二百十九・その道具が使えるかどうかを、彼らは知らなかった
SIDE:灼上信夫
「そういやよ。ギルドでグーレイ達の動向知ったんだが、なんか知らんが人族領にいるらしいぞ?」
向っている場所が滅茶苦茶遠くらしく、既に近場にグーレイさん達はいなくなっていた。
ゆっくり近場から攻略していくんだと思っていたけど、随分と早く移動したんだなぁ。
普通に移動してたらまだ魔族領の筈なんだけどなぁ。
僕らは今、裏世界に来ている。
何をしてるかって言えば昨日手に入れた光属性の魔道具である。
これを使用した時の魔物の反応を見るのだ。
とりあえず、見える範囲に散らばった仲間たちがそれぞれ魔道具を使って魔物の集合具合を調べることにしたのだ。
ちゃんとフォローに回れる位の距離に離れて一斉に魔道具を使う。
僕が今回扱うのはランタンタイプで内側に光を灯すタイプである。
うん、あんまし効果ないなぁ。
近くにいるにっちゃうっぽいのが逃げる気配すらないし。なんなら他の魔道具から逃げて来た奴がこっち来てるし。
「クソが! やっぱこの剣ガラクタじゃねーか!」
矢田の元へは押し寄せる魔物達の群れ。
即座に反応したユーデリアさんにより討伐されてるから問題はなさそう。
彼女は魔道具に頼るなど貧弱ッ。とか言って魔道具持ってないから、こういった状況での遊撃を頼んだのである。
本人も闘えるとあって快く返事頂いた。
「意外と使えそうなのがあるわね」
美樹香たんの言う通り、放出系魔道具は軒並み魔物避けとして効果はあるようだ。
とはいえ、効果のほどはまちまちだから最優良候補以外は予備で単独行動した時用に皆に持たせるくらいだろう。
僕は魔避けとしてそれなりの効果を見せてる蛍光塗料ライトニクス・シンデレラを自分で被る。
これは美樹香たんが使ってる奴だ。ジャンケンで負けた彼女が渋々使ったのだが、一番効果的なうえに一番安価で手に入ったのでいくつかセット購入したものだ。
うん、まぁ、周囲を暗くすると黄緑色に輝くのが何とも言えないけど、そのせいか魔物達も光と認識するようで僕や美樹香たんから遠ざかる。
明るい場所なら普通に無色透明だから水ひっかぶったような状態だけどね。
さすがに女の子一人蛍光させるのはかわいそうだから、うん、自分の道具が使えなくて魔物が寄って来たからという緊急回避的な意味もあるけどね。
「おい、リーダー、俺にもそれ寄越せッ!」
「え? でもこれは……」
「さっさとしろォッ!!」
一人魔物に追われる矢田が叫ぶ。仕方ないので彼に放り投げてやると、そのまま頭に直撃。
容器が割れてずぶ濡れになった。
「ナイスっ」
え。それでいいんだ!?
後悔してもしらないからな。僕のせいじゃないぞ。自分で掛けろって言ったからね。
「灼上さん、これ、結構いいですよ!」
月締君が持ってるのは松明タイプの光魔法が棒に灯る魔道具だ。
彼自身には襲ってくるみたいだけど、松明を敬遠するためか攻撃には繋がらない。
ちょっと後ろからの攻撃が怪しいが、十分実用価値はありそうだ。
「ふーむ。ポーションタイプは持続時間があまりなさそうだね。というか、今効いてるのかどうかの実感がわかない」
小玉君が使ったのはフラッシュポーション。体に光属性を付与する魔道具だ。
残念なのは一回きりの飲みほしタイプで見た目の変化もないので持続時間が分かりづらいことだろう。魔物の群れの中心で効果切れになったら確実に詰む。
「あー、これは失敗だ。腕の近くまで寄ってきちゃうし」
檸檬たんの魔道具は光り輝く指抜きグローブ。
凄く眩しい指抜きグローブなんだけど、どうやらその周辺だけしか魔物の忌避効果は無いらしい。
「これは、前だけ、ですね」
ピピロさんが持ってるのは光の盾。
前に向かってビッカァ。何万ルクスだって叫びたくなる光が放出される盾である。
小楯って言えばいいのかな? 腕に装着するタイプである。
前面の敵は避けて行くけどその一定範囲以外は普通に近づいてくるようだ。
「でもこの光の熱量はかなりお勧めですね」
常用の盾としては優秀な部類らしい。
防具屋じゃなく魔道具屋で手に入るのが何とも言えないが、彼女にとっては掘り出し物だったようだ。
「んー、これは効果があるのか分からんな?」
ノヴァが使っているのは地面に突き刺すことで周辺数平方メートルだけ防御する結界を作りだす魔道具である。当然ながらその外側は普通に魔物が闊歩する。
その上地面に突き刺した杖は一定時間で効力を失い、それ以降はもう効力を発揮しない使い捨て魔道具である。
効果時間は大体1時間である。
それ以降は矢田同様、結界外で待ってた魔物達に殺到されて危うく死にかけていた。
すぐに救出されたけど、この結界魔道具は外れと思って良さそうだった。