二百三・その問題が解決したことを、町民は知らない
「そんじゃ、話を聞こうか」
半日後、リエラはちゃんと帰って来てくれた。
無傷で帰って来たから問題無かったようだけど、僕は心配だなぁ。
『霧の中にフェアリーサークルは10個。とりあえず形作られてたサークルは全て破壊しておきました。再び形成されない限りは向こうから何か出てくる可能性はなさそうです。あと、向こうの方に入ってみましたけど、一つ一つ出現場所が違いましたね。でもスケルトン系の魔物が闊歩していたのは同じでした』
ふーん。つまり裏世界はフェアリーサークル周辺の魔物に似た魔物がいる場所にゲートが繋がる感じなのかな?
いや、でも普通に街中にフェアリーサークルあったりしたからなぁ。
危ないからそういうの見掛けたら塞いどこう。
それにしても、そんなにあったんだあのフィールドの中に。
そりゃ変なスケルトンも出てくるわ。
今までよく見付からなかったよね。
「なぁグーレイ、さっきから独り言多いが何かあったか?」
「ああ、うん、ガーランドさん、どうもあのダンジョン内にフェアリーサークルがあったみたいでね、とりあえずもう出てこないよう破壊はしたけど、10個程あったんだ」
「嘘だろ!?」
「もしかしたら各地で起こるスタンピードは向こうの世界の魔物が理由かもしれない」
「ってことは冒険者ギルドに各ダンジョンを見回って貰うよう伝えた方がいいか?」
「そうだね。その方がいいかもしれない」
「フェアリーサークルか、ホントなんで裏世界なんつーもんに繋がってんだろぉな?」
全くの謎ですね。
ホント裏世界って何なんだろ?
神様も知らない世界か……
「あ、グーレイさんここにいたんですか」
「ピピロさん? 何かあったかい?」
「それが、私達の代表者に来てほしいと冒険者ギルドのギルド長さんが」
おっと、噂をすれば影だ。
向こうから来てくれるとは。
丁度良いのでガーランドさんも一緒に行くようだ。
リエラ、せっかくだし僕らも行く?
『そうですね、行きましょうか』
と、いう訳で、アーデの面倒をGババァ達にお任せした僕らはグーレイさんと共にギルド長室へと向かうのだった。
「ああ、来てくれたか。わざわざご足労していただきありがとう、英雄グーレイ」
「世辞は結構。用件を聞こう」
「実は今回あったモンスタースタンピードに付いて、ダンジョン内の捜索をして貰いたい。必要資材の費用はこちらで持つ。是非モンスタースタンピードの原因を調べてほしい」
「ああ、それでふが」
僕は思わずグーレイさんの口を塞いだ。
『バグ君?』
いや、折角費用負担してくれるんだし、ガーランドさん達の道具補充してから報告でいいんじゃない?
『あ、それもそうですね。回復薬関連はかなり消費してましたし』
『なるほど、確かにその通りだ』
「前回の戦闘で消費した道具を補充するつもりだけど、それもいいのかい?」
「ええ。正直貴方達の素材を見て肝が冷えました。スケルトン・デミゴーデス。そんな魔物がもしも外に出て来ていたらを思うと……この町は滅びていたやも知れない。未然に防げたのは貴方達の御蔭です。その後押しができるというならば、しっかりとやらせていただきたい」
「わかりました。ではガーランドさん、補充する予定だった薬品の名前と個数を提出しておきましょうか」
「いいのか? 結構な数だぞ?」
「え、そんなに……?」
快く頷こうとしたギルド長は、ガーランドの困惑した様子に何かを察したようだ。
少し後悔したような顔でガーランドが書き始めた書類を覗き込む。
「ま、マナポーションの最上級がさ、三十!?」
「ウチの魔法使いが全力出しちまったからな。吐きながら飲み続けるとか無茶やらかしたんだ。この位の本数が減っちまってたぜ」
確かに嘘は言ってないかな。
「確か、正確には36瓶の空瓶があったんだっけ?」
「おう、あと俺らが使った回復薬の最上位な。こっちも十本づつ位空けたから……」
「い、言ったことは確かですから、こちらで無償提供させていただきます」
かなり引くついてるけど、素材売れば十分元取れるよね?
いやぁ、あのエストネアさんの雄姿見せてあげたいよ。
今はポーション中毒なのか魔法使い過ぎで無茶したのか、意識失ってグースカ寝てるけどね。
疲労困憊で食事する時に起きて来る位でここしばらくずっと寝続けてる。
余程無茶したんだろうね。
「しかし、モンスターパレードを鎮めたとなれば、Aランクパーティーはさすがに失礼か。昇格手続きをしておくよ」
「おいおい、俺らがS級になんのか? 大丈夫かよ?」
「むしろS級でも手ぬるいくらいの功績ですよ!?」
S級跳びこしてSS級か。リエラが大物の殆どを撃破したけど、彼らはそんなこと知らないからなぁ、身の丈にあった昇格であることを願うよ。