 待ってリエラ。アレ男と元男。マズいでしょ、そういうのちょっとマズいでしょ?
『大丈夫、男だけの国みたいなのも出来てたじゃないですか、ちょっと好きになった相手が特殊だっただけです。問題無いんです』
えぇぇ? いいの? 本当にアレでいいの?
いや、別に他人の恋愛に口出す気は無いよ。下手に口出して相手がエンリカさん並の豹変してきたら恐いし。
それよりも、だよ。あの二人がくっつくとは限らないんだからそんなむりやりくっつけようっていう風潮は止めた方がいいよ。なるようになるんだから。よっぽどくっつくの邪魔したいならいんだけどさ、下手に関わると恥ずかしがって別れちゃう可能性の方が高いって。
……あれ? 僕って結局あの二人の応援してるんだっけ。それとも茶化してんだっけ?
分かんなくなってきた。
『だから気にしなくていいんですって、ほら、行きましょう』
洞窟内はろうそくの炎が点々と照らしているのでそれなりに明るい。
ただ、やっぱり空気は淀んでるっぽい。
うわ、コウモリいるじゃん!? 共生でもしてるのかな?
「多分だけど、ダンジョンをそのまま利用してるんだろうね。ダンジョン内の魔物が自然発生してるようだ」
よくそんな場所に住もうと思ったな。
「おそらくだけど、安全地帯を活用してるんだと思うわ。その階層なら魔物も湧かないし」
安全地帯か、いろいろ考えてるんだなぁ。
でも雑魚しか湧かないダンジョンなら確かに隠れ家にも使えるのか。