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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
最終話 その彼の名を誰も知らない
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百七十六・その魔王の最後を、彼らは知らない

SIDE:月締信太


 ユーデリアに連れられて、瓦礫の山と化した魔王城へと突撃する。

 木の幹に乗っての突撃は、瓦礫の山を粉砕し、木が逆に突き刺さる。

 要するに葉っぱ部分が地面に突っ込まれ、根っこが空へと向かい伸びている状態だ。


「ふむ……奴はどこだ?」


「さすがに今の一撃で消し飛んだんじゃないかな?」


 しばらく捜索していると、ガーランドさん達がこちらにやってくる。

 ついさっきまでGババァ達がいたんだけどこっちはやることないなってことでなんか咆哮聞こえた方向向ってすっ飛んで行った。


「よぉ、なんか見付かったか?」


「否、不埒者がいるはずだが……」


「やっぱり今の一撃で消し飛んだんだって」


「まー、あんな一撃受けりゃーな。王城消し飛んだし、一緒に……全員戦闘態勢ッ!!」


 ガーランドさんの言葉にその場にいた全員が戦闘態勢を取る。

 瓦礫が崩れ、誰かの呻きが聞こえた。


「う、ぐぐ、なんだったんだ一体。我が王城に地震でも起き……なん、だ、これはっ!?」


 くそ、生きてたか!?


「無様だな」


「なんだと!? な、き、貴様は!?」


 自分のすぐ近くで仁王立ちしていたユーデリアに気付いて思わず見上げた魔王プラウル。

 間違えようもない、あの時僕等に突っかかってきた魔族の男だ。

 あの時は優秀な護衛がいたはずだが今はいないらしい。


「な、なぜここに、まさか!?」


「刺客共が面倒でな。元を断てばよかろうなのだ」


「ふ、ふざけおって! 我は魔王だぞ! 小娘風ぜ「我は覇王なりッ!!」」


 プラウルの声に被せるようにして、怒声が消しさる。


「な。な……」


「我が怒りの一端を知れぃっ!」


 ぬぅんっと拳を振り抜くユーデリア。

 その拳はプラウルの頬を捕らえ、プラウルの身体はきりもみ回転しながら放物線を描いて空を飛ぶ。それに追い付いたユーデリアが無数の拳を突き出す。


「貧弱貧弱貧弱貧弱貧弱貧弱貧弱貧弱貧弱貧弱貧弱貧弱貧弱貧弱貧弱貧弱貧弱貧弱貧弱貧弱貧弱貧弱貧弱貧弱貧弱貧弱貧弱貧弱貧弱貧弱貧弱貧弱貧弱貧弱貧弱貧弱貧弱貧弱貧弱貧弱貧弱貧弱貧弱貧弱貧弱――――ッ!!」


 もはや人型すら保てなくなった魔王が吹き飛んで行った。


「ふん、成敗」


 飛んで行くプラウルに背中を向けて、ユーデリアが告げる。

 あ、プラウルが瓦礫の頂上に突き刺さった。


「なんで、こんなことに……」


 かくり、真っ直ぐに突き立ったプラウルの下半身が重力に負けて瓦礫に倒れる。

 頭? 既に瓦礫に埋まって見えないよ。

 どうやら本当に死んだようだ。ステータス見てみたけどHPが無くなって状態異常が死亡になっている。ユーデリア、なんで君はこんな状態になってしまったんだい……?


「目的が無くなったな。どうする我が愛」


「あー、えっと、グーレイさんに付いてこうか、温泉、もう一度入ろうよ」


「命の洗濯か、なればよし」


 なんでだろう、いつも通りユーデリアと会話してる筈なのに、今までみたいに心が弾まない。

 いや、ユーデリアの容姿だし、可愛いんだよ。

 口調がなぜか漢っぽいし声もなんとなく世紀末覇者感が滲みでちゃってるんだよなぁ。

 そのせいでなんというか気遅れ? ちょっと話しにくくなってしまった気がする。


 ユーデリアと、この先もやって行けるんだろうか?

 いや、僕から好きだって告げたんだ。口調が変わって男らしくなったくらいで彼氏辞めますなんて愛情が足りないんじゃないか僕っ。

 そうだよ、アレはユーデリアなんだ。口調も纏めてユーデリアなんだよっ。


「終わったかーい」


 グーレイさんたちがやってくる。

 なんか気が抜けた顔してるのはなんでだろ。

 丁度こっちも片が付いたので合流しようとした所だったんだ。


「こっちは終わったよ。そっちは何かあったの?」


「ああ、うん。まぁ、その……熊がね、出てね……」


 凄く歯切れの悪いグーレイさんの言葉を纏めると、凶悪な熊が襲いかかって来たのでノヴァさんとのっぴょろんさんが突撃してモザイク棒人間三号ならぬモザイク棒熊が誕生したらしい。

 えーっと、どういうこと? 聞いても良く分からないんだけど?


「脅威は去った、それだけのことなんだ」


 グーレイさんが虚空を見上げて告げる。

 その佇まいには虚無感が色濃くにじんでいた。


「我々は同行しようと思う。グーレイよ、返事や如何に」


「構わないよどうせ近くの温泉街に行こうとしていたところだしね。そこでも問題は無いかい?」


「うむ」


「僕も問題無いよ。もともとそこでゆったりしてたんだ。二人でずっとここにいるのもアリだねみたいな事を言ってたくらいさ」


「そ、そうかい。じゃあ問題はなさそうだね」


 僕らが襲われることはもう無いみたいだし、今度こそ安心してお風呂に入れるよね。そうだよね? こ、混浴とか、大丈夫かな? でも今のユーデリアは……い、いや、頑張れ僕、と、とにかく落ち付いて考えよう。今はまだ混乱してるだけさ。

 そうだよ。温泉にゆっくりつかって今後について考えよう。ユーデリアだって僕の事我が愛とか言ってるし、好きなことは変わってないんだろうし、よくよく観察してみたら、ユーデリアだった名残は普通に残ってるし。

 よし、なにはともあれ温泉だ。考えるのはひとまずやめよう。早く行こうよグーレイさんっ。

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