百八十七・その川遊びに保護者がいることを、彼らは知らない
SIDE:リエラ
「うおぉぉぉ! 釣れた、釣れたぞぉぉ!!」
「のっぴょぉーう!」
「くまっぴょーう」
モザイク棒人間三人が楽しそうにはしゃいでいる。
バグさんが見たら多分三バカトリオとか言われちゃうんだろうなぁ。
街で魚釣りの道具を買い揃えて彼らは川で魚釣りに来ていた。
せっかくなので一緒にアーデ、くねくねちゃん、Gババァ、パッキー、ブロンズちゃんが来ている。
「あー、付いてくるチーム間違えたわ。あの馬鹿ども何が楽しいんだか……」
「ふぇっふぇっふぇ。儂も暇じゃしナンパして来ようかねぇ」
「町の男共がトラウマ発症するから止めときなさい」
Gババァさんの恋人かぁ、デヌさんも最初は嫌がってたんだっけ。それを皆を助けるために身代わりになって……今回も、そんな感じになって誰かが犠牲になっちゃうのかなぁ。
あ、はは。さすがに可哀想な気がしなくもないけど、相思相愛なら、いいのかなぁ?
「にしても、あのへんてこ生物共は何があんなに楽しいのかしら?」
釣った魚も魔物だったらしく、痛ぇじゃねーか! とばかりに突撃。くまっぴょろんさんが直撃受けて川に倒れ込む。
その勢いで魚は逃げてしまったようだ。
「くまっぴょろん、無事か!?」
「くまっぴょぅ」
「のっぴょろんっ」
会話、成立してるんだよね、アレ……
「おー」
くねくねちゃんが面倒を見ていたアーデは川縁の野草を一つ一つ観察中だ。
何を調べてるのかは不明だけど凄く楽しそうである。
パッキーは、というと、さっきから川の中を泳いで楽しんでいる。
アレは放置しといてもよさそうだ。
「っていうか、この辺の魔物って変なの多いわよね」
そういえば確かに、というかこの世界自体ユニークな魔物が多いですよね?
―― 失敬な。私は地球とか他の人の世界を参考にしてるだけですからね。変なのがいるのは参考にした世界に居たからですっ ――
え? そうなの?
あそこに居る全身に毛の生えた毛玉蛇も?
あっちのにょろにょろしてる白いウナギっぽいのも?
ベスト着た髭面のおじさんも?
「あら、経験値おじさんじゃない。ラッキー!」
えぇ!? ブロンズさんがおじさん斬り殺した!? ひ、人殺し!?
「それ、人じゃないのかい?」
「ええ。経験値おじさんっていう魔物よ。この容姿で生まれてくるの。鳴き声も「ここは○○の町さ」とか「良い天気ですなぁ」とかしか話さないから人じゃなくて魔物なのよ。基本森の中にいるし、人間はあんな軽装で森に入ったりはしないわ」
た、確かに……
え、本当にあれ、魔物なんです?
経験値おじさん……本当に普通のおじさんみたいな姿ですよね、しかも人のよさそうな微笑みしてるし。
「ここは経験値稼ぎに丁度良いわね。暇があったらアンタも狩った方がいいわよ経験値おじさん」
こ、これが尾道さんが遭ったっていうオヤジ狩り……っ!?
「おやおや、経験値稼ぎかい。まぁ折角だしやろうかねっと」
お婆さんがオヤジ狩りに参戦した!?
って、なんか銀色のおじさん出て来た!?
「珍しい、はぐれ経験値おじさんよ!」
光の速さで接近したGババァによりはぐれ経験値おじさんは瞬く間に狩られ、他の経験値おじさん達も森の中を自在に飛び交うババァに刈り取られていく。
うわぁ、途中でキスしてる……見ないでおこう。
「殲滅速度がえげつないわね。あ、経験値長老ッ! 即殺!?」
なるほど、経験値おじさんの上位クラスは白い髭の仙人みたいな長老さんになるのかぁ。
でもGババァさんの熱いヴェーゼからは逃れられないようだ。
「おー!」
そしてアーデは池から出て来た緑色の人型生物……グリーングーレイさん!? あ、違った普通に魔物だ。しかも頭の上に皿がある魔物だ。
でもアーデも戸惑っているようで、グーレイさんなんで緑色なの? と小首を傾げている。
「ちょ、アーデが相対してんのキュウリスキーじゃん!? 尻小玉抜かれるわよ!?」
「おー?」
慌てるブロンズちゃんなど気にせずに、アーデは小枝を彼に差し出した。
川から出て来たキュウリスキーは小枝を受け取りやや戸惑っている。
笑顔で小枝を渡された理由が全く分からないようだ。
うん、気持は分かる。私もいきなり小枝渡されたら、なにこれ? って小首傾げるもん。
たぶんだけど御近付きの印とかだと思うよ?
もしくは味方に引き入れるための行動、とか?
あ、訳が分からなさ過ぎて怯えだした?
慌てたように川の中に入って行った。
うーん、グーレイさんに見せたかったなぁ。
親戚ですか? って尋ねてみたかった。
「おー……」
ああ、アーデが凄く哀しそうな顔してる!?
やっぱりアレ味方に引き入れたかったのかな。
諦めなよアーデ。あの魔物は多分出だしにグーレイさんと出会ったときだけウケるけどそれ以外持て余しちゃうから。