二百十八・その道具がどこにあるのかを、彼らは知らなかった
SIDE:灼上信夫
「うーん、ないなぁ」
翌日、僕は美樹香たんとゴールドたんを侍らせて道具屋に来ていた。
いや、侍らせるというのは語弊があるよね?
だって僕がどうこうじゃなく二人が面白がってやってくるんだからこれは侍るとは違うと思うんだ。
とはいえ周囲から見ればおデブが美少女二人を侍らせてるようにしか見えないわけで、うん、殺意の視線が僕に向かって来るんだよ、っと。
誰かタスケテ。
「光属性の強い道具……ねぇ」
「ん。松明?」
さすがにそれで寄ってこなかったらびっくりだよ。
道具屋にはなさそうだなぁ。
皆で手分けしてソレっぽい道具を探してるんだけど、どうにもはずれっぽい。
「光属性の道具? ならウチじゃなくて魔道具屋だろ?」
店の人に聞いてみたところ、そういう属性付き道具は魔道具屋の専売特許なんだとか。
この町には一つだけ魔道具屋があるらしいのでとりあえずそこに向かうことにした。
で、いろんなところに散って探っても、目的が一つなら、殆ど同じような情報が集まる訳で……
「あん? なんだよリーダー、お前らもここか?」
尾道さん、リックマンさん、矢田の三名は確か冒険者ギルド方面から調べるって言ってた。
「あれー、なんで皆ここにいんの?」
小玉氏と檸檬たん、シルバーたんの三人は出店などのフリーマーケット周辺を探ってくれていたはずだ。
「のっぴょーう」
ノヴァ、カリオン、くまっぴょろんは外でドロップアイテム手に入れるとか言ってたはずだけど、なんでこいつらも来てるんだろう?
「むぅ、うぬらか」
最後にやってきたユーデリアさんと月締くん、酒場周辺を探っていた彼らもここの情報を手に入れたらしい。
結局全員が魔道具屋へと集ってしまったようだ。
「ここに光属性の道具があるってことか」
「私達はフィールドで出会った冒険者に聞いて来た」
「フリーマーケットは商品が安定しないから今回は良いの無かったんだ」
それぞれ別々の人物からここならあるんじゃないか? と言われてやって来たらしい。
つまり、ここになければ温泉街では光属性のナニカはまず手に入らないと言うことである。
「たのもーっ」
ユーデリアさんが先陣切って魔道具屋へと殴り込む。
ドアがバターンッと盛大に音を立てて開かれる。
カウンターでうつらうつらしていたおっちゃんが音にびっくりして椅子から転がり落ちていた。
「な、ななな、なんだ? 盗賊か!?」
「店主よ、我々は光属性の魔道具を探している。何かないか!」
「は? はぁ、光属性の魔道具ですか? 用途はなんですかな?」
「うむ、用途は……」
おい、お馬鹿バグ人間、なんでアンタが代表して聞いてんの!?
理由を聞いた店主は少し困ったように腕を組んで考え込む。
「光属性が継続して、か。あー、これはどうだ?」
「ランタンか」
「ウィル・オ・ウィスプからドロップする冥府のランタンだ。冥府の暗闇すら照らす光り属性のランタンなんだが……」
「とりあえず、一つ貰えますか? まずは使ってみて考えます。あと他にもいくつかあればそちらも試してみたいんだけど」
「おお、太っ腹だね君、その体型は伊達じゃないか」
やめて、容姿の事は言わないでっ。
店主のおっちゃんは快活に笑いながら店の奥に引っ込んで行く。
どうやら探してくれるようだ。
おっちゃんが戻ってくるまで暇を持て余した面々が店内に散って魔道具を見始める。
ここの店はカウンター奥から商品を持ってくるタイプで、店内に置かれているのは魔力を帯びないレプリカだけのようだ。
一応説明もネームプレートに書かれているので用途も分かるし店主のお勧めについては別プレートで凄い熱意ある説明がされてる。
なんか、ついつい買ってしまいたくなるなぁ。
でもチームを預かる身としては無駄遣いする訳には……
「ほいよ、光属性ならこんなところか」
「一つ一つ説明お願いできますか?」
「ああ、構わんよ。簡易と丁寧、どちらがお望みだい?」
「……簡易で」
丁寧な説明は聞いたが最後、今日中に終わらない気がした。
「んじゃ、この短剣から」
それからしばし、持って来て貰った光属性魔道具を説明された。
全部終わるのに三時間。正直丁寧な説明じゃない筈なのに滅茶苦茶丁寧に説明されました。
「おっさん、このグラブくれ」
「あの、私はこれを……」
「マジックスパイス。欲しい、欲し過ぎる。な、なぁ灼上さん、これ、買っていいっすか!?」
皆、見回ってる間に欲しい商品が出来てしまったようだ。
この日の魔道具屋の売り上げはいつもよりかなり儲かったらしい。
うん、まぁ、なんだ。僕が節制しても皆が散財したらどうしようもないよね?




