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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
最終話 その彼の名を誰も知らない
1673/1818

二百二十四・その生物の強さを、彼らは知りたくなかった

SIDE:灼上信夫


 マルーイさんにいろいろ尋ねた結果、僕らはなんとかいくつかこの世界に付いて理解出来たと思う。

 マルーイさんたちは外に出ようとしてないから殆ど分からないらしいけど、分からなくても分からないなりにいろいろと調べているらしい。

 おもに、川の水は寄生虫がいないとか、生で飲めるとか、生息する魔物は食べれるとか。


 姿は気持ち悪いが、この周辺に生息するオーロラハウンドも食べられるそうだ。

 虹色の体躯を持つ狼らしいけど、ここに来るまでは出会わなかったなぁ。

 まぁ出会いたくもないんだけど。


 さて、分かったことで魔王復活関連に繋がる話といえば、この世界にも封印の地みたいな場所は結構あるようだ。

 と、いうのも、マルーイさんたちがこの場所に村を作るまでいろいろ彷徨ってたらしいんだけど、そこで封印されている施設みたいなのを何個か発見したそうだ。

 なぜかその場に魔王が封印されている、その事だけは本能的に理解したそうだ。


 行けば分かるとか言われて、場所を教えて貰ったけど、さすがに一日二日で行ける場所じゃ無かったのでまだ行くまでしばらく掛かるだろう。

 今は温泉街近くのフェアリーサークルを拠点にしてるので、そこより遠くとなればなるほど移動しずらいのだ。

 どこか近場のフェアリーサークル出現しないかなぁ。


「今日は皆で狩りする。参加するか、客人?」


「狩り、ですか、見学だけでも可能ですか? もちろん、素材に関しては取り分は無しでも構いませんよ?」


「見学だけか? まぁ別に問題はない。手伝っても、いいんだぞ?」


 ちょっと落胆したようなのは一緒に闘えるとか思ってたからだろうか?

 だが、下手に参加してなんであいつ等にまで食材分けなきゃいけねぇんだ、みたいな要らない嫉妬や妬み嫉みを受けそうである。


 んで、僕らは案内されるまま、マルーイさんに連れられて広場へとやってくる。

 マルーイさんに似た生物が沢山いた。

 100名前後らしいけど、この顔がそれだけいるとちょっと恐怖だわ。


「誰だ?」


「おおきいひと、おおい」


「みしらぬひと?」


「客人、狩り見学する、食材分け、要らない」


「要らないのか、謙虚。よし、見れ、狩り見れ」


「客人良い奴、狩り見れ」


「まるいひといい人、狩り見れ」


 概ね良好のようだ。

 あと僕は本気でまるい人扱いらしい。

 もうちょっと表現に何かなかったんですかね? 丸い人たちから丸い人呼ばわりされるのはちょっと……


 全員揃って街の外へと向う。

 武器持ってないけどいいのかな?

 やってきたのは青白い平原。


「アレ、狩る!」


 と、丸い人たちが指差したのは、物凄く大きな毛の生えた象。いや、マンモス?

 何故か眉間部分に目が存在し、三つ目になってるけど、多分マンモスだ。

 客人、見とけ、と言われたので駆けて行く丸い人たちを安全圏で見つめる。


 お、マンモスが気付いた。

 突進してくるぞ、大丈夫か!?

 って、うわ、マジっすか!? 足に噛みついた!?


 一人二人と噛みつき、暴れるマンモスにどんどん群がって行く。

 たまに丸い人二人が両手を組んでくるくる回って遠心力で片方の丸い人を投げ飛ばし、投げ飛ばされた丸い人がマンモスの胴体部分にがぶりと齧り付くのが見える。

 っていうか武器って歯なのか……檸檬たんの親戚か何かかな?


 100体もの丸い人たちが噛みつき、さらにそのまま食事を進めるせいで肉を失い始めたマンモスが悲鳴を上げながら倒れる。

 倒れた側の人たち大丈夫かと思ったけど自分の安全圏は自分で食べて作りだしてるようで、正直背筋がゾッとするほどの光景がそこにあった。


 彼らは話の通じる気の良い人ではなかった。

 裏世界に生きる、裏世界に適応した生物だ。

 下手に敵対すれば、骨になり始めたマンモスの如く、僕らも喰い尽くされるのではないかと錯覚すら覚える。


「客人、本当に見てるだけで、いいのか?」


 食べ終えて満足になったのか、口元を赤く濡らした丸い人がやって来て尋ねる。

 無垢な笑みを浮かべた丸い人に、僕はなんとか頷き返す。


「皆さんの狩りがどんなものか見せて貰えただけで十分です。存分に狩っていってください」


「わかった。もう少し、待って、直ぐ終わる」


 そう言って、丸い人が食事の輪に再び加わって行く。

 もしかしてさっきの、マルーイさんだったんだろうか?

 皆同じ顔だから正直どれがマルーイさんか分からない。


 というか、皆、青い顔で吐きそうにしない。

 下手に吐いて向こうに敵愾心抱かせたらいろいろヤバいから。

 ゴールドたん……


「ん、ヤバそうな人はちょっと遠くで吐かせて来る」


 ピピロさんとかこういう耐久値は低そうだからなぁ。リックマンさんもシルバーたんに連れて行かれたみたいだし。

 月締君はユーデリアに抱きしめられて保護されてるようだ。僕も誰か抱きしめてくれないかなぁ?

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