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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
最終話 その彼の名を誰も知らない
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二百二十六・その自重という言葉の意味を、彼らは知る気は無い

「あの、いいんですか? さっきは駄目とか言ってたような……」


「いいか斬星。自分から突っかかるのは死んでも構わない馬鹿だけだ。逆に突っかかって来られたらぶち殺しても文句は無いんだ。これは面子の問題だ。ナメられたままじゃSランク冒険者として他のSランク冒険者まで舐められる。俺らが前例を作る訳にゃあいかねぇんだ。ゆえに、こういう奴は組織纏めて徹底的にぶっ殺す。国が相手だろうが引いちゃぁいけねぇ。あと冒険者ギルドにはしっかりと伝えておくこと、だ」


「あっ、はい」


 ガーランドさんの形相を見て直立不動になる斬星君。余程恐ろしい顔だったようだ。

 理不尽に対する殺意が前面に押し出されて言い表せない程危険な顔になっていた。


「いいか? こういうのには自分からはいかねェことだ。だが、降りかかる火の粉はなんとやら、向こうからやってくるなら、組織ごと確実に息の根を止めればいい」


 と、気絶したままの男を首根っこ掴み上げるガーランドさん。

 そのまま男を捕獲して歩きだす。

 何処へ行くのかと皆で後を着いて行ってみれば、冒険者ギルドだった。


 ざわめく周囲を放置して、ドスドスと怒りの形相のまま冒険者ギルドに突撃するガーランドさん。

 内部で騒がしかった冒険者たちも、ガーランドさんが入ってきた時点で静寂へと移行する。

 何か、触れてはならない禁忌に遭遇したような、恐怖の顔で彼を見守る冒険者たち。


 ドン、と気絶したままの男を受付カウンターへと乱暴に乗せるガーランドさん。対応する事になった受付嬢さんは既に半泣きである。

 ひぃっとか声出ちゃってるし、全身ガクガクだ。

 慌ててお局様らしき受付嬢さんが彼女の元へとやってくる。


「どうなさいましたか?」


「おぅ、この町に着くなりいきなり絡んできたクソ野郎だ。ぶちのめしたら昏不射蟻迂須クラフィアントゥスとかいう組織の下っ端を名乗った。ギルド長に伝えてくれ、これから潰して来る」


「え、クラ……お、お待ちください、直ぐにギルド長が参りますのでまずは冷静にギルド長と話し合いをお願い致します。事の詳細を知りたいので、ギルドとしましてもいきなり絡んできたからという理由だけでは貴方方の安全を保障しかねますので」


「チィッ、面倒クセェな」


「まぁまぁ、落ち付きなさいガーランド。こちらは国に着いて早々有り金全部だせとか言われた被害者よ、ええ、私達はナメられたの、たかが一組織程度が与しやすい雑魚だと、ナメられたのよ? ああ、そういえばギルドカードまだ出してなかったわね?」


「……ああ、そういえば、そうだったな。クソ。冷静なつもりだったが少々怒りに呑まれてたか?」


 頭をぼりぼり掻きながら、どん引きする斬星君達をチラミするガーランドさん。あ、コレもしかして演技?

 なんか普段と違うしブチ切れ中かと思ったけど、結構理性的な目をしてる。

 というか、確信犯だこの二人、この勢いのままギルド長に自分たちの主張を認めさせる気だ。


「ほらよ、ギルドカードだ、身分確認しておいてくれ」


「ありがとうございます、それでは確認を……え? え……す、きぅ?」


 お局様受付嬢は、おそらく秘密裏にブラックリストにガーランドさん達を乗せようとしたんだろう。しかしそこで目にするのは確かな実績。

 粗野なガーランドさんからは想定すらされない強力な級を目の当たりにして、彼女の評価もまた、一気に変化する。


 つまり、S級冒険者であるガーランドさんたちがブチ切れる程の事を昏不射蟻迂須クラフィアントゥス所属の下っ端さんがやらかしたのではという確信だ。

 普通の冒険者だったたらむしろ粗野な感じしかしないガーランドさんの方がやらかしたのだろうとブラックリスト入りして徐々に排除して行く予定だったのだろうが、相手のクラスは他店で実績と品行方正が保障されたチーム。つまり、彼等に問題が無いという証明書でもある。


 なれば問題があるのはそんな彼らを危険人物と思えるほどにブチ切れさせた昏不射蟻迂須クラフィアントゥスの方である、そして、ギルドが認める実力者であるS級冒険者に喧嘩を売った以上、彼らの組織が潰れる事は明白。どれ程癒着していたギルドであろうとも、これは確実であると確証するしかないのである。


「失礼、何かトラブルがあったようだが?」


 少し厳つい40台位のおっちゃんがやってくる。

 おそらくギルド長だろう。


「失礼します、ギルド長」


 お局様受付嬢がギルド長の踵を返させて、少し離れた場所で耳打ちを開始。

 うん、折角だから聞かせて貰う事にした。


「お相手はS級冒険者です。昏不射蟻迂須クラフィアントゥスの下っ端がやらかしたようで」


「何? ではいつものように火消は無理か?」


「下手に火消を行えばこのギルドが本部からの粛清対象にされかねません。S級ですよ? 実績だけでなくその基本精神まで補償されてます。ブラックリストに乗せるには理由が……むしろ乗せた時点でこちらにやましい事があったのではと邪推されかねません。いえ、邪推ならまだしも監査が入れば……」


「むぐぐ……あのバカ共なんという相手に絡んでしまったんだ」


 あー、これずぶずぶに癒着していらっしゃるわー。

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