二百十七・その居なくなってたチームの動向を、彼らは知らない
SIDE:灼上信夫
グーレイさん達は居なくなっていた。
どうやら行動開始したらしい。
何処に向かったかは多分ギルドに行けば分かるんだろう。
さすがに今日すぐに行く気にはなれないので、とりあえず皆集めてこれからどれくらいのペース配分で探索するかを議論することにした。というか議論することになった。
この辺りは僕が提案するのではなく美樹香たんの提案である。
と言っても皆に提案するのは僕の役目になってるんだけどね。
はぁ、なんで僕がリーダーなんかやる羽目になってるんだろう?
クソニートですよ? 人前で話するなんて苦行以外の何者でもないんだぞ?
無限魔界潜ってレベル9999くらいまでレベリングするくらいヒキコさんしてるタイプだぞ?
「えー、では、第一回灼上チームのこれからどうしよう会議をはじめます」
「なんだそりゃ?」
「せめてもうちょっと会議としての体裁を整えられないのかい?」
「じゃあリックマンさんが決めてください」
「それは遠慮する」
ですよねー。だったら不満言うなっ。僕だっていろいろ考えたけどもうやけくそになって付けた名前だからね、会議名なんて正式な場面じゃないんだから適当でいいのさ。
「正直、初日なのに想定以上の魔物の群れに辟易してます。皆さん今回の討伐速度について意見をお願いします。んじゃそっちから時計回りで」
「え、まず私? んー、まぁ妥当だったんじゃないかしら? 疲れはしたけど被害はほぼなかったし」
「僕も妥当だと思います、毎日この位の戦闘なら被害は無いんじゃないですか?」
「うーむ、そうは言うがピピロ殿、この面子で闘うとして今回はむしろ軽い方ではなかったか? 一部面子は完全に遊んでいたし」
「のっぴょろん」
「くまっぴょろん」
モザイク人は黙っててくれ。言葉が全く理解できないから。
「私はそこまで苦には思いませんでしたが、その、あまり無理はしない方がいいかと思います」
尾道さんは貫破と臭激だけで倒しちゃったもんなぁ、内心ではもっと強い魔物と闘っても問題無いとか思ってそう。
「ふん、ぬるいな。もう少し歯ごたえのある魔物はいないのか?」
「いや、ユーデリアあの襲撃滅茶苦茶大変だったからね!?」
「チッ、俺は今のぐらいで丁度良いと思うぞ。殴れば殺せるし」
「そうだなぁ、食材については多少無理しても取るべきだろうけど、他はいいかな?」
「好き嫌いはダメだよ陸斗」
檸檬たん、そういう問題じゃない。
「私はー、ちょっと危険かなって思うかな。ユーデリアさんたちは問題無いけど、月締君や朝臣さんたちはあの辺りが限界値、アレ以上の敵が来るとミスがでて誰かが死んでもおかしくないと思うわ」
「ん。矢田危ない」
「俺かよ!? リックマンのおっさんじゃねーのか?」
「リックマンさんは逃げ時見てるから」
シルバーたんの言葉は一理ある。
リックマンさんは勝てない、あるいはこれ以上無理と思ったら明らかに退がってるからなぁ。
フォローをユーデリアさん達に任せてるのは男としてどうなのか?
逆に矢田はとにかく自分から前に前に突出して敵を倒そうとしてくる。
どう見ても自分の実力より上だろって思えるヤツ相手でも闘おうとするから他のメンバーがフォローに向かって事無きを得ている感じだ。
なんとなくだけど実力的に劣り出している事に気付いて内心焦ってる感じがする。
斬星君が、ちらつくんだよなぁ。
ちょっと、なんとかしたほうがいいかもしれない。
でも、不良だしなぁ、突出するなとかさすがに言い辛いし、どうしよう?
「探索範囲的なのはどうかな? 今のペース位で問題はなさそう?」
「いや、さすがに殆ど探索してねーだろ」
「まぁ、それは同意よね。でも魔物の襲撃多いから」
「そこが問題だよな。でもさすがに部隊分けて探索って訳いも行かないし」
「中継地点があればいいんだけど……まぁしばらくは拠点周辺で地図を埋めて行こうかと思ってるんだ。さすがに未知の場所をずんずん進むのは危険極まりないし。死人が出たらそれこそ台無しだ」
「まぁ、リーダーがそう決めてるんなら私から異論は無いわ」
「ああ、皆の事しっかり考えてくれてるみたいだしな。今までよか納得できる」
うぅ、皆からの信頼が恐い。
重圧ですよ、おデブなオイラが痩せちゃいそうです。
胃が痛くなってる気がするんだよなぁ。これ、ストレスかなぁ?
「あの、一つ気付いた事があるんですが」
「尾道さん? なんでしょう?」
「Gババァさんみたいな光属性の武器か何か持って行きませんか? 確か魔物が襲ってこなくなるんでしょう?」
ああ、言われてみれば。強い光属性は敬遠されて近寄って来なかったっけ。
「ちょっと道具屋やギルドで探してみましょうか」
Gババァさん連れてこれれば一番いいんだけど、既にグーレイさん達行動開始してるからなぁ、今はどこにいることやら。