二百八・その魔王復活教団支部の場所を、僕らは知らなかった
「ここかい?」
できるだけ急いでとんぼ返り、僕らが裏世界より帰還したブラックマーク王国のさらに南に、その国はあった。
フラクサラージュ王国。王都に辿りついた僕らは、とりあえず冒険者ギルドにやってきた。
まず何をするにしてもこの町について調べないと、あと魔王復活教団の場所を見付けないとね。
だいぶ有名みたいだからそこいらで話を聞くだけで場所は分かるでしょ。
んで、聞いて来た結果、どうやらこの冒険者ギルドの向いにある建物がソレらしい。
うぇ? あの民家にしか見えない場所が支部なの?
冒険者ギルドから出た僕らは呆然とその民家を見上げる。
そこまで大きくない平屋一軒家といったところ。
確かに、よくよく見れば何人もの人が入って行く姿が見受けられる。
決してただの民家じゃない。十数人が出入りする場所はさすがにただの民家だとは言えない、言えないよね?
『バグ君、昔の日本は十人兄弟とかざらだったらしいよ?』
で、でも、目の前の家は不自然だよね!?
『まぁ、確かにね。で、どうする?』
『とりあえず、私とバグさんで敵情視察しましょう』
と、言う訳でリエラと二人で潜入することになった。
人が出入りするタイミングで割り込ませてもらい、室内へ。
「聞いたか、ようやくこの地の封印を解けるらしいぞ」
「さすがは幹部の方々だよな。古い強固な封印を解けるんだからさ」
おっと、今すれ違ったローブの人二人が重要なこと告げてったぞ。
どうやらもうすぐ解ける封印が近くにあるらしい。
『なんでこの教団は国に受け入れられてるのでしょう?』
国がグルなんじゃないの?
と言ってみたものの、なんかホントにそんな気がするなぁ。
『バグさん、あれ、上司さんですよね、この場合どう呼べば?』
司祭さんとかでいいんでない?
魔王復活教団司祭はローブを広げて手を大きく広げ、目の前に居並ぶ信者たちを狂った瞳で見つめていた。
「我らが悲願の日は近い。この地に眠りし太古の魔王ギオルデガギガス様は明日、ついに現世へと復活召される! 全員明日に備えよ。かの地にして集合し、我らが魔王陛下を共に祝おうではないか!!」
うわーお、明日だってリエラ!
『付いて行って目的地を調べた方がいいですね』
そうなるかなぁ。
とりあえず、一旦グーレイさん達に、あれ? 幹部連中がどっか行くみたいだ。
『明日までは何もしないでしょうし、折角ですから付いて行きましょうか』
なんかやっばい状況見ることになりそう。
駄女神さーん。グーレイさんに連絡よろー。
よし、行こうかリエラ。
二人で司祭たちが向う場所へと後をつけていく。
施設を出て、馬車に乗る。
とりあえず御者台の空いた場所にっと。
「ふふ、しかし、信者どもは気付いてますかな?」
「ふっ奴らこそが生贄になるなど夢にも思うまいよ」
うっわ、あくどい!?
『これは、ほぼ確実に現場に向かいますね』
つまり、付いて行けば自動で敵の目的地が確認できるわけだ。
にしても馬車ってホントに体に悪いなぁ。がたがたしてるし、振動で全身強制的に揺らされるし。
なんというか、乗り過ぎると寿命が縮むような気すらして来る。
全身揺れるし、内臓とか知らないうちにダメージ溜まってそうだもんよ。
『これ、街の外にでちゃいますね』
おそらく少し離れた場所に封印の場所があるんだよ。そこに……あれかな?
ローブ姿の男達が数十人たむろしてる場所が町の近くに存在していた。
そして、その中央にあるのは……フェアリーサークル!?
馬車が止まったのを確認し、僕らはフェアリーサークルの元へ向う。
大層な護衛で守ってるけど、僕らには全く気づかず素通りである。
フェアリーサークルを通り、裏世界へ。
銀色をぶちまけた空と白く彩られた荒地。その一角に、彼らは居た。
魔王復活教団、封印を解くと言ってたけど、その封印は裏世界にあったようだ。
というか、僕ら以外で裏世界にいる人間初めて見たんじゃないだろうか?
「どうだ?」
おっと僕らの後ろから遅れてやってきた司祭たちがここに来ちゃってるよ。
つまりこいつ等裏世界のことも普通に知っててしかもこっちに封印されてる魔王を復活させようとしてるってことか!?
「あとは生贄待ちでございます。この封印は1000体の人間を生贄に捧げることで解かれるようす。既に街の浮浪者を糧に900まで捧げております。あとは100名」
「明日、信者を贄とし復活させる。ふふようやくここまで来たのだ。国に取り入り信者を集め、少しずつ、少しずつ侵略し、ついに明日、魔王陛下が御帰還遊ばされる。魔王ギオルデガギガス様がついに現世によみがえるのだッ!!」
「おお、ついに、で、その、お姿はどのような……?」
「知らん」
知らんのかいっ!?