百七十八・その温泉に浸かってる生物を、僕らは知らない
あけましておめでとうございます<(_ _)>
今年はどこかで書籍化できたら……いいなぁ。
屋敷の掃除は皆でやることになった。
早急にメイドたち雇わないとボロ屋敷になっちゃうぞここ。
折角いい露天風呂あるのに。
僕は皆に見えないってことでリエラ共々掃除は免除だ。
下手に掃除して誰かに見られるとポルターガイスト現象!? と驚かれそうなので止めておくのである。決して掃除面倒臭いってわけじゃないんだ。
代わりにリエラと二人で屋敷の中を点検して行く。
僕らなら鍵のかかった場所とかも普通に入れるからね。
元魔王が隠してた部屋とか見付かるかも。
ヤバいのが出てきたらグーレイさん案件だけど、それ以外はポシェットに入れてその内売り払おう。
エントランスは装飾が豪華だ。
青銅の鎧が像みたいに乱立している。
絵画もかなり大きな額縁に入ったのが幾つも。
シャンデリアとか電気無いのになんであるんだろう?
魔法石でも使ってるのかもしれない。
汚れ的なモノは毎日掃除しているのでなさそうだ。
目に付くのはきらびやかな装飾品の数々。
これはユーデリアさんの物になるらしいので放置。
僕らが回収するのはあくまで普段行くことのない隠し部屋にある品物の数々である。
『あ、見付けました、ここ通過出来ます』
なので、僕らは壁に手を付きながら通路を歩き、通り抜けできる隠し通路を捜索しているにであった。
まさか本当に隠し通路あるとは思わなかったけど。
『ここは……多分ですけど脱出路の一つですね』
このまま歩いて脱出路の場所を確認するのもアリだけど。とりあえずは館内をくまなく調べてからにしよう。
『意外と多いですね。でも殆ど脱出路ですよ』
何処に居てもとりあえず逃げられるようにっていう魔王の精神が丸見えだよね。
にしても、通路ばっかりで部屋がないなぁ。
とりあえず屋敷の見取り図は写し取ってあるからこれに書き加えて行くだけでいいんだけど、僕絵とか下手なんだよなぁ。
リエラはどう?
『ダンジョンでの地図の書き方なら覚えましたから大丈夫ですよ。そこまで変わらないでしょうし』
んじゃ、地図係よろしく。僕が前に向かうよ。
『そ、それは駄目です。さすがに何かトラップがあったりしたら対処できないですよね』
うぐっ!?
『大丈夫ですよ。ゆっくりしておいてください』
リエラに全て任せるっていうのはいろんな意味でちょっと精神的に辛いんだよ。
僕も少しは役に立たせて。
ああ、でも、何もやること、ないんだよなぁ。
それからしばらく。
一階を見終わった僕らは露天風呂を見学に行く。
源泉掛け流しなので基本掃除などで湯を抜く必要はない。
なので、ここは今回の掃除免除場所になってるんだけど……先客がいた。
『なんですかね、あれ?』
カピバラじゃないかな? ちょっと男気入った感じの?
なんできりっとした眉毛のカピバラが魔王の温泉に入ってんだろう?
―― あ、それカピリアスよ。カピバラの英雄みたいな役職の魔物 ――
説明聞いてもどんな魔物かよくわかりません。
とりあえず放置しとけばいいってことは理解した。
『アーデが友達にしそうかも』
いや、それはない。多分ない。一緒に踊ってサヨナラくらいはするだろうけど仲間には引き入れないだろう。
なぜか? それはカピリアスが単体ではなく大量に露天風呂に浸かっているからだ。
アーデが引き入れるのは基本個人で光りそうな個体だからなぁ。
団体さん引き入れるのはまずないでしょ。
『あー。確かにソレはありそうですね』
「ああ、こんな場所にいたのかいバグ君たち、って、なんだこの生物?」
『大量に露天風呂占拠してますが、危害を加えなければ大丈夫そうですよ』
「そうなのかい? じゃあこれから風呂に入っても問題はなさそうかな?」
そういえばグーレイさん、ここって男女別になってないけど、混浴なの?
「言われてみればそうだね。時間差で入れるようにしようか」
『あ、でもそういうの気にするのって杙家さんだけになりませんかね? こっちの世界の方、普通に混浴入りそうかも』
マジか!? それは心のシャッターが押される事案だね。
準備は万端さ! いつでも来るがいい!!
余すことなくシャッターチャンスしてやるぜ!
『バァ~グゥ~さぁん?』
はぅあ!?
「バグ君は外で警護役確定かな」
そ、そんな!?
『もぅ、バグさんったら……そ、それでしたら私といっ「おーっ!!」』
リエラが何か恥ずかしそうに言おうとした瞬間だった。
元気一杯アーデが露天風呂へと走り込んできた。
ここはどこだー? と周囲を見回し、僕等に気付いてよっすと手を上げる。
次の瞬間にはカピリアスの群れに気付いて眼を輝かせて手を振りだした。
気付いたカピリアス達が困ったように顔を見合わせている。
あ、でもすぐに動きだした? 皆アイコンタクトを交わし終わると、一斉に湯船から立ち上がり、そのまま壁をよじ登って立ち去って行った。
……結局、なんだったんだあいつら?




