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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
最終話 その彼の名を誰も知らない
1590/1818

百四十二話・その戦力格差を、彼らは知りたくなかった

SIDE:灼上信夫


「仕方ない、ジェネラルっぽいのは任せるわ。バケモノに関しては私が」


「了解」


 え? あれ? ちょっと?


「準備はいい? 3・2・1……」


「今っ」


 あっれぇ!? 僕は放置っすか!?

 僕を放置して、美樹香たんとゴールドたんが同時に跳躍。

 真上からの暗殺対象奇襲決行。


 相手は多分背後に落下されるまで気付かなかっただろう。

 美樹香たんの一撃がバケモノの首を薙ぐ。

 おお、一撃クリティカルヒット。くびちょんぱでくるっくる回って落下した。


 ゴールドたんの方はといえば、首を切り裂く寸前気付いた軍服の男はするりと体の力を抜いてその場に倒れ込み、カポエラばりの足技でブレイクダンスしながらゴールドたんの腹を蹴りつけた。

 何アレ? 人間の反応じゃないぞ!? 気持ち悪っ。


「な、何者だ貴様等ッ!?」


「喚くな宰相。想定済みだ。もう一人はどうした?」


 軍服の男が体勢を直して服を整えながら美樹香たんに告げる。

 そのまま離脱するつもりだった美樹香たんが逃げ切れずに地面に着地。ナイフを構えて厳しい顔をする。


「やっぱりアンタが魔王だったか」


「ほぅ、私が魔王だと何故思ったか気になるが、確かに、そこの玉座に座らせているのは魔王ではない。それでも見事な一撃だった。双方、良い腕だ」


「それはどうも。でもさすがね、ここまで隙がないと暗殺も出来ないわ」


「私とて暗殺の危険は対策済みだ。おいそれとこの首はやれんよ」


「へ、陛下、この者たちは人間です、殺さねば!!」


「まぁ待て阿呆。お前が陛下と言ったせいで私が魔王だと確定されただろうが。とはいえ、折角の客だ。少しくらい話をしようではないか」


 うむむ、ゴールドたん気絶中か?

 ジェネラルっぽい魔王が近過ぎる。美樹香たんが下手に動くより先にゴールドたんが殺されそうだ。

 どうする? どうしよう? 僕が出て行っても普通に殺されて終わりな気がするし。


「我が国は人族領とは離れているはずだ。なぜ暗殺に来た?」


「ソレを聞いてどうするつもり?」


「どうにも、ただ聞いてみただけさ。別に答えは期待しておらんよ」


「そう? 別に隠す事じゃないわ。私を雇った国がね。魔族領侵略するとき出張って来て邪魔しそうだからここの魔王暗殺してくれってさ」


「ほぅ、また随分と無茶な願いを受けたものだ。で、どうするかね? この首、安くはやれんぞ?」


「逃げるにしても無事に逃げるのは難しそうね」


「別に逃げる必要はあるまい。どうかね、そんな無茶な要求を行う国よりも我が国に忠誠を誓ってみんか? ここまでほぼ発見されなかったその腕、高く買うぞ?」


「あら、嬉しい事を言ってくれるわね。でも私、さっさと実家に帰りたい派なのよね。帰る術を知っているのが今いる国だけみたいなの」


「なんだ、召喚者という奴か。それは、難儀よな」


 難儀? また変な事言うなぁ。

 何か召喚者について知ってるんだろうか?

 いや、今は悠長に話し聞いてる暇は無いな。


 僕は周囲に視線を走らせる。

 逃走経路はどこだ?

 逃げるタイミングはしっかりと測らないと、数秒のタイムラグで詰みかねない。


「思うに、お前は強制召喚された口だろう。ならばその国に思い入れは無いはずだ」


「そうね、全く無いわ」


「戻ると聞くが。その方法は知らされているのか?」


「それは……封印された魔王を倒せば戻れると聞いてるわ」


「クックック、そんな世迷い言を本気で信じているのかね?」


「まさか? 他に良い方法があれば提示してくださいな。信用出来るのならば考えても良いわよ」


 ちょ、ちょっと美樹香たーん!?


「うぅ……」


 おっと、ゴールドたんが気絶から回復したようだ。

 それに気付いた軍服が少し動いてゴールドたんの傍に近づく。


「ああ、下手に動かない方がいい。君を殺すのは足一つあればいい……ようするに、動けば殺す」


 意識を取り戻したゴールドたんが悔しげに呻く。

 これはピンチ。

 美樹香たんもゴールドたんが人質に取られたようなモノなので少々動きづらそうだ。


 と、なると、やはり僕が動くしかあるまいか。

 覚悟を決めろ。

 奥の手を全て出しつくすつもりでやるしかあるまい。

 そんじゃ、いきますかっと。


「さて、あまり人質などという手段を用いる気は無いのだが、どうかな? 我が国に所属する気は……」


「ないんだなぁっ!!」


「っ!!?」


 真上からのメガトンプレス。

 迎撃しようとした軍服は危機を感じたのか迎撃を取り辞め即座に飛び退いた。

 ちっ、今の迎撃してくれてりゃ一撃必殺だったのに。


「美樹香たん飛び込めッ!!」


「っ!!」


 僕の言葉に一瞬意味不明な顔した美樹香たんだったが、何かを察したようで走りだす。


「チィッ、みすみす逃すかッ」


「ゴールドたんそのまま動かないでっ! いっけぇぇぇッ!!」


 僕にとってそのスキルは死にスキルだった。

 太った体の重量を存分に発揮する押し潰し攻撃。メガトンプレス。

 本来ならいろんな意味で使おうとすら思わないのだけど、僕ってば手に入れたスキルはスキルレベル全部上げる派なんだよね。


 すると組み合わせることで意外な大ダメージを与えられるスキルになってたりするんだ。

 これもその一つ。

 身体強化と硬化防御、反射結界を組み合わせることでボスキャラも一撃のメテオストライクに進化するのである。

 と、いうわけで、そのまま床を砕いて階下にさようなら。ゴールドたんと共に脱出だ!

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