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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
最終話 その彼の名を誰も知らない
1642/1818

百九十三・その男の過去を、彼ら以外は知らない

SIDE:灼上信夫


「……んがっ」


 あ、起きた。

 僕とグーレイさんが話してる所にGババァさんという婆さんが矢田を御姫様抱っこして持って来た。

 なんか凄く不満そうだったけど、虚空に向かってここでいいかい、ったく、なんで個室じゃだめなんだい。ちょっと粗相するだけじゃないか。とか背筋が寒くなりそうな事を言いながら矢田を置いて出て行ってしまった。

 床に寝かされた矢田をしばしグーレイさんと見続けてから一時間程経っただろうか?


 矢田は全身が火傷したみたいに酷い状態だったので回復薬飲ませて体調戻しておいたんだけど、一体何があったんだこの短時間に。

 一時間経っても意識戻らないし、と思ってたところで、鼻を鳴らして矢田が目を開けた。


「やぁ矢田君。おはよう」


「アァ? グーレイ? なんで……オイ、どうなった!? 俺は確かクソジジイと対戦することになったはず……」


「Gババァってのがここに連れて来たよ。酷い火傷だったけど何かあったの?」


「ア? ああ、リーダーじゃねーか。なんだよ、ここは最初の部屋か」


「ふむ、おそらくだが君は尾道さんに負けたようだね」


「ンだと? ……いや。そう、みてぇだな」


 くそったれ、と吐き捨てるように告げる矢田。

 ありゃ? ほんとどうしたね? 最初に出会った君ならまず間違いなくあいつマジ許ぶっ殺す! 地の果てまでも追いかけて殺すとか言いそうなのに。


「ふむ、随分と丸くなってないかね? 分かりやすくいうならチンピラから小学生の不良になったような……」


「誰が小学生だコルァ!?」


「どうにも、魔族領で一度皆に置き去りにされてから様子がおかしいんですよね。僕の事リーダーに押し上げはじめましたし」


「ふむ。矢田君、君の中で何かあったのかい?」


「アァ? 何かあったっつーか……思い出しただけだ」


 少し声を堅くして彼は告げる。

 あ、もしかしてこれ昔語りフラグ?


「よければ、聞かせて貰えないかな?」


「はぁ? なんで俺が……チッ、誰にも言うんじゃねーぞ? 言ったら殺すぞ」


 え、マジで昔語イベントですか!?

 驚く僕をよそに、矢田が昔語りを始めてしまう。

 こうなるとさすがに席を立つ訳にも行かない。


 話を要約すると、昔御世話になった先輩を思い出したことがきっかけらしい。

 その人はグループのリーダーだったけど、副リーダーたちの思惑でグループを追い出されて、グループが求心力失って瓦解したそうだ。

 その時の感情を思い出し、自分が異世界に来てからやらかしてたことに気付いて冷静にパーティーを見れるようになったんだと。

 そしたらグループを纏めようとしてたのが僕だけで、僕を追い出したらグループが崩壊する現実に気付いてしまった。


 んで、僕とそのリーダーさんの姿が重なったらしくて、僕に対して強く出られなくなったそうだ。

 うーん、身勝手。でもありがたいような?

 勝手にリーダーさんと重ねて持ちあげてくれてると思えば嬉しいかもしれない。

 だってDQNに絡まれないってことだし。むしろ守ってくれるとか最高じゃないですか。


「なるほどね。君が丸くなったというよりはリーダーを見付けたからそのルールに入ったというところだね。忠犬かな?」


「犬と一緒にしてんじゃねーよ。クソ、なんだこの気恥ずかしい感じは」


「ふむ、矢田君は元々ヤンキーだったから上下関係には煩く自分も縛りつけやすいんだろうね。力こそが全てだけど、腕力だけじゃ無く知力等を交えた総合力で格付けしてるんだ。意地汚い性格の人材よりも忠誠心は高そうだし、彼が君をリーダーと認めている間は優秀な手駒と思った方がいいかもね。余程酷い圧政しなければ噛みついてくることもなさそうだ。一度認めたらかなり忠誠誓ってくれるみたいだし、リーダーに類する人物がレイプや略奪を良しとしないのなら彼もその辺りは自重するみたいだよ」


「あー、だから最近そういうことしなくなったのか。あの時までは女性陣をいつ襲うかひやひやしてたけど、僕をリーダーと認めてからは全然襲う気配なくなってたよね矢田君」


「まぁ、朝臣は灼上に気があるみたいだしな。ゴールドについてもリーダーの女に手を出す気にはならねぇ。シシリリアはなんつーか、下手に手を出すとチームが崩壊する大惨事に発展しそうだしな。シルバーの奴は全く油断ならねぇ」


「言われないとわからんよ」


「はは、矢田君がそんなことわざわざ教えてくれる訳がないじゃないか。まぁ灼上君は今まで通り過ごしていれば矢田君が暴走することはまずないだろうね」


「ってことは、シシリリアたんが懸念してることはもう無くなる?」


「彼自信が決めてる信念によるものだ。リーダーから許可を得てない略奪やレイプ、奴隷化などは絶対にやらない、っていうね。だから、君がリーダーと認められてる間は彼から問題を起こすことはないね」


 なんだろう、矢田の奴がDQNからただのツンデレ忠犬に見えて来た……いや、男だし顔恐いから全然萌えないけどね。畜生、なんで美少女じゃないんだよぉ。

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