百八十一・その誰かが手伝っているのを、彼らは知らない
ふはぁ、焦ったぁ。
斬星君のフォロー大変だよ、全く。
リエラがいたらお任せするつもりだったんだけど、今日はアーデのほう見てもらってるからなぁ。
なんかリエラとニャークリアさんが勝負したらしくて、ニャークリアさんが勝ったので一日僕と一緒にいる権利を貰ったそうだ。
うん、意味が分かんない。透明人間と一緒にダンジョン潜る権利っていらないと思うんだけど?
まぁ、そんな感じで、僕は今ガーランドさんパーティーと一緒に死霊の大地というダンジョンに来ていた。
永遠湧きあがってくるスケルトンたちを倒して行くんだけど、斬星君が闘うにはちょっと大変かもしれない。
なので僕がもしもの時用にフォローしているのである。
ふっふっふ。僕だってそれなりに旅して来たからね。逃げるだけなら任せなさい。
あと僕でも闘えそうだと思ったらさっきみたいに突撃手伝ってあげるよ斬星君。
「はぁ、はぁ……よ、よくわからないけど、誰かに助けられてる、のか?」
ほら、息継ぎしてる間にエストネアさんが止めてたスケルトンが緊縛といてやってきたよ。
今度は落ち付いて剣撃で倒すんだよー。
「よし、落ち付け。さっきみたいな無謀な突撃は駄目だ」
自分に言い聞かせ、今度は相手の剣を見ながら受け流し、反撃を加えて行く。
危なげながらもなんとか闘いになっている。
まぁ、相手の剣撃、降り降ろすだけだからなぁ。向こう骸骨だし一番雑魚のスケルトンなので攻撃が単調なのである。
だから、斬星君が冷静に対処すれば一人で闘えるくらいの脅威なのである。
「た、倒せた?」
「おっ。やるじゃねーか」
即座に二体斬り倒したガーランドさんが近寄って来て斬星君の頭を乱暴に撫でる。
「ちょ、髪が」
「がっはっは。その調子だ坊主。落ち付いて相手を見ればお前さんなら充分対処出来るんだ。無謀な突撃は止めとけよ」
「わ、わかってるよっ!」
「うにゃ!? ガーランド、右から追加だにゃ、えーっと多分六体?」
「休む暇も無しかよ。まぁまだ始まったばかりだ、しっかり稼げよ野郎共!」
先程と同じようにエストネアさんの魔法で数体削る。
今回は三体倒せたようだ。
ただ、一人装備が良いスケルトンが混じっている。
「スケルトンナイトだ、アレは俺がやる。もう一体はジャスティン。ニャークリアは斬星のフォローをしてくれ。坊主、敵は一体だ。やれるな?」
「わ、わかった」
ややぎこちなく返事して、斬星君が剣を握る手に力を込める。
気負い過ぎるんじゃないよー。
カタカタと顎を揺らし、スケルトンが剣撃を放つ。
上からの片手で撃ち降ろし。
斬星君はこれを打ち払って相手の重心を崩す。
返す刃で胴を真っ二つ。
うん、ナイス一撃!
「よし!」
「お馬鹿、上半身はまだ動いてるにゃよ!」
「へ? うわ、気持ち悪っ!?」
そうだった、アンデッドだから頭と胴を斬り離さないとまだ動くんだっけ。
慌てそうになる斬星君を後ろから操作して唐竹割り。
スケルトン君の頭を真っ二つにしておく。
「今のは……?」
「唐竹割りだにゃ」
「いや、そうじゃなくて……」
「スキルとして覚えておくと次から唐竹割りと叫ぶだけでモーションにはいるにゃよ」
「え? あ、ホントだ。スキルに入ってる」
「基本スキルはレベルアップで覚えるんにゃけど、こうして実地で名前と動きを実体験すれば覚えられる時があるのにゃ。もちろん難しい動きは何度も真似てモノにしないとできないにゃ」
「へぇ……ん? 実体験……? あの……」
「ボサッとしないで! 左から追加戦力!」
エストネアさんが叫ぶように告げながら待機済みの魔法を放つ。
ディレイ魔法だっけ。随分と便利だよね魔法をストックしとく魔法。
「あ、これはマズいにゃ。スケルトンナイト二体とスケルトンジェネラルがいるにゃ!」
「チィ、やっかいな」
「全力で弾幕張るわ! ガーランド指示よろしく」
「よし、ジャスティンも倒せたな? スケルトンナイトはジャスティンとニャークリア。俺はジェネラルだ。残りは……いや、ニャークリア、雑魚の相手を任せる。坊主、ナイト一体、いけるか?」
「え!? あ……やります!」
「良い声だ。落ち付いてやってみろ!」
「うえぇ、10体近くスケルトンいるんにゃけど……」
「遅延魔法で遅らせるから一体づつ確実にねニャークリア」
「スケルトンナイト……ついさっきのガーランドさんの闘いを参考に、動きは拙いけどこっちの動きに反応する知識がある。頭を潰さないと攻撃してくる。よし、よしっ、行くぞ!」
気合を入れて、斬星君がスケルトンナイトに立ち向かう。
頑張れ斬星君、ヤバそうなら手伝うからねー。
おっと早速ヤバそうだッた。
襟首ひっつかんで後ろに下げる。
フェイントに引っかかってしまった斬星君はなんとか無傷で回避する。
「ふぇ、フェイントまで出来るのかよ!? あ、危なかった……」
「落ち付いて相手を観察しろ坊主ッ」
「すいませんっ!」
思わず謝り、斬星君は息を整える。
うん。これなら殆どフォロー要らなそうだな。




