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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
最終話 その彼の名を誰も知らない
1606/1818

百五十八話・その話が分かる生物の姿を、僕等は知りたくなかった

「じょろろーん」


「のっぴょろーん」


 誰か助けてください。

 暇を持て余したお馬鹿が名状しがたきカエルらしき物体を相手にカバディみたいな事やりだしたんです。

 往く手を阻むモザイク棒人間に、黄色いカエルモドキもどうしたらいいのか困惑している。

 結果、互いに鳴き声合戦を開始して停滞するしかなくなったようだ。


 草原地帯は抜けたんだけど、ここから先が真っ白な沼地を行くか、黄土色ぶちまけた森に入るか、真緑色の谷を抜けるとかで相談し始めた結果、モザイク棒人間が暇を持て余してカエルモドキと遊びだしたのである。


 あ。舌が絡みついた。

 引っ張られた。

 飲み込まれ……人型モザイクの下半身が名状しがたきカエルモドキの口から突き出てる!?

 何このショッキングシーン!?


「友よぉぉぉ!!」


 助走付けたドロップキックがカエルモドキの腹に炸裂。もう一体のモザイク棒人間ノヴァによりのっぴょろんなモザイク棒人間が救出された。


「じょろろっ」


 そして慌てて逃げだしていくカエルモドキ。

 向こうも向こうでモザイク棒人間は恐かったようだ。


「森は止めよう。さすがに未知過ぎる」


「沼地も足が取られる。こんな場所で沼の魔物に襲われたら全滅しちまうぜ。やっぱ谷行くしかねーんじゃねーか?」


「一本道で逃げ場がないのが辛いわね」


「一応道自体は広いですよ?」


 それはそうだけど、嫌な道だなぁ。馬車が二台通れる道だけど、この下へ下へ向っていく道と周囲の高い山のような壁。

 道を塞ぐ岩とか転がってきたら一網打尽必死だろう。


 出来ればここは行きたくない。でも他の道は危険地帯。ここが一番安全そうな道なのである。

 うわー、なんというかよく出来た地形だなぁ。

 絶対皆ここを選ばせてからのトラップでしょ。


 それでも、皆この道を行くしかないと思ったらしく、警戒しながらも谷へと続く道へと向かっていく。

 リエラ、一応警戒しておいてね?


『言われなくてもやりますよ。でも、この谷はまるで誘い込むかのような配置ですよね』


 リエラも思った?

 やっぱり怪しいよね?

 なんか奥の方で待ち伏せされてて出会った瞬間に帰り道を塞がれる、みたいな……


「おや、奥に誰かいるみたいだ」


「誰かって誰だよ?」


 グーレイさんとガーランドさんが顔を見合わせ近づいて行く。

 いや、罠だって、不味いって。


「待ってくださいお二方。ここは私が」


 二人を止めたのは尾道さん。珍しく自己主張してきた。


「前回の失敗を糧に、もう一度だけ、交流させていただけませんか?」


「まぁ、尾道さんがやってみたいなら止めはしないけど、気を付けてくれよ?」


 リエラ、警護お願い。


『了解。後ろは気を付けてくださいよ』


 Gババァは後ろのほう警護してね? あ、くねくねちゃんもしてくれるの? ありがと。


「あの、初めまし……ひぃ!?」


 人影に向かって話しかけた尾道さん、向こうも気付いたようで、尾道さんの方へと向かって来る。

 その姿を見て、尾道さんが怯えた。

 うーん、正気度が削れる容姿だ。


 ソレは一見正常な人型だった。

 ただ、近づくと分かるゴリマッチョを三乗くらい重ね掛けしたような筋肉とその筋肉に埋まった頭、目はくぼんで漆黒。

 人肌で人型で二足歩行なのに容姿はといえば名状しがたき存在としか言いようがないバケモノだった。


「あ、あぁ。あの……」


「ほぅ、久じぶりの獲物だどおぼえば……ずいぶんどがばっだぞんざいがいるな゛」


 声帯の関係かちょっとだみ声過ぎる気がするけど、一応会話は可能らしい。


「君、話せるのかい?」


「お、おぅ、会話がのうだぞ。おばえ、なんだ? ごの世界の奴じゃぁねぇ。だが別世界の奴でもでえ」


「ふむ。もし可能ならば少し話が出来ないだろうか? 我々としてもこの世界についてよくわからないんだ」


「なら、そぢらの世界の話をじでぐれ。一づの質問にごちらも一づ質問ずる」


「なるほど、それはいいね。では、話しやすい場所などあるだろうか? ここはなんというか居心地が悪い。挟撃されそうでね」


「ぐばば、ぞれは真実だァ。んだな。こっちだ。づいでぎな」


 どすどすと音を立てながら歩きだす名状しがたき第一村人。

 そのまま岩に手をかけ壁面を昇りだす。

 なるほど、あの腕力だから昇れるのか。いや、僕らには無理だよ!?


「ふむ、仕方ないねェ。ピストン輸送してやるさ」


 屈伸運動をしたGババァがアーデたち魔物組と斬星君を掴みあげる。


「え? なんで僕ぅぅぅ……――――!?」


 そして斬星は星になった。キラン♪


「おお? おでより速ぇ、向こうの世界の奴も馬鹿にできねぇな」


 名状しがたき人型生物が崖を昇り切るより速く、Gババァのピストン輸送により僕らは全員が崖の上へと上げられるのだった。

 結局僕らの方が早く付いちゃったし……あそこにあるのが家かな?

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