百九十・その居ない英雄が何処に居るかを、彼らは知らない
「やぁ、皆元気そうで何より」
「グーレイさん、おお、なんだろ、グーレイさんの姿見た瞬間すっげぇ安心した気がする」
「あんた、意外とリーダーしっかりやってたもんね。ストレス溜まってたんでしょ」
「それは否定できないものがあるような……」
「まぁ、そこに突っ立ってるのもなんだ、空いてる所に座るといいよ」
「グーレイよぉ、役立たずばかり集めてよく旅出来たな」
「ちょっと矢田!」
「いいよいいよ、どうせ君はそういうと思っていたさ。それに、皆頑張ってくれてるしね、下手すれば君の方が弱くなってるかもしれないよ」
「アァ? いや、さすがにそりゃねーだろ」
「いやー、こっちはかなりバグ……強化されてるからねー。尾道さんとか強いよ、本気で」
「あのおっさんが?」
信じてないなぁ、これは対戦させて分からせおじさんになるしかないよ尾道さん。メスガキじゃ無くてオスガキ、でもなくてただのヤンキーが相手だけど。
「そうだね。後で尾道さんと闘ってみるといいよ。まぁ負けるだろうけど」
「けっ、言うじゃねーか地球外生命体が」
「少しはヘコムといいよ。でも、ここ最近は大人しいみたいだね?」
「はっ、別に俺だって無法地帯の住人じゃぁねぇんでね。リーダーと認められる奴がいるなら従うさ」
「ふむ」
考え込むグーレイさん。
それって、つまり灼上さんがリーダーに相応しいって矢田が認めたってことなのか、へー、すごいじゃん灼上さん。
「やぁ、小玉君、その、元気かい?」
「リックマンさんこそ、元気でやってますか? すいませんね出て行ってしまって」
「いや、当然の結果だろう。むしろ、このような結果になってすまない」
リックマンさんって最初こそ皆を引っ張りそうって思ったけど見掛け倒しだったんだなぁ。
小玉君たちは勝手に出て行った手前ちょっと苦手意識持ってるみたいだ。顔が引きつっている。
そんな彼らの背後の方で、皆に注目されることなく再会したらしい、カッパーちゃん、ブロンズちゃん、ゴールドさん、シルバーさんの四人が今までの情報共有を始めている。
メロンさん達が凄く暇そうにしてるなぁ、まぁ英雄たちとほぼ接点ないし、どうでもいい存在が合流してきたんだから仕方ないけど……アーデなんて暇すぎて鼻ちょうちんだしながら眠ってるし。
……アーデって魔物だよね? なんで寝てんの?
『アルセも確か寝てましたよね? アルセの端末体だから寝るんじゃないですか? というか今更過ぎますよね?』
まぁ、そうなんだけども。
毎日普通に寝てたからスルーしてたけど改めて気付くとちょっと変? バグってるのかな?
『それは君のことだろう』
煩いよグーレイさん。
「とりあえずグーレイさん。今までの情報共有してもいいかな?」
「ああ、と、その前に、多分私達以外は暇になるだろう。皆、解散して結構だよ。顔見せはすんだし、後は皆で挨拶でもしておいてくれ」
「おー、ジャスティン、斬星、風呂行くぞ風呂」
「ちょっと、レディファーストじゃないの!?」
「言ったもん勝ちだろ?」
「まぁまぁ、折角だし外の温泉入ってくるにゃ」
「温泉! 私も良いですか?」
「温泉……信夫、一緒に入る?」
「ご、ごごごゴールドたん!? い、いやいやいや、ほら、拙者グーレイさんとお話があってですな」
「なんなら風呂で話し合っても良いと思うよ? 混浴行くかい」
「いやいやいや、そんなことになったら情報共有出来そうにないですから!」
ふっ、童貞君が、好機をみすみす見逃しおったわ。
『とか言って、バグさんはこう言う時行くんですか?』
とうぜ……いえいえ、そんな当然行くわけないじゃないですか、やだー。
ああ、リエラの視線が白い……
「はいはい、邪魔しないの。あんたそっちの知り合いと話してなさいよ」
「知り合いってか私達は監視者なんだけど?」
「だから? 灼上達の邪魔するよりは知り合い同士で話してろって言ってるだけよ?」
「つってもねぇ、なんかアンタの態度が癪にさわ……ふむぁ」
ブロンズちゃんが朝臣さんに喰ってかかろうとしたものの、横合いからカッパーちゃんが口を塞いで黙らせる。
「すいませんすいませんすいません。ウチのブロンズちゃんがすみませんっ」
「べ、別に気にしてないけども……」
朝臣さんもなんだかブロンズちゃんに当たりが強いなぁ。
これってもしかして、同族嫌悪?
『バグさん、どうします? グーレイさん達の話が終わるまで本当に暇になっちゃいますけど』
大丈夫大丈夫。ほら、ピピロさんと尾道さんに矢田が絡み始めたでしょ。せっかくだから闘わせてみようじゃないか。
えーっと、どうやって会話を誘導しようかなぁ?
あ、そうだ。Gババァ、ちょっと通訳自然な感じでお願い出来る?