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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
最終話 その彼の名を誰も知らない
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百六十八話・その救出の光景を、僕しか知らない

 不意に、僕の視界に変な画像が流れだした。

 クォータービューって言えばいいのかな? 天空から箱庭を見降ろすような形の映像だ。

 映像には三人の男女が映っていた。


 映像がぐぐっと三人にフォーカスされて寄って行く。

 すると声まで聞こえ始めた。


 ―― バグくんどーお? 映像来てる? おねーさん頑張って安心できる映像送っておいたよー ――


 ちょっと名前呼んだら懐かれた気がする。

 駄女神二号さんもしかして女神なのにチョロインさんだった!?

 しかもこれ、歩きにくいから有難迷惑だ。


 どうやら三人はこれからGババァが救出するユーデリアさんって人と誘拐者二人のようだ。

 男女一組が罵り合いながら一人の女の子を小脇い抱えて走っている。

 小脇に抱えているのは女性の方だ。華奢な身体付きなのに結構パワフルだね。


「さすがに採算合わないわよ、どーすんの!」


「仕方ねぇだろ、あの坊主結構強ぇんだ。あの二人の取り分山分けじゃだめかよ!?」


「正直割りに合わないわね。あんな魔王の言いなりになるのが嫌なのに、こんな小さな子を誘拐とか聞いてなかったんだけど! もっと年齢いった妙齢の女性じゃないの!?」


「はっ。どうせ誘拐するなら相手の年齢なんざ関係ねーだろ」


「そうだけど、心持ちが違うじゃない、私子供には手を出さないようにしてんのよ、最後の良心って奴でね」


「はっ、そんな役に立たねぇもんは捨てちまえ。あの坊主が血相変えて追って来ないうちにさっさとずらかるぞ、感情が邪魔なら置いてく、ソイツを俺に渡しな」


「嫌よ、仕事は仕事だから最後まできっちりやるわ。でも、その後は決別。私はあの魔王殺すわよ」


「お前の考えの方が怖ぇよ!? あー、もう、あいつ等二人もいなくなっちまったし、新しいパーティー探すか。お前とはソイツを引き渡すまでの間柄だ。生きてりゃまた会……なんだ?」


「……たすけて、しんた――――」


 男女の会話に被さるように、か細く小さな声が聞こえた気がした。

 助けたいな、そう思う僕に呼応するように、ソレは、来た。


 男が最初に気付いた。

 視線の先は遥か上空。

 そう、それは天空より光を纏いて舞い降りる。


 ―― ばばぁがくるぜ、ばばぁがやるぜ、ひっかりのはやさでやってくっぜー、ばばぁばばぁばばばばばばぁ ――


 やめろぉ駄女神ぃっ!?


 ―― あはは、なんかノッてきた! おまえのうしろにばばぁはいるぜ、おまえのまえにもばばぁがきたぜ、おまえのくちびるねらってくるぜ!  ――


 彼方より迫りくる一筋の光。

 これぞまさに流星一条。

 少女の嘆きの声を聞き、光のババァがやってくる。


「な、ぁ、ば、ババァあぁっぶ!?」


 光は弧を描き一直線に男の元へ。

 両手開いて飛び込むように、笑顔のババァがアヒル口。

 男の胸へと飛び込んだ。


「な、何っ!? って、ひぃぃっ!?」


 それはまさに衝撃映像。

 倒れた男に圧し掛かった白髪ざんばら髪の老婆が、思い切り男の頭を両手で固定し、自分の顔を押し付けている。

 僕からは衝撃映像のヤベェ部分は見えないけど、間横に居る女性はまともに見てしまったようだ。


「な、何?」


 思わず小脇に抱えていた少女を落とし、尻もちを突く女性。

 解放されたユーデリアちゃんは一瞬困った様子だったものの、はっと我に返って魔法を唱える。

 すると、すぅっと彼女の姿が消え去った。


 これは、Gババァに任せず月締君をこの現場に連れてった方が良さそうだ。

 グーレイさん!


「よし、そろそろ出発しよう。月締君、行くぞ!」


「え? あ、うん。でも、ユーデリアの居場所は……」


「既にGババァが向っているよ。向こうで隠蔽魔法を使ったみたいだ。君が来ないと出てこないと思う。急いで行こう」


「じゃ、じゃあまだ拉致されてないの!? 急がなきゃ!」


 皆してちょっと駆け足で動きだす。

 ちょ、ちょっと、尾道さん忘れられてるよ!?


「おいおっさん、俺の生みの親なんだからもうちょっと走ってみせろよ。良いとこ見せろっつの」


 ノヴァに叱咤され、尾道さんまで小走りを始めた。

 やるな棒人間。あの尾道さんを走らせるなんて。

 ただ、僕は運動苦手だから走るのも苦手なんだよ!?


 ひぇぇ、むりむり、息が上がる。足がくがくしちゃう、ちょっと走っただけでもう全身筋肉痛だよ!? 


『バグさん、さすがにちょっと弱過ぎですよ!? これから暇な時訓練しましょう。せめて皆に付いて走れるくらいの体力付けるべきですっ』


 そうだけど、そうなんだけど……


 ―― がんばって ――


 っ!? こ、この声は……

 アルセ!? アルセなのかい!!

 よーしがんばっちゃうぞーっ。


『バグさん……もう、アルセには敵わないなぁ』


 アルセの声援を受け、僕は肉体にブースターが付いたかの如く走りだす。

 うん、多分数秒後には力尽きてるだろうけども、今の僕は世界の終りまで走り続けられる気がするよ!

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