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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
最終話 その彼の名を誰も知らない
1662/1818

二百十三・その滅びるはずの魔王のバグを、僕らは知りたくなかった

「馬鹿な、回復が追い付かな……がぁぁ!?」


「良いぞ斬星ーっ」


「いや、僕何もしてませんからっ!?」


 ガーランドさんもうヤケクソだね。

 リエラの功績はどうあっても斬星君の功績になるようだ。

 スキルになかったけど、自動回復みたいな能力あったんだ?

 いや、あったけど他の能力に変わったのかな?


 必死に僕等から逃げようとする魔王だったけど、既に大勢が決しているので、逃げるに逃げれない状況のようだ。

 メンバ―全員の攻撃が効くようになったから波状攻撃受けてスタンしまくり行動順序次々に最下位へと転落して行く、みたいな、永遠自分のターンが来ないターン制バトルをやらされてるようなもんだろう。可哀想に。

 でも遠慮なくやっちゃうぜ。皆頑張れー。


「はは、さっきまでのなんだったんだって話だぜ」


「防壁さえなければなんということはないのにゃーっ」


 ガーランドさんとニャークリアさんの連撃で足の腱を失う魔王。

 倒れ込む彼に切り込むジャスティンとラウールさん。

 悲鳴を上げたところにエストネアさんの魔法が襲いかかり、倒れきるより速くメロンさんの魔法がさらに激突。


 倒れきった魔王の頭にくねくねちゃんのかかと落とし、なんか今まで攻撃通らなかった恨みが籠ったような一撃だった。

 そんな頭を引っ張り上げたのはGババァ、この時を待っていたとばかりに乙女の顔で唇をタコにする。


「あ、ああ、く、来るな、来るなぁ――――っ!!」


 ああ、もう、逃げ切ることなど不可能だ。ババァからは逃げられないんだよ。

 哀しいかな、彼の初めてのお相手は、おばあさまになっちまったようだ。ナムー。

 事後、気力を使い果たし意識を失った魔王を、アーデが木の枝でつっつく。

 やめたげて、その魔王の正気度はもうゼロよ。


「はぁ、はぁ……気絶した……?」


「やったか?」


「止めてくださいジャスティンさん、それ復活フラグですからっ」


「え? 嘘だろ!?」


「異世界だと死亡フラグって言うらしいよジャスティン君」


 思わずフラグを踏み抜いたジャスティンに叫んだのは斬星君。ソレをグーレイさんが補足した途端だった。

 魔王の身体が光り輝き始める。

 倒した、という感じじゃない。

 なんか、ヤバいぞ! ホントにフラグ踏み抜いたんじゃ!? 


『だ、大丈夫です、最悪私が倒しますからっ』


 リエラが言うけど、それじゃずっとリエラにおんぶに抱っこ状態じゃん。

 さすがに皆にも成長して貰わないとだよリエラ。


「く、そ、何があった? あのババァ、うぐっ、頭が……」


 Gババァにされたことを思い出しそうになって思わず記憶に鍵がかかってしまったようだ。

 頭が割れそうなほどに痛いようで、頭を抱えだす。

 にしても、随分縮んだなぁ。というか、可愛くなった……?


 その魔王の姿は光が収まると同時に僕等に露わになった。

 弾けるような白珠の肌。たゆみ緩まるルーズソックス。足に履いてるのはどっかの学校の上履きかな?

 爪は付け爪マニキュア付きで、髪の一部は付け髪でメッシュになっている。

 煌めく金色のロングヘア。勝気な瞳にぷっくらとした唇。

 着崩したブレザーのような服は身の丈に合わずに手の平辺りまで裾に隠れている。

 そう、ガチムチ系魔王は何のスキルがバグったせいか、金髪青眼の10代後半といった容姿の女学生っぽい服装になってしまっていた。


 ギャル系ファッションだし、無駄に可愛らしくなってるが、これ、魔王だよね?

 なんでデコスマホ持ってんの? それ、どうやってデコレーションしたの?

 というか日本人じゃないよね? それどんなバグ?


「くぅ、今の記憶は……ん? なんだこの手? ん? んんっ!?」


 さっさっと顔や体を触って自身の姿を認識する魔王。

 徐々に顔を青くしていく。


「お、おい、貴様等、わ、我はどうなっている? なんか胸が重いのだが、股がすーすーするのだがっ!」


「えーっと、可愛らしいギャル系女の子、になってます?」


「は? あ、なんで? なんでだ――――っ!!?」


 魔王さんの慟哭が轟いた。

 いやー、姿形が一気に変わっちゃったなぁ。

 グーレイさん、これってどんなバグ?


「私に聞かれても困るよ? 君がやらかしたんだろ?」


 失敬な、TSバグなんて僕がやる訳ないでしょ、というかバグは何が起こるかわからないんだから不可抗力ってもんですよ!

 で、どうするグーレイさん、なんかもう闘う云々の状況じゃなさそうだけど?


「おっ」


「な、なんだ小娘。我をあざ笑いに来たか……? ん? なんだそれは?」


 御近付きの黄金桃? ちょ、アーデさんソレどっから持って来たの!?


「く、くれる、のか?」


「おーっ」


「我に、仲間に成れと、いうのか? だが……」


「お」


 あ、ちょっとアーデ、僕のポシェットから何取り出して……いやーっ!? なんでソレだしちゃうの!?


「う、うむ? こ、これを着ろというのか?」


 それ、温泉地で見付けた服屋にあった厨二系ゴシックロリータ黒の眼帯付きバージョンじゃんか! なんでそれを選んじゃったのぉ!?


『バ・グ……さぁん?』


 ひぃっ!? ち、違う、違うんですリエラしゃん、僕はただ、アカネさんとか喜ぶかなぁって思っただけでして、決して他意は、他意はないんですぅ――――っ!!

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