百七十一話・その少女の選考基準を、僕等は知らない
随分と大所帯になったなぁ。
月締君とユーデリアは来た道戻る事になるらしいけど、団体さんを撃退したのでしばらくは追手が来ないらしく、ゆったりとしたものだ。
うん、ユーデリアさんは黙ってれば華奢な少女で可愛らしい。黙ってれば。
「あ、あのさ、ユーデリア」
「うぬか、どうした?」
「そ、そのうぬって僕の事、だよね? もうちょっと呼び方、変えられない、かな?」
「ふむ……では我が愛・信太よこの呼び名でどうか?」
「なんか嫌!? 信太だけでいいよっ」
「そう、か? 了解した我が愛」
「なんで逆が残った!?」
あ、なんか凄く哀しそうな顔してる。
口調がアレなだけで、本当は普通の思考回路だったりするのかも?
それだったらホントに申し訳ない事しちゃったなぁ。
と、とりあえずステータス見せて貰おう。
名前:ユーデリア・バル刃ロッサ
称号:嘆きの漢女
レベル:6
スキル:
鉄拳制裁:悪即殴!
天帝乘鉾:その拳は天をも貫く。
猪狩ノ咆哮:敵を畏怖させる叫び。猪系生物に即死効果。
土魔法No心ヱ:槌魔法を閊える。
天迎昇帝破:天穿つ龍の一撃。
帝王破談SYOW:全てを破談にする帝王の一撃。
長距離柱移動:太い棒状の物を投げ、これに乗ることで長距離を移動可。
肉体言語Lv83:拳で語りあえ。全てはそれからだ。
拳成長率100倍:拳熟練度の成長率が1000倍。
鋼の肉体:ぬぅんっ。
遠当て:離れた敵を拳で貫く。
暗殺秘孔:指先一つで○します。
ゴールドラッシュ:相手を打撃するとお金が潤う。
パリィ:剣撃などにタイミングを合わせることで弾きます。
魔力変化(氣):魔法が使えなくなる代わりに魔力が氣に変化します。
練氣;氣功術の基礎。
波動掌・漣鏖猛激衝:練氣で集めた氣を掌より撃ちだします。
帝王撃:攻撃範囲が広がり一度で数人を屠る一撃になる。練氣により連撃効果有り。
デスロール:相手を掴むことで発動するワニ系生物の必殺の一撃。
約束されし死滅之拳:その一撃は星をも屠る。
うわぁー。
ツッコミどころが多過ぎる。
っていうかこのユーデリアさんってバルバロッサだっけ?
「うん? 月締くん、ユーデリアさんの名字はバルバロッサでいいのかい?」
「え? どう、だっけ? あの魔王の名前僕知らないんだよね」
「我の名か? すまんな。昔の名など捨ててしまったわっ」
背中で語る漢女の図。
いや、いちいちポーズ取らないで!?
格ゲーで勝利したキャラとか結構そうやって背中向けて来るけども。
うん、前の名前はもはや不明、というわけですか。そうですか……
とりあえずいろいろとツッコミどころはあるけど、拳の成長率おかしくない? 100倍って書いてあるのに説明欄だと1000倍なんですが? どっちだよ!!
「おー」
アーデが何かに反応する。
なんだ? と僕らがそちらを見れば、魔物が数体こちらに近づいて来ていた。
ワーウルフって感じの二足歩行の狼だ。
どうやら群れで生活しているらしく、この辺りの草原で狩りを行っているらしい。
その、一つの群れが僕等に狙いを定めたようだ。
「全員、戦闘配……」
「かかってこんかァ――――ッ!!」
少女から出たとは思えないユーデリアの咆哮。
まともに受けたリーダー格のワーウルフが耳から血を噴き出して絶命した。
もはや闘ってすら居ないのに相手が死んだっ!?
何が起こったか理解できなかったワーウルフ達が困惑してリーダーの周りをうろつきだす。
おい、どうした? みたいな様子で、なんか申し訳なく思えてくる。
が、そんな相手の都合など知らぬ存ぜぬ顧みぬ、とばかりに突撃するユーデリア。
突撃の際、なぜ彼女は両手を掌上に向けて『今でしょ』とか言いそうな姿で走りだすんだろう?
マッチョな奴が攻撃する時ってその態勢で結構走るよね? アレ、なんでだろうね?
「ぬぅんっ」
もはや烏合の衆と化したワーウルフの一人を掴み取るユーデリア。
そのまま巻き込むように回転しながら地面を転がりだす。
これ、デスロールだ!?
しばらく回転したのち、ぽいっと放物線描いて放り出されるワーウルフだった何か。
もはや原型が留められてない……
「さぁ、鏖殺の時間だ……」
「きゃ、キャイーンっ!!?」
逃げだすワーウルフを追いかけ回しながら一人一人確実に屠っていく凄女。
月締君がハイライト消えた瞳でアレはユーデリア。と何度も口にしている。
もう、諦めた方がいいかもしれないよ月締君……
「お!」
って、アーデ!? 何ソレ、その生物何!? いつの間に仲良くなったの、そのダンシングなフラワーっぽいサングラス掛けたサボテン君は!?




