二百五・そのまるきり変化がわからないことを、僕以外知らない
リックマンさんが走り寄るけど、それより速くカバーで回り込んだピピロさんが魔物を反射で撃破する。
ホント、盾持たせたら最強になっちゃったよねピピロさん。
安全は確保出来たことだし、せっかくだから 確認してみるか。
「リックマンさん!?」
「あ、いや、その魔物に襲われてるのが見えて、な。大丈夫かい」
「はぁ、大丈夫というか……どうみてもさっきの見てましたよね?」
「おっさんだけじゃ無くもう一人も見てるがな」
うつ伏せで寝ていた矢田がようやく起き上がる。
草が付いた服を叩きながら、尾道さんを見る。
彼もついつい飛び出したはいいけど、ちょっと遠過ぎたようで中途半端な位置で棒立ちになっており、矢田の視線を受けて変なポーズをしていた。
なにそのシェーみたいな、あ、コレ最近は伝わらないんだっけ? 僕の時代でもぎりぎり知ってるくらいだったもんなぁ、昭和のアニメ。
名前:リックマン=アックスフォード
称号:斧の英雄
レベル:42
スキル:
偽証陸軍:陸軍知識を覚えているような気がする。
詐欺師Lv8:口での丸め込みが得意になる。
斧技Lv23:斧に関する技術。
攻撃力増加:斧を装備している時、攻撃力が通常の1.2倍になる。
重量制限解除:斧装備に関する重量制限が解除、どれ程重くともそれが斧ならば持ち運べる。
アイテムポックス:入手したアイテムを補完することができる。ポ人用。上限1000個
異世界言語理解:世界を越えて言語が統一され、りかいできるようになる。
斧成長率10倍:斧熟練度の成長率が10倍。
アックススラッシュ:斧装備時、斧を使った切り裂きを行う。
斧の英雄Lv17:斧装備時全能力UP、斧装備時動作短縮、斧技習得率増加
アイテムポックス内部:
歴戦の斧、家族写真、元陸軍徽章、バグ(増殖中)
あんまりバグってない? アイテムボックスがポックスになってるくらい……って、中身ぃ!?
なんだよ増殖中っ!? まだ症状出てない潜伏期間!?
バグって風邪だっけ!? 感染すんの!?
「かー、なんだよ今の!?」
「あ、その、盾で受けた攻撃を反射するスキルです」
「わぁってんだよンなことぁ!」
「ったく、焦ったじゃないか矢田。ピピロさんの盾、棺型のだったらお前間違いなく消し飛んでたぞ!」
「恐ぇこと言うんじゃねーよ!? ……え? マジか?」
「え? はい、多分棺の盾ならそれくらい出来そうです」
「嘘だろ……」
これでピピロさんと尾道さんという矢田が早々に切った存在がざまぁ出来たってことになるのかな?
でも、矢田の奴いろいろとやらかしてるからちょっとこの位じゃ味方だと素直に納得できないんだよなぁ。
「しかし、矢田、誰かれ構わず闘いで解決しようとするのは感心せんぞ?」
「うっせぇ。とりあえず相手の実力見るのに一番分かりやすいだろぉが」
「ピピロさん、大丈夫ですか?」
「はい、御蔭さまで。尾道さんは心配してくださったんですか?」
「ええまぁ、はい。前回のようになってはマズいかも、とつい、後を付けてしまい申し訳ございません」
「いえいえ、僕を心配してくださったんだから問題無いですよ。ありがとうございます」
矢田とリックマンのやりとりと比べると、凄く相手を尊重し心配する二人のやりとりはなんか神聖的な物がある。
「ったく、テメェらほんと信用ね……おい、リックマン?」
「う、むぅ?」
ぎゃー!? なんか顔色が土気色になっとるぅ!?
こ、これってやっぱりバグのせい!?
発動し始めたの!? なんか変わっちゃうの!?
ちょ、ちょっと、恐いんだけど!?
も、もう一度確認するべきか!? でも、何がバグってるか不安過ぎる。
「だ、大丈夫、か?」
「わ、わからん、きゅ、急に寒気が、全身から熱が消えたような……」
大の男が全身を震わせがちがちと歯を鳴らしだす。
こ、これはさすがに何があったか見るしか……チラッ。
う、うわー、これは……
「ほ、ホントに大丈夫ですか?」
「わ、わからん、未知の病気か何かだろうか? ちょ、ちょっと戻って横になるよ」
「用事も済んだし護衛してやんよ。さすがに見捨てるのも忍びねぇし」
矢田にまで心配されて気を使われるリックマン。
結局皆揃って旧魔王邸に御帰宅である。
その日から、リックマンさんは二日ほど寝込んだ。
二日休むと普通に元気になったので冒険には参戦するらしい。
グーレイさんにいろいろ問い詰められたけど、仕方なかったんだ。
こればっかりは僕も予想外だったんだって。
ほんと、まさかステータス全てが読めなくなるとか想定外だったよ。
風邪の症状みたいに収まったからよかったけど、まだ潜伏中なんだよなぁ、バグ。
滅茶苦茶不安しかないよ。




