二百四・その暇潰しでやらかしたことを、神は知らない
グーレイさんがガーランドさん達とダンジョンに向かってしまった。
既にリエラがしっかり潰してきた特異点を見て回るだけの仕事らしい。
なので今日は他のメンバーは暇なんだって。
もしもの時用にとリエラも一緒して、ダンジョンに向かうのは、リエラ、グーレイさん、ガーランドさん、ジャスティンさん、ニャークリアさん、斬星君、それと、今回エストネアさんがダウン中だったので魔法使い枠でメロンさんが付いて行くことになった。
んで、僕は暇だからアーデと遊ぼうか、と思ったんだけど、僕が起きた時にはアーデ、普通にGババァたちと近くの川に遊びに行ったらしい。最近三バカトリオと呼ばれるようになったノヴァたちモザイク棒人間共が釣りにハマってるので、それに付いて行くのが日課になってるらしいのだ。
僕としても後を付いて行きたかったんだけど、ちょっと目を離せない存在を見付けてしまったので今回は別行動だ。
なんであの二人が一緒なんだろう?
いや、僕と同じで心配そうに見守ってるのも居るけど、矢田とピピロさんが二人きりとか怪し過ぎるでしょ。
そりゃ尾道さんやリックマンさんが影から見守ってるってもんよ、僕も何かやらかすようならバグ弾放つ所存です!
「おい、言われたから付いてきたが、何処まで行く気だ?」
「それはその……」
「アァ? あいつ等撒くつもりか? 無理だろ、諦めろ」
「わ、わかりました。では、あそこの丘でお願いします」
「チッ、何がしたいかよぉくわかったぜ……」
僕も分かっちゃった。
ピピロさん、矢田相手に実力で勝つ気だ。
「すいません、でも、貴方に認められてようやく一歩踏み出せる気がするんです」
「ハッ、そりゃすげぇ、俺はテメェの師匠かなんかかよ? オラ、着いたぞ、どーすんだ?」
「見ててください」
「あ?」
あれ? 対戦するんじゃないの?
ピピロさんは盾をアイテムボックスから取り出すと矢田、ではなく彼に背を向けて全身盾を構える。
唖然とする矢田の目の前で、近づいてきた魔物の攻撃を受け止めるピピロさん。
自動反撃は反応して魔物は一瞬で消し飛ぶ。
「どうですか!」
「いや、どうって……」
「僕は役立たずじゃない。こうして味方を守れます。敵を倒せます! 貴方が告げた役立たずなんかじゃないっ!」
「あー……」
何を目的としていたのかようやく理解がいったようで、矢田は頭を乱暴に掻いて虚空を見上げる。
「まぁ、役にたててんじゃねーの」
凄く面倒臭そうに告げた。
いや、気持は分かる。気持は分かるけどもうちょっと言いようがあるでしょうよ!?
ピピロさんがご主人様に褒められたい子犬みたいな期待の目で見てるんだよ!?
「そ、それだけ……?」
「他に何があんだっつーの」
しばし、二人の間に何とも言えない空気が流れる。
うーん、この二人は……
「つかよ、お前さんも実力を見せつけてぇんだろ? 尾道のおっさんみたいによ?」
「そ、それは……」
「来いよ? 俺を倒せるならテメェが役立たずじゃねぇって認めてやる」
「だ、駄目ですよ、僕の反射防御、下手したら死にますよ!?」
「はっ、信じられっかそんなもん」
いや、本気で死ぬよ? ピピロさんのレベルヤバい事なってるから。
あ、待てよ、こいつならなんとか闘いになるのでは?
ピピロさん、新しい盾よー。
ポシェットに入ってたモノを取り出し投げる。
これは確か小玉君が食事作ってた時に置き場に困ってたからポシェットに仕舞ってあげた奴だ。
そのまま借りパクしてたけど、まぁ、問題無いよね?
「わわ、何コレ……え? 何コレ?」
「おい、なんだそりゃ? まさか、それ装備して闘うとか、いわねぇよな?」
「い、いえ、でも、これくらいじゃないとホントに怪我じゃすまないですから」
「はぁ!? いくらなんでもナメ過ぎじゃねぇか!? それ【なべのふた】だぞ!?」
「だ、大丈夫です」
「大丈夫な訳、あるかぁ!」
あ、殴りかかった。
なべのふた防御。
自動反射発動。
「ぐ、がぁぁ!?」
そして矢田が吹っ飛んだ。
ごろごろっと回転しながら地面を移動し、うつ伏せで倒れる。
そこへ、タイミング良く通りかかる魔物君一号。
あ、ヤバい、矢田がこのままだと踏み潰されそう。
これはもうバグ弾の出番かな?
そーれバグっちゃえー!
「矢田ぁ!」
「危ないですよー」
って、ああ!? ちょ、射線ふさいじゃ駄目だよリックマンさ……
あー、あーあ。
やっちまったなぁ。
もう、どうしてこうバグ弾放つと目標と別の人が受けちゃうんだろう?
今のところリックマンさんに変化はないけど、これはちょっとやらかした感じがしちゃうなぁ。
ってか出てくるタイミング悪過ぎでしょうよ!?




